[コメント] セブン(1995/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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劇場公開時は結構注目はしていたのだが、監督があのディヴィッド・フィンチャーと知り、どうせろくなもんは作られないだろうと思い、ビデオで充分だと思っていた。それでレンタルで観て後悔。これは絶対に劇場で観るべき作品だった。
いやはや走る走る。導入部分からビデオドラッグらしい映像が次々と出てきて、頭がパニックを起こした後で平凡な展開を見せるやり方は大成功。画面全体が陰鬱な雰囲気に溢れているに拘わらず、ぐぐっと引き込まれてしまう。そしてその後での猟奇殺人。物語の展開が上手い。猟奇ものの作品の場合、視聴者がしらけては衝撃を与えることが出来にくいのだが、これは平凡な画面でも視聴者を引き込む努力がふんだんに為されているからこそ、猟奇殺人が際だっている。多分にオカルティックな雰囲気を死体に持たせたのも良し。ヴァラエティに富んだ死体の状態は、次に何が来るのかを期待させてワクワクする。だからこそ、B級作品では定番とも言える「怠惰」での死体がいきなり起きあがった時の衝撃が大きくできた(これが中途半端だと本当のB級作品になってしまう)。前半部はストーリーそのものよりも、執拗なまでの画面の凝り方にこそこの作品の見所があるだろう。
それで中盤を過ぎたところから一気に物語は加速する。あっけないほどに捕まる犯人と、その異常な言動。特に「世界の終わり」を口にするに至り、一体何が終わるんだろう?と物語そのものに引き込まれていく。
後半に至り、再び物語は沈静化。この間も上手い。さほど重要なことが起こるわけでもないのに、引き込まれる自分を抑えることが出来ず。
そして衝撃のラスト!あれを「訳分からない」という人も多く見かけるが、犯人にとって「世界の終わり」な訳だから、あれで良いのだろう。実は七つの大罪の最後「憤怒」によって犯人は死亡していることが分かる。敷衍して見るならば、「これが殺人の仕納め。全ての人間の大罪は浄化されたからこの私が最後に死んで世界も終わり」とも、更に敷衍するならば、「映画の終わり」とも取れる。かなり救いようのないラストではあったが、私なりには充分納得。後味も決して悪くなかった。ただ問題はこれだけの時間を画面に引きずられていたため、どーっと疲れが出た事位か?
ところでこの作品を、全ての視覚要素を剥ぎ取ってストーリーだけで見てみると、実はこれコテコテのB級猟奇もの映画であることが分かるだろう。しかしこれをここまで魅せたのがなんと言ってもフィンチャー監督の凄いところ。キャストの配置、オカルティックな設定の拡大、視覚要素、そしてその意識してテンポを変えるやり方でここまでの作品に仕上げてしまった。衝撃のラストというのも、実際はこれをどう視聴者に気付かせないか、と言う点に集中して作り上げたためである。事実あのラストは画面、オカルティックな雰囲気、謎めいた台詞などの要素がなければ衝撃とはなり得なかったはずだ。
少なくとも私の中では『エイリアン3』で見捨てたはずのフィンチャーの存在を再び大きくするに充分すぎる出来ではあった。これがブラッド=ピットの出世作というのもよく分かる。
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