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[コメント] リリイ・シュシュのすべて(2001/日)

心をかき乱された。物語からは目をそらしたいのに、美しすぎる映像がそうさせてくれない。
なつめ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







映画館を出た後しばらく膝ががくがくし、みている間よりもみおわってからのほうが重さを感じる作品だった。細かい不満点はあっても今はただそれも気にならないくらいの圧倒的な余韻にひたっている。

この映画はきっと好きになる、と思う映画には最初の映像でノックアウトされることが多い。今回も、ざあっと遠くまで広がる(その遠さといったらない)田んぼの中で一人音楽を聴く主人公の映像(そしてひたすら遠くにある道路には車が走っている)で、「ああ、もうこの映画を愛さずにはいられなくなるんだ」と実感した。

場面で使い分けている映像の質感、色味が素晴らしい。そして映像の美しさに釘付けになっている目に映る物語はやりきれないのだ。なんて残酷なみせ方。

自分にリリイ・シュシュを教えてくれた久野に対して、ああいうことをしてしまった星野、そしてそれを手引きした蓮見。傷つけ傷つき自分に刃を向けているようなあのエピソードの、張り裂けそうな精神的虐待。沖縄で死にかけた星野はあのとき死んでしまって、息を吹き返した時には別人になった、そう思うしかない。

津田と蓮見のファミレスでのシーンには泣きそうになった。「どうして断ったんだよ」。カイトを楽しんだ彼女のあまりにも普通の女の子の笑顔。

この映画のコピー、“十四歳の、リアル”。映画をみ終わった今、「これが彼ら十四歳のリアルな日常です」という意味ではないと思っている。ハタからみたら「リアル」に見えることも、彼らにとっては「リアル」ではない(「リアル」と思いたくない)ことがあると思う。彼らにとっては、信じられない、信じたくない日常の状態・環境を「リアル」とは呼びたくないし、呼べないのではないか。「リアル」と「日常」は結びつかないのだ。安らぎを感じるとき・こと・場所、それしか「リアル」とは呼べない。そして、逃げたい何かがあるから、「リアル」を求める。

(評価:★5)

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