3819695さんのコメント: 投票数順
トランス(2013/米=英) | さすがにダニー・ボイルは品性下劣だ。ジェームズ・マカヴォイもロザリオ・ドーソンも嫌いになりそう。作中人物の印象が俳優に対する好悪まで変えかねないあたりパワフルな作品であることは否定しないが、ヴァンサン・カッセルの部下三人のキャラクタを膨らませない点を見ても映画音痴は歴然としている。 | [投票] | |
嘆きのピエタ(2012/韓国) | 私が変わったのかキム・ギドクが変わったのか、どうも手前勝手に定めたルールの上で「一番の悲劇」を拵えているようで、この作為性にはちょっと付き合いきれない。人力を借りず自動的に絶命に至らしめるというモノの装置的な用法など、着想の単位ではいまだ捨てるには惜しい面白さを持っているけれども。 | [投票] | |
ウォーム・ボディーズ(2013/米) | 吸血鬼映画三作に続いてゾンビ映画を撮るハビエル・アギーレサロベ。米国で仕事をするにしても『ザ・ロード』か『最終目的地』の線で行ってほしい。主演男女の友人ロブ・コードリーとアナリー・ティプトンの役が次第に大きくなっていくのは嬉しい。劇中の既成曲チョイスは大ネタ仕掛けもあるが不発気味。 | [投票] | |
人生、いろどり(2012/日) | 冒頭部が示す農業にまつわる絶望の深さは『奇跡のリンゴ』の比ではない。「いろどり」を名乗っている通り、共時的にも通時的にも色彩設計に腐心して視覚的な画面を創作している。富司純子・中尾ミエがしっかり泣かせてくれるのもいい。現代日本映画の平均的制作規模の下ではこれが大衆娯楽作の理想形だ。 | [投票] | |
スター・トレック イントゥ・ダークネス(2013/米) | キャラクタの習熟度が格段に向上したクリス・パインは安定感と躍動感を兼ね備え、宇宙SFであっても肉体の酷使こそが映画源であることを知悉したJ・J・エイブラムスもさすがに及第点超えの活劇シーンを取り揃える。もっと笑いを解する台詞作家を脚本班に加えて、会話劇としての練り上げを期待したい。 | [投票] | |
25年目の弦楽四重奏(2012/米) | 戯曲の原作でもあるかのような充実した芝居を誇り、フレデリック・エルムズ撮影の安定感は画面の独善的な突出を避けつつ、映画化の意義を静かに主張するだろう。各々の加齢のためハンサム成分の差が相対的に縮小し、クリストファー・ウォーケンの顔面はいっそうクリント・イーストウッドに接近している。 [review] | [投票] | |
ウルヴァリン:SAMURAI(2013/米) | 侍にヤクザに忍者。もちろん嫌いではないが、クリシェを召喚してそれで満足という風情は虚しく、当方としても「やはりジェームズ・マンゴールドは優等生の域を出ない」などとクリシェじみた言葉を吐くほかない。映画にはもっと夢を、日本を舞台にしたアメリカ映画であればなおのこと、夢を見せてほしい。 [review] | [投票] | |
NINIFUNI(2011/日) | あるワンカットを核に据え、全篇が演繹的に組織されている。筋肉質で強固、しかし息苦しい構成だ。逃走と彷徨のロード・ムーヴィとして撮りたい状況を用意しながら、宮崎将にロード・ムーヴィと呼びうる移動距離は与えられない。ジャンルに対するある種の裏切りがこの映画に固有の感情をもたらしている。 [review] | [投票] | |
31年目の夫婦げんか(2012/米) | 役者の力量に不足があろうはずはないが、物語の展開は白々しさに覆われている。この種のセラピーの標準がいかなるものかは知らねども、夫妻が取り組む課題は存外に真っ当。「風が吹けば桶屋が儲かる」式の奇想天外な療法を導入して喜劇の度を高めたい。スティーヴ・カレルの活用に無頓着な演出も罪深い。 | [投票] | |
アンチヴァイラル(2012/カナダ=米) | クローネンバーグとリンチ、両デヴィッドの関心を承け継いだ「肉体」―より正確には「肉」と「皮膚」―の映画。演出家の美意識に適うものだけがフレーム内に存在を許される潔癖症的なルックの一貫性、巻き込まれサスペンスの型を終えてなお観客を未踏の光景に連れ去るラストシーンの心意気に頭が垂れる。 [review] | [投票] | |
