[コメント] リリイ・シュシュのすべて(2001/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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僕にとっては、この映画がDVで撮られたとか、手持ちだとか、ホームビデオが挿入されているとか、そういったことは割とどうでもいいんです。とにかく、映画が後半を過ぎたあたりからの感情の爆発力が半端じゃない。 時折、瞬間的に感動を呼び起こさせるようなシーンが現れます。主人公が自転車で母親のことを追い越す瞬間とか、少女が死ぬ直前にカイトをするシーンとか。そういった、映画全体に散らばった力強いシーンたちが、後半に爆発力を与えています。 岩井俊二監督の以前の作品は、僕はそれほど評価はしていません。苦手。といったほうが分かるかもしれません。少女漫画から受けた影響だとか、PVのセンスが溢れまくっている映像などが少し身を引かせてしまっているんです。ポップというものを僕は少し卑屈な眼で見てしまうし・・・。この作品でも、今一歩踏み込めていないと思うところは多々あります。しかし、90年代という時代が持つ映画自体のひ弱さから少し脱却したように感じます。
中盤、沖縄のシーンは、『スタンド・バイ・ミー』を思い出しました。人生においてのある種の出来事は、とくに多感な青春時代においては、一人の人間の人間性を大いに変えてしまう可能性があります。 主人公の友人が、変貌を遂げてしまうということが、十分に納得できる力を持っているシーンだと思いました。手持ちによるホームビデオのような映像にしたのは、観客にあの旅を体感させるためのような気がします。 もっと、表現をシンプルにすれば、ものすごい傑作になっていたような感じがします。例えば、映画に挿入される主人公のホームページでのやり取りは、蛇足ではないでしょうか。主人公がその場所でしか自分の本当の感情を表現できないというのは分かりますが、あの観念的な言葉の数々は、映画の自由度を狭めていると感じました。また、歌手とか、歌を、なにか映画のモチーフにしてしまうと、やっぱりちょっと引いてしまいます。その歌の世界に入っていけない人は蚊帳の外に弾き出されてしまいました。
けして、完成度が高い映画ではないと思います。しかし、映画全体を眺めた時に立ち上ってくる匂いが尋常ではないことは確かです。
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