[コメント] Mr.インクレディブル(2004/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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スピード感てのは何なのかって思ったね。時速300キロで走っている新幹線でも、295キロ/時で移動するカメラから撮れば毎時5キロにしか見えない。いや1000キロを超えて空を飛ぶ飛行機だって、地上から見れば芋虫よりのろい。つまり、現実にこの世の中に発生する「スピード」と、映画において、画面を横切る線や移動する図象の相対的な位置関係からわれわれが感じとる「スピード感」の間には、まったく何の関係もないってこった。画面上の図象配置を綿密に計算できるという点において、アニメーションに優る表現手段はないかもしれん。
ついでに言うと(全部ついで)、このお母ーちゃん(ヘレン/イラスティガール=ホリー・ハンター)にベタ惚れ。かつてスーパーヒーロー(ヒロイン)だったことも忘れ、夫の身を案じてさめざめと泣くだけの主婦が、実はジェット機の操縦免許を持ってるってだけで物凄い。だがジェット機の運転中はまだ日和見主義的で、自分の力で直接状況を改善しようという気構えまでは見せない。ストーリー上の要請から、いずれ彼女が昔の自分を取り戻して、大活躍するであろうことは読み取れる。だからいつ彼女が豹変するか、その変貌振りをワクワク期待して観ていた。ところが彼女はちっとも豹変しない。なんと言うか、封印してきた自分の特殊能力を、実に自然にひも解くのだ。ちょうど朝食の支度の次は洗濯、洗濯の次は掃除、みたいな感じで、自然に切り換わった。これ凄かった。具体的に言うと、被弾して大破したジェット機から放り出され落下中、ふと目を覚ます。と、離れたところを二人の子供も落下中。両腕をにゅーっと伸ばして(これが彼女の特殊能力)二人を抱きかかえる(母の仕草、一応)と、コスチューム(伸縮自在)をパラシュート代わりにふくらましてふうわり。着水し、ひとたびパニックをやり過ごしたあと、ロケット弾の描いたヒコーキ雲を指差し、「あのロケット弾が飛んで来た方向に、陸地があるはず」なんて。女の(母の、かな)頼もしさを感じた。
特に、スライドドアに挟まれて身動き取れなくなったシーン。いわゆるドツボにはまった状況だが、少しも慌てず騒がず(内心はともかく)冷静にかつ着実にかせを外していく。ここはとてもかっこよかったし、それ以上にキュートでエロティックでドキドキした。
長くなったが、以上を要するに、視覚的に極めて楽しめる作品だった(違うか)。
90/100(04/12/13見)
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