[コメント] トゥルー・クライム(1999/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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『ミスティック・リバー』なんかより実は断然素晴らしい演出。重いテーマに対して喜劇性が強いのと、主人公の反家庭的人物像、ラストがハリウッド式ハッピーエンディングであるため、評価や授賞しづらい作品であろうことは確かだろうが、「映画」として観れば、これほど魅力的なものはちょっと他にない。
ジェームズ・ウッズの編集長が出てくるシーンは全て驚愕的に面白可笑しかったけど、何より、記憶に鮮明なのは、イーストウッドと愛娘の動物園でのデートシーン。入場口での電話のシーンを「タメ」にして、台車に乗せて一気に解放!しかも、掛かる音楽がエレクトリック・フレットレス・ベースに口笛のそれ!この幸福感・躍動感は他のイーストウッド作にはそうそうないだろう。そして大転倒!不謹慎だが笑ってしまった。で、自宅のシーンにジャンプして、お母さん真っ青、「最悪な亭主だ」と、ドアをピシャリ。なんというリズム感だろう。
続くは全く正反対のシーン。死刑囚の面会室。「緑のクレヨン」が無い、と泣きじゃくる死刑囚の愛娘。仕方が無いから他から塗ろう。すると朗報、クレヨンがあったという。親父も喜んで画を覗き込む。勿論、まだ「天国の牧場」の草地の部分は「真っ白」だ。
するとバーンと舞台移動。喫茶店の絵画の「緑の大草原」の大写し。(俺はここで涙が出そうになった。)パっとカメラは流れて窓際のイーストウッドと目撃者の会計士へ。二人の問答が続く。その中でイーストウッドは確信する。このユダ公、嘘付いてやがるな、と。
するとまたまた場面移動。死刑囚の面会室に戻り、「さっきのまま」の黒人親父のアップショット!(俺はここで震えが止まらなかったです)本当に、本当に、家族のことを思っている一人の父親の表情が、「さっきのまんま」変わっていないんだもの。
もう、この一連のシークェンスに打ちのめされて、俺はこの映画を全肯定。無理なアクションも、人間性最悪のヒーローも、普段だったら罵詈雑言吐いて貶す強引なハッピー・エンディングも全く否定する気にならない。
というか、良くいう「ハリウッド式ハッピー・エンディング」ってのは、こういう粋で洒脱で骨太な作品にだけ、特別に許されて来た、由緒正しきものだったんじゃなかったっけ?
最近は大した技術も、中身もないくせに、ラストだけやたらハッピーで、お涙頂戴で、それを以って「ハリウッドのハッピーエンドを馬鹿にするな!夢を壊すな!」なんて、甘ったれたこと云ってる作品が多過ぎやしませんか?
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