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[コメント] ロード・オブ・ザ・リング(2001/米=ニュージーランド)

「指輪物語」という作品は単なる「RPGファンタジーの元祖」ではない。(以下大幅加筆修正→)
は津美

私はRPGファンタジーが嫌いだ。露出度の高い服を着たエルフの女の子や魔獣を召還する魔法使いが出てきて、ひたすらレベルをあげて敵を倒す、自分探しの成長物語はありふれて陳腐、CGばかりやたらスゴイ。こここ、こんなツマンネーものに私の貴重な時間をさけるか!(怒)…という偏見がある。(とまあ、けなしてしまったが別にドラクエやFFを糾弾したいわけではなく、要するにそこから「プレイヤーの為に作られた世界の嘘くささ」を感じるのが苦手なのです。)

で、そんな偏見に満ち満ちたワタシなので当然ながら「指輪物語」は読んだ事がなかった。しかし「映画を観る前に原作は読む派」であるので、苦手なファンタジーと言えども読まねばなあ〜仕方ねえなあ〜…と手にとった。

結果。……私は間違っていた!ファンタジーというジャンルの中にこれ程までに素晴らしい作品があったとは!目からウロコ!!瀬田訳の名文のおかげもあると思うが、私も9人の仲間と一緒に旅をし、笑い、泣き、生きた。(いいトシして本読みながら鼻水たらして泣いたよ。)シンプルで根元的なテーマ。愚かで業の深い我々への賢明な示唆。その世界は決して古びる事はなく、深い奥行きを持っている。この作品をRPGファンタジーの元祖、という言葉のみで片付けてしまっていいのだろうか。否だ。

とは言え、ここは原作について述べる場所ではない。映画と原作は切り離して考えねばならない。ならないが、申し訳ないがこの作品に限り原作と切り離して考える事は私には出来ない。あなたの人生と映画とは何の関係もないのだからあなたの今までの経験や生き方とは切り離して映画を観て下さいよ、というのと同じだから。だって私は読んでしまったんだもの。以下は、そんな私の『ロード・オブ・ザ・リング』への評価。

確かに、「映画」としての完成度は満点ではないと思う。例えば、殺陣の撮り方が下手でフラストレーションがたまるし、黒騎士も妙にチープ。ビジュアル的な面においても特に新鮮味は感じられないし、奥行きがいまひとつ。(だが原作のイメージは少しも損なっていない。「より派手に」ではなく「よりリアルに」な美術だろう。)女優陣は「最も高貴で美しい」とはあまり思えない。(まあ、アラン・リーの絵の雰囲気ではあるかもしれない。)女優以外のキャスティングは完璧だが。それとやはりエピソードの詰めすぎ(これでもだいぶはしょってるけど)で、せわしない印象を受けるし、せっかくの世界観をじっくり楽しむ余裕がない。

でも、でも私からみれば最高の出来だ!あの複雑な原作をよくここまで破綻なく綺麗にまとめたと思う。そして「原作をまとめただけ」ではなく、原作にあるスピリットを表現しようとしたいい脚本だった。(字幕版はダメ!あまりに説明不足。あまりにも原作のニュアンスを無視している。これでは原作を知らない人が誤解するのも無理はない。「韋駄天」も不可不可不可!!!)

ガンダルフじーさんは相変わらず強いんだか弱いんだかわからないし、アラゴルンも、レゴラスも、かっこいいけどヒーローじゃない。無力で何の役にもたたないちっぽけな存在が、剣や魔法の力によってではなく友情とその心の在り方によって大きな役割を果たす。その後ろ姿は「人間」という存在に似ている。そんな一番大事なところが、ちゃんとこの映画の中にも生きている。

そして、何よりそこには中つ国がある。その圧倒的な実在感!

ありがとうピーター・ジャクソン!こんなにも原作への熱い思いがひしひしと伝わってくる映画を作ってくれてありがとう!!3時間なんて短かすぎる。3部作が完成して、3作一挙上映企画があったら9時間座りっぱなしだろうがかまわない!

願わくば、一人でも多くの人が原作を手にとりますように。

ああ早く続きが観たい。

__

ところで、ショーン・アスティンが出てるときいて、絶対ホビット役に違いない!と思っていたのですがやっぱりホビットでしたよ。しかもサムでしたよ。予想よりかなり横に大きくなっていましたよ(汗)

(評価:★5)

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