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[コメント] 拝啓天皇陛下様(1963/日)

短い上映時間の間にこれほど笑い、むせび泣かされる作品はそう多くない。そして父はアノ消灯ラッパを懐かしそうに口ずさむ。そういう青春もある。
sawa:38

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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どこの国でも喜んで徴兵されていく奴はいない。鉄の規律の為とは言いながら「いじめ・しごき」に耐える新兵時代は生き地獄のように感じる者の方が多いだろう。

そんな軍隊を「三度の飯が食え、風呂まで入れる」と天国のように感じ、除隊を嫌がるヤマショー。生き地獄を天国とまで感じるような彼はどんな半生を送ってきたのだろうか?それに思いを馳せるだけで私は涙を禁じえない。

文盲の彼をまるで出来の悪い子供を愛するように見守る中隊長。父親を知らないヤマショーは、この厳格な中隊長に父親を感じる。この二人を軸としたドラマが、どう拡がっていくのかと思った矢先に中隊長は大陸で戦死させられる。頭を撃ちぬかれての戦死だという。死の間際に「天皇陛下万歳を三度唱えた」とあり得ない事を言い張るヤマショーの心中を察するに私は涙を禁じえない。

彼は軍隊で生きる糧を得、友を得、父を得た。私はけっして軍隊を賛美するつもりはないが、特殊な生活環境の中で失うものもあるが得るものもある。私の父も制裁という名のしごきに耐え、多くの友を得たようだ。子供の頃、よく軍隊生活の話を聞かされた記憶がある。「戦争」の話でなく、「軍隊」の話だった。いま思うに父の話は「軍隊」の話をわざわざ私にしたのではなく、単に自分の青春時代の話を子供に伝えただけだったのだろう。

私も自分の息子に青春時代の話をする時が来るだろう。いったい何を話すのだろう?遊びまくったアノ頃、バイクや女の子や映画の話なのか。きっとどうでもいいような話しか出来そうも無い。しかし、父やヤマショーたちのように辛い思い出を語る事のない時代を過ごせた事を幸せに思いたい。

息子が私の「どうでもいいような話」を聞かされる時代はどんな時代なのだろうか?「そんな平和な時代があったんだね」と言われるような時代にだけはなって欲しくない。

(評価:★5)

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