私の個人的な感情をハッキリ言えば、前作同様、この作品をあまり好きになれない。「好きになれない」というか、厳密には「この世界観に浸り切れない」「映画にノレない」というべきか。

理由のひとつは前作のレビューでも少し触れたが、押し付けがましくも感じる感動エピソードのオンパレードと、人んちのデリケートな問題にワラワラと顔を突っ込んで関係無いのに「カエレ！カエレ！」コールをしたりする、その下町独特のウェットな人間模様の描写が苦手なためだ。

それから、今作では前作を上回る「そつの無さ」を感じた。

給食を我慢して米代を払う少年、あっさりと鈴木家に馴染んで良い子になる少女、おうちのお手伝いをする近所の子ども達。そして茶川とヒロミは言わずもがな、お父さんの幽霊体験、お母さんの恋人との偶然の再会、深夜の思い出フィルム鑑賞などの様々なエピソード。アクマ先生のダンスや風呂上りに牛乳など、随所にちりばめられたギャグ。そして更に、文句のつけようがないほど見事に再現された舞台セット、タバコ屋の角に座っている三毛猫に至るまで、ストーリーから小道具ひとつひとつまで、何から何までこの作品は「そつが無い」。このそつの無さのために、逆に私の心はシラけつつあった。

が、それらの欠点をカバーしたのが役者の演技。全てのキャストの演技が素晴らしく、作られ過ぎで詰め込み過ぎのストーリーに息吹きを吹き込み、現実味を持たせた。白々しいほどの感動ストーリーに役者が踊らされることなく、本当に活き活きと輝いていた。ベタであっても涙が溢れる。これだけあざとい映画であるにも関わらず、映画であることを忘れて彼らの生き様に涙してしまうほど、彼らの演技は素晴らしかった。

彼らは確かに、スクリーンの中の「三丁目」で「生きていた」。それをはっきりと感じさせてくれた俳優達の演技に、惜しみない拍手を贈りたい。