ブルー・アンブレラ(2013/米) | 写実主義を窮めた描写密度と、いっそう簡素な擬人化のデフォルマシオンが幸福な結婚を遂げている。青傘の飛翔は意思に基づく能動的な運動か、はたまた風次第の受動的な運動か、両者の按配を機微豊かに描き込むあたりがピクサー動画の勘所である。悪天候下におけるアルベール・ラモリス『赤い風船』翻案。 | [投票] | |
モネ・ゲーム(2012/米) | コーエンらしい計画破綻の物語にコーエンらしからぬロマンティック・コメディの気分が添えられる。脚本が想定したシチュエーション・ギャグは再三上滑りを晒すが、キャメロン・ディアスの全表情と全発声は正確無比そのものだ。この一五年間、彼女がナンバーワン・コメディエンヌの座を譲ったことはない。 | [投票] | |
災厄の街(2006/米=カナダ) | やっぱりトビー・フーパーは凄い。殺人/人体損壊を多様に描き分ける手並みは独創的かつ安定感抜群で、漫画家保安官ブレンダン・フレッチャーや神父テッド・ライミ(!)、記者クリント・カールトンなど脇の人物配置も充実している。懺悔室の惨劇には本気でビビり、救いゼロの終幕ぶりには唖然&絶句。 | [投票] | |
少年H(2013/日) | 相変わらず現代日本映画は時代がかった美術が貧弱で、一家が居を構える路地はハリボテで拵えたゴーストタウンのようだ。最も期待せなんだ空襲シーンはむしろよく演出されている。「目前の地面に爆弾が突き刺さる」という罹災者視点を貫いた空襲表現が真に迫り、ここに限っては作り物臭い町並みも活きる。 [review] | [投票] | |
トゥ・ザ・ワンダー(2012/米) | 空間における被写体の収まり具合がよい。女優を美しく撮る術も心得ているようだ。レイチェル・マクアダムスは『恋とニュースのつくり方』以来のルックス・コンディションで、オルガ・キュリレンコの転婆少女じみた幼い挙動には身悶えを覚える。だが清々しいほどに退屈な映画だ。不眠症患者に処方したい。 | [投票] | |
17歳のエンディングノート(2012/英) | 凡百の難病噺と一線を画すのはダコタ・ファニングの弟役エドガー・キャナムの配置と造型だ。“TESSA”が町中に氾濫するシーンなど、ちょいと間抜けでロマンティックな演出もいい。映画ファンとしてはどうしても『さらば青春の光』が想い起こされるブライトンの崖の風景にも心穏やかではいられない。 | [投票] | |
アイアンマン3(2013/米) | 無人機やグウィネス・パルトロウに活躍の場を与え、一方で「生身」のロバート・ダウニーJr.の奮闘も描くなどしてヒーロー性の所在について考察を繰り広げている。だが、そもそも映画の面白さとアイアンマンスーツの数量に比例関係は存在しない。「弔い合戦」であることを忘れがちになるのも無神経だ。 | [投票] | |
すーちゃん まいちゃん さわ子さん(2012/日) | 傑作『人生、いろどり』冒頭画面を底無し沼のごとき絶望感で塗り潰してみせた御法川修にしては、作中人物の具体的かつ切実な苦悩を描くに際してもほどよい口当たりの苦みに甘んじている。云うまでもなく、ただしこれは、柴咲コウ真木よう子を抱きしめたげたいっ的エモーションと両立不可の不平ではない。 | [投票] | |
孤独な天使たち(2012/伊) | 思春期の危機を決して深刻に描かない軽やかさに「若々しい老い」という演出家の現在の在り方が認められる。ポップソング(“Space Oddity”)と映画の化学反応は、近年ではウェス・アンダーソン+ランドール・ポスターの諸作やフィリップ・ガレル『恋人たちの失われた革命』『灼熱の肌』に次いで鮮烈だ。 | [投票] | |
コズモポリス(2012/カナダ=仏=ポルトガル=伊) | 巻頭巻末の抽象画やハワード・ショア+メトリックの音楽を含め、映画の総合的意匠は精緻を窮める。混沌の度を深めてゆく車窓風景やマチュー・アマルリックの躍動、絶妙に理解不能な台詞はよいが、一対一芝居の連続には刺激が欠け、カフカ『城』的「辿り着けない物語」への裏切りも拳銃だけでは贖えない。 | [投票] |