[コメント] ラスト サムライ(2003/米=ニュージーランド=日)
つっこむ気も失せる様なチンケであざとい脚本。”ゴルフ場の決斗”はそれなりに魅せる。渡辺謙を見に行ったので満足はした。彼の更なる飛躍を期待する。
冒頭からもうイキナリ。戦争には勝ったけど心は傷ついたアメリカ人。またそれかよ。そんなアメ公に感情移入なんかして堪るか、と思った。
歴史考証のいい加減さはもうどうしようもない。つっこんでも仕方ない。オープンセットもアホかと思った。
逆に天皇との謁見シーンは『キル・ビル』に劣らぬ馬鹿馬鹿しさが充ちて楽しかった。
考証はいい加減でも観客の心理操作は周到。そこがアメ公のアメ公たる所以なんだが、真田に殴らせることで観客の同情を煽り、間髪要れずに子供を絡めたエピソードを持ってきて主人公への感情移入を完成させる。お定まりの手段である。そして母ちゃんを落とすにはまず子供から、これもセオリー通り。
渡辺謙は素晴らしいね。この人が出てる場面は全ていい。借金で首がまわらなくなって人間の格が二周りくらい大きくなった。二刀流の剣戟も様になる。
決戦のシーンは一目瞭然のゴルフ場で失笑してしまったんだが、アクション演出は流石のハリウッド印。ここは皮肉抜きで迫力があった。こういうのは金持ちじゃなきゃ撮れない。5月25日に桜が満開でも気にしない。
ラスト。脚本が幼稚過ぎて政治性同時代性を帯びるに至ってないのが吉と出たようだ。やや右翼的に響くも君主あってのサムライだし、男たちの侠気を描けば自然にそうなる。
この映画に顕れているのはアメ公どもの日本文化に対するリスペクトというよりも純粋な同化願望で、それが商魂より前に出ている点で憎むことが出来ない。少年漫画の如きチンケな映画であることに変わりはないので好意的な評価はしかねるが。
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