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[コメント] 悪魔のいけにえ(1974/米)

終わってこれだけほっとした気分になった作品も珍しい。たとえそれがどんなオチであったとしても。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 これが監督デビューとなるトビー=フーバーが作り出したシリアル・キラーの走りとも言える作品。この作品が後年のホラー映画に与えた影響は大きく、特に人の顔の皮をかぶり、電動ノコギリをふりかざすレザーフェイスの存在感は特筆もの。

 低予算、劣悪な撮影環境、素人同然のキャラクターたち。それをちゃんと一本の映画に仕上げ、飽きさせない作品を作れたのは、トビー=フーバー監督がきちんと時間把握をしていたためだが、ピンポイントで登場するレザーフェイスの存在感やイッちまった家族の描写が上手くタイミングを計っているところにあるだろう。それに、主役のサリーを演じたバーンズの絶叫を忘れてはならない。声も枯れんばかりに長々と叫び続ける彼女の叫び声は、全ての言葉を超越した、怖さの演出だった。(後で相当喉が痛かったんじゃないか?)

 元々この物語は実話を元にしていて、本当は鄙びたモーテルが舞台。そこでの主人エド=ゲイン(実名)は骨を使って細工をするのが趣味で、その趣味が高じて、人間の骨を使って様々な細工物を加工するようになった。最初は墓場から死体をあばいて骨を得ていたらしいが、その材料に困ると、モーテルの泊まり客を殺して、その骨とか皮とかを使ったらしい。これがレザーフェイスの設定の元になっているのは確かだが、この話は、同時にある有名な映画をも想起させるだろう。実は『サイコ』も、後の『羊たちの沈黙』も実は同じ話を元ネタにしている。

 言ってしまえば、同じ話をヒッチコックデミがサスペンス仕立てにしたのに対し、フーバーはそれをホラー調のシリアル・キラーにしたと言うことになる。まあ、完成度の違いについては言うまいが、ここではレザーフェイス以外にも殺人鬼の一家という魅力あるキャラクターたちを配し、ストーリーのメリハリをつけている。殺害される者より殺害する方が多いと言う奇妙な組み合わせを配したため、家族の大部分は誰も殺さずに終わってしまったのがちょっと残念かな?

 この作品は近代ホラー映画としては非常に質が高く、後のホラー映画に大きな影響を与えたのだが、残念なことに、パニックを起こし、叫び声を上げるだけなら素人でも充分主役になれることを奇しくも示してしまった。以降粗造乱造されるシリアル・キラー作品は同じような設定と化け物、SQ(スクリーミング・クイーン)を配するだけの劣悪な作品を多数生むことになる(そう言う作品をこそ、愛する人も多いのも事実だが)。

(評価:★4)

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