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★3彼とわたしの漂流日記(2009/韓国)「ボーイ・ミーツ・ガール」の『裏窓』的変奏。一方的な窃視の関係からどのように/どのようなコミュニケーションを発展させるのか。その点でまったく予期通りの展開をたどるが、同時に嬉しく期待通りの感動に達する。「フルフェイスのメット」といった小道具や通信言語が「英語」であるなどの細部選択が楽しい。[投票]
★3フェアウェル さらば、哀しみのスパイ(2009/仏)配役次第で随分と色が変わりそうな映画だ。熊のようなエミール・クストリッツァは強固な意志の持ち主ではあっても決して思考が硬直した堅物ではなく、よくユーモアを解する。「共産主義国家の要職」や「スパイ」といった肩書が持つイメージに縛られない人物造型のニュアンスが映画の足場を確かにしている。 [review][投票]
★4すべて彼女のために(2008/仏)準備編・本番編と二分できる構成にしても個々の行動の描写にしても徹底してシンプリシティが貫かれ、それが映画の感情をいっそう強固なものにしている。これが本当にリアルなのかどうかは知らない。しかし、この簡素かつ微細な事象の丹念な積み重ねこそが「映画」が目指すべきリアリティだと思わされる。 [review][投票]
★3キャタピラー(2010/日)「経済的に切り詰められた」ではなく「これ以上引き伸ばせない」八四分間。事件らしい事件の起こり得ない銃後時間がミクロな人間関係を煮詰め尽くす。壮絶な「介護」の映画である点でベルイマンなりカサヴェテスなりの夫婦映画群と一線を画しつつ、御真影を執拗に追うカメラ運動で画面に不穏な緊張を走らせる。[投票]
★4魔法使いの弟子(2010/米)ニコラス・ケイジは豊かな長髪を惜しげなく振り乱すが顔芸はほぼ封印。ジェイ・バルチェルが笑いどころの多くを担ってコメディアンとしての優秀さを誇示している。モップ反乱とプラズマ演奏が特に良シーンで、魔法映画にカーチェイスをねじ込む心意気なども嬉しい。トビー・ケベルも今後に期待が持てる人材だ。[投票]
★3ソウル・パワー(2008/米)GFOSのJBだけで最低九〇分は見たいところだが、彼のみに頼らずとも曲がりなりにも一篇のドキュメンタリが成立しえるのは映画の作りが確かであるからだ。とは云え、やっぱりJBだけで九〇分は見たい! 人類史上でも指折りのスーパースターだと思う。いつの世も人はスターを見に映画へ足を運ぶ。[投票]
★3レポゼッション・メン(2010/米)デヴィッド・クローネンバーグを期待してはいけない。終盤のジュード・ロウの立ち回りは『オールド・ボーイ』を参考にしつつもそこまでは達していないという程度だが、スラムと臓器工場におけるモブ的アクション演出はパニック感に溢れて全篇中の白眉。フォレスト・ウィテカーの二面性も切なくてよい。[投票]
★3乱闘街(1947/英)洒落たタイトルバック。奇矯な振舞いの作家アラステア・シムや声帯模写少年や連続バス転落などの面白演出を散りばめつつ、筋は意外と本格的なミステリ。少年たちの常軌を逸した増殖〜カーアクション〜廃墟での対決、という昂揚感溢れる終盤の畳み掛けが白眉。全般に戦後から間もない屋外の撮影がよい。[投票]
★4カインド・ハート(1949/英)人はこれをブラック・ユーモアと呼ぶのかもしらんが、ブラックすぎて笑えんよ。だが世評に違わずとても面白い映画だ。ハリウッド黄金時代のスタジオワークに負けず劣らずの安定感。私の苦手なほぼ全篇がナレーションを伴った回想形式だが、それは結末部を際立たせるための仕掛けでもあり、納得度は高い。 [review][投票]
★4ガンファイターの最後(1969/米)ロバート・トッテンについては何も知らないが、至るところにドン・シーゲルの作家的な徴が認められるのは確かであり、これをもっぱらシーゲルの作品として扱いたくなるのも無理はないと思わせる。「西部開拓時代の終焉」の映画として共時的な、「保安官の孤立」の映画として通時的な作品群の形成に与る。 [review][投票]
