★4 | ブルーベルベット(1986/米) | 「穴」を伝って光と闇を行ったり来たり。行き来するごとに、日常だと思っていた光が闇に満ちたものに見え、非日常と思っていた闇が妖しい魅力を持って輝き出す。プロットも劇伴も撮影も、この「逆転現象」に傾注した結果、リンチの伝家の宝刀「暗黒の光」と「輝ける闇」が現出する。そして、それは「穴」を経由して旅する者でなければ見えない真の世界。決して「異常」ではない地続きであるという詠嘆と真摯。
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★4 | ワイルド・アット・ハート(1990/米) | 闇(クソッタレな世界)に灯るマッチの炎(愛)、なんて生半可にやれば笑われるだけだが、根がロマンチストのリンチが照れつつも本気で撮るから泣かせる。炎が世界を焼き焦がす破滅的展開かと思わせる開幕だが、意外にミニマムな生に拘泥するのがむしろ素晴らしい。単に世界を明るく照らそうというシンプルには強く共感する。後作の禍々しい陽光の方が高水準だが、この明るさは素敵だ。B級っぽい演出もパルプ小説的でいい味。 [review] | [投票(2)] |
★3 | 砂の惑星(1984/米) | 劇中の「スパイス」の熱に浮かされたようなリンチの鋭敏で変態的な五感を、強制的に共有させられる。この拷問的事態が面白いかと問われれば、やはり面白いと答える(五感が優れた映画はいい)。主題たる「スペースオペラ」は二の次感が甚だしく、あらゆるセクションでの怨嗟の声が聞こえるようだが、迷作の愛嬌が半端なく、忘れられない一本になっている。 [review] | [投票] |
★5 | インランド・エンパイア(2006/米=ポーランド=仏) | そう、これが魅惑の「電波」の世界。「狂気」のシステムをめぐる最狂の「ジャズ映画」。何たる恍惚。乙。 [review] | [投票(4)] |
★4 | ストレイト・ストーリー(1999/米=仏=英) | 「人生の収穫日」に自らトラクターで向かい、その日を家族と迎えること。たびたび挿入される麦の収穫の空撮と星空が命の連鎖を想起させる。いつにも増してセンチメンタルなバダラメンティのスコアと柔らかく優しい撮影が遂に陽光から禍々しさを除き、何より一片の星影も闇の中に認めたことのないリンチが、ロストハイウェイの爆走の果てに見出した星空に嘘はない。 [review] | [投票(1)] |
★4 | ロスト・ハイウェイ(1997/米) | それまで「穴」「光」「カーテン」を介して異世界と繋がっていたのが、ここから「顔(肉体)」「名前」を介してねじれた迷宮を創造するようになった。それらが「穴」(結節点)になったのだ。そして「穴」は拡散し、偏在するようになる。何が中で外か、前か後か、果てない混沌が広がる。変哲のない部屋、陽光をこれだけ恐ろしく、しかし蠱惑的に撮れる監督はやっぱりいない。 [review] | [投票(1)] |
★4 | イレイザーヘッド(1977/米) | レバー男にしろ瘤女にしろ、理性だとか狂気のメタファなどと簡単に説明できてしまうあたり、後作の混沌と比べて逝きっぷりに物足りなさを感じるが、「おかえりなさい」と言わんばかりな瘤女(狂気)との抱擁の不気味キュートに作家性が収斂される(このシーン大好き)。狂気・不快は時に甘美だとするスタンスは古典的に挑発的で、表現に一切迷いがないのは偉いとしか言いようがない。 [review] | [投票(1)] |