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[コメント] ユージュアル・サスペクツ(1995/米)

この映画をミステリだと考えると★1。「おもしろい?」と聞かれると、「おもしろかったよ〜」と思わせぶりに答えると思う。
Shrewd Fellow

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ミステリ(あるいは推理小説)が好きな人には、そのfairnessという点で文句があるでしょう。私もミステリ好きなので、わかるような気がします。基本的に私も、島田荘司著「本格ミステリ宣言」にあるように、読者(あるいは観ている人)にはすべての要素を提示するのがフェアだという考え方に賛成ですね。だってー、いっときはやった「社会派」というくくりのもののなかには最後の10ページででてきた主人公の不倫相手が犯人だったりするんですよ!これは最悪の例ですが、読者にとってフェアである、ということってわりと重要かつ作者にとってはカケヒキのムズカシイところでもあるんですよね。全部の要素をちゃんと提示することが、はたして作品そのもののオモシロさに直結するか、というと私はすごく疑問に思います。それならパズルでもやってればいいわけで、人間が主人公である限りはわからないことがあって当然で、そこんところを作者の言葉使いやいろんなシカケから推理していくのがおもしろいところなんじゃないかなあ。余談ですが、横溝先生も何かの本で、基本的にはフェアであるがちょっとズルいところのあるミステリの方が魅力的だ、とおっしゃっていました。私も同感です。

この映画は、横溝先生のいうような「基本的にはフェアであるがちょっとズルいところのあるミステリ」だと思います。そして、実に魅力的でした。ヴァーバル・キントが詐欺師であることは映画の最初から私たちに提示されているわけですから、彼の言うことを信用するかどうかは、観ている私たちの推理(判断)にまかされているんですね。(ヴァーバル・キントって名前もスゴいです。)また、すべてがヴァーバル・キントの取り調べの映像化であることも、彼の独白であることも最初から提示されているわけですから、私的(わたしてき)にはフェアの部類に入ります。私はいつも、独白形式、というか一人称の語りは信用しないことにしています。というのも、そんなことホントかどうかわかりゃしない!と思ってしまうからです。(性格悪いですね。でも、ミステリにおいて、この蓋然性というものは結構重要なんですよぉ。)でも、ヴァーバル・キントには、1時間くらいたったころから、すっかりだまされてしまいました!それまでは、ちゃんと「こいつ詐欺師だからな、きっとウソついてる!」と思ってみてたんですけどね。だから、映画がおわったときは「うきょー!ひさしぶりにだまされたあー!!」とつい叫んでしまったくらいです。でも、基本的なことがフェアに提示されていたので、さわやかな騙され感でした。参りましたあ!って感じですね。

でも、翌日になって、「えー、待ってよ。わかったのは、全部ヴァーバル・キントの作り話だったっていうだけで、カイザー・ソゼについては結局なんにもわかんなかったってこと?なんだよ!!」とハタと思いいたり、ボーゼン・・・。終わり方をみると、ヴァーバル・キントがカイザー・ソゼだったと思わせたいのかもしれないけど、私のようなひねくれたヤツには、「もしかしたらヴァーバル・キントはカイザー・ソゼのたくさんいるダミーの一人だったかもしれないワケでしょう?ホントはコバヤシだってアヤシイわよ」などと考えたくなってしまう。結局、カイザー・ソゼについては何も明らかになっていないどころか、カイザー・ソゼという存在自体がヴァーバル・キントの作り話であるのかもしれないわけですからね。ミステリを読み終わったあとで(映画が終わったあとになって)、もっと謎が深まるというは、私はとっても疲れちゃうんです。そのうえ、謎そのものの存在自体がアヤシイなんてね。はじめっから、解明すべき謎なんてなかったかもしれないなんて・・・

私は、やっぱり、最後には、すべての謎が論理的に説明されて、数珠つなぎに1本の糸につながって、その糸が銀色にキラキラ光って見える、みたいなミステリが好きです。そういうわけで、結局は★3になってしまったんです。ほんっとに、不本意でなんすけど。

(評価:★3)

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