★3BOX 袴田事件 命とは(2010/日)これを馬鹿にすることは容易である。しかし全表現に平明の限りを尽くす演出家の態度に私は畏れを感じる。終盤の超現実的描写でさえ平明だ。ここまで平明な、誰が見ても「分かる」映画は決して普通でない。それは素材に対する覚悟ゆえのものか。観客を信用する/しないの地平すら超えて、高橋伴明は本気である。[投票]
★4ブライト・スター いちばん美しい恋の詩(2009/英=豪=仏)グレイグ・フレイザーとはいったい何者なのか。この光とミザンセヌの美しさにはひれ伏してしまうほかない。室内に蝶が舞う夢幻な画面。あわやハワード・ホークスに幸せなセッション。天使のようにアビー・コーニッシュに付き添う弟妹。贅を尽くした細部の饗宴が常套のメロドラマを輝かせている。傑作。[投票]
★4やさしい嘘と贈り物(2008/米)ニック・ファクラーの演出力が将来にわたる彼の活躍を約束するほどのものかについては判定を保留するが、大した度胸の持ち主であるには違いない。マーティン・ランドーエレン・バースティンの顔面力に拠るところ大きいとは云え、幸福感とサスペンスをこうもぬけぬけと両立させてしまおうというのだから。 [review][投票]
★3ザ・エッグ 〜ロマノフの秘宝を狙え〜(2009/米=独)ミミ・レダーはもうちょっとやるものだと買い被っていた。個々の演出が駄目というより全体に緊張感の総量が過小で、コメディ成分がそれを補償するでもない。アントニオ・バンデラスもよくないが、責任はむしろキャスティング班にあるか。こういう「若僧」ポジションを演じてよい年齢・経歴ではもうないはずだ。[投票]
★3小さな命が呼ぶとき(2010/米)語りの拙速なことは否めないが、画面に積極的に暗がりを作り出す引き算の照明設計が映画に落ち着きを与えている。奇跡(ファンタジー)ではなく、あくまでも利害調整の物語として語っているのは美点だろう。そこにあって最も強固な意思を貫いたブレンダン・フレイザーがこのような結末を迎えるのは道理である。[投票]
★3永遠の人(1961/日)仲代達矢佐田啓二の直接対決を遅延しつづけることで映画感情の持続と高揚を企むも失敗に終わっている。高峰秀子ですら第一章を除いてあまりよくない。田村正和の失踪からその帰結に至るまでのシーンは田畑や火山の力強いカット群が切迫的に繋がれ、全篇のハイライトを成す。木下忠司の仕事は軽蔑に値する。[投票]
★5あの夏の子供たち(2009/仏)ジョナサン・リッチマン“Egyptian Reggae”で始まるタイトルバックからすでに傑作。「移動」と「会話」の映画だ。人間を描くとは、その不在を描くとは、つまりこういうことだ。全人物の全所作が愛おしい。とりわけアリス・ゴーティエの躍動は永遠に記憶に留めたい。人生はかくも厳しく、かくも勝手に前進する![投票]
★4チェチェンへ アレクサンドラの旅(2007/露=仏)やはり声の定位が異様で(ソクーロフ・マジック)、映画はただならぬ気配に包まれる。ガリーナ・ヴィシネフスカヤをじいーっと凝視するまなざしもまた異様だ。列車の乗り降り、孫を含む兵士たちとのやりとり、挙句に戦車に乗り込んで銃を構える、などなどを盛りに盛り込んだ戦慄のおばあちゃんアクション映画。[投票]
★3グリーン・ゾーン(2010/米)マネーメイキングスターでありながら匿名的な一准尉を演じて違和感なく、かつジェイソン・ボーンの残像を利用することで戦場における唯我的活躍の納得性を担保できる。という点でマット・デイモンの起用は理に適っている。リアリティの欠如についてはプロットがエンタメ作法に則ったためだから不平は云わない。 [review][投票]
★2苦い蜜 〜消えたレコード〜(2010/日)破滅的につまらない。怒り&呆れを通り越して恥ずかしさに身悶えし、最終的にはなんだか虚無的な、生きることに投げやりな気持ちになる。誰ひとり映画を撮ろうとしていない。映画の芝居をしていない。スタッフにも出演者にも悪気がないだけに却って始末に負えない。笑える箇所も無。カルト映画の資格は有。[投票]