考えてみればパン・フォーカスだって、前景と背景の間の距離を「省略」して、切り返しを不要にする経済術が１つの特徴だと思うし。２時間程度の作品に仕上げようとして、まず監督は膨大に存在する場面を、バラバラにするところから始めているように思える。そして省略できるものをできるだけ除けて、省略できなけれは２層構造にしてみたりして、パズルを組み立てるように枠内にキッチリはめこんでしまう、しかも物語は全然端折られてないという才、やはり並じゃない。映画の教科書と言われる所以は、実は時間軸を越えて何もかも解体してしまう、ある意味傍若無人な監督の作業の賜物であることを考えると、天才にとっては映画なんてただの玩具だったのでは、と思わずにはいられない。