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ジェリーさんのコメント: 更新順

★1娼婦と鯨(2004/スペイン=アルゼンチン)よい映画とは骨格が太くて肉付きが繊細なものだが、この映画はその逆で、骨組みが弱い上に装飾部分が肥厚し、かつ神経だけは図太い。過去を現在に、現在を過去に自在にコピペできる映画の特質を弄び過ぎている。分刻みで感情の変わっていく主要人物に疲れ果てる。[投票]
★2カンサス騎兵隊(1940/米)戦闘も恋の鞘当も信条の主張もキスも、すべてが平板で軽い。ヤマ場とダレ場の違いがはっきりしすぎている。ムラの原因は俳優には無いようだ。世界観の処理不足が気になる脚本と、マイケル・カーティスのせいである。[投票(1)]
★3獅子座(1959/仏)杜子春』や『芝浜革財布』など、日本では教訓話の系譜として語られる題材を人間の実存の様相として見せた点、また都市における冷淡な人間関係性を長々とした彷徨シーンとして描いた点、斬新な作品。主役の俳優、格好悪いこの中年男の役をよく引き受けたものだ。[投票(1)]
★5浮草物語(1934/日)間然するところのない堂々とした本筋の進行をふくらませるように、ユーモラスなギャグが絡む。くどくどと描きたいところを省略する映像の経済に見ほれ、ワンカットで状況を過不足なく表現する技術を目の当たりにする快癒感が全身を貫く。楷書の傑作。[投票(2)]
★4母を恋はずや(1934/日)この映画を見ても感心せざるを得ない小津安二郎の映画の説得力の鍵は、分かりやすく作ろうとするその態度の徹底度かと思う。画面の構図へのこだわりやつなぎ方の間合いに関するこの作家らしい様式的な刻印も、思いのほかの映像の変幻自在さも結局はここに帰る。[投票(1)]
★4銭形平次捕物控 地獄の門(1952/日)十万両の埋蔵金、平家落人伝説、五本の鍵、薬師仏の仕掛け、密室の殺人、謎の曲芸師、地下迷路。実に見どころ多い時代物映画らしいストーリー。この映画を見ていて感じたのは、捕物映画は時代劇の外見を持ちながら、モダニズム都市文化の申し子なのだということだ。 [review][投票]
★3ロバータ(1935/米)アステア=ロジャーズ共演2作目にして既に、主役共演作品並みに二人が大きくクレジットされている。亡命ロシア貴族というネタは新鮮。アイリーン・ダンは本作初見。気品に満ちた美しさ。パリ・コレを映画の中に再現したアイデアも面白い。[投票]
★5心のともしび(1954/米)放蕩のブルジョア青年と、彼によって人生を大きく狂わされてしまった女性との愛。こうした通俗的意匠を持ちながら、風景と人物とストーリー進行が、触覚的なまでに生々しく目に焼きついてくる。間違いなく、この映画によってしか味わえない感動がある。[投票]
★4あるスキャンダルの覚え書き(2006/英)「所詮理解しあえぬ人間同士の束の間の調和の幻想を描いた映画」ではない。見る人の資質により解釈は百人百様の可能性と限界を示す。各キャラ造形に僅かな誇張の酵母が含まれる。この酵母を発酵させる仕掛けのうまさ。大写しになる俳優の目に宿る疑心の鋭さ。[投票]
★3ロスト・ワールド(1925/米)太古の恐竜が動く、呼吸する。そのことに驚いている自分がいる。ウィリス・H・オブライエンという人物がかつていたことに感謝せざるを得ない。映画への誠実な愛情を共有化できる人物。賛辞も批判もすべてこの共通地点から発しなければならないと改めて思う。[投票]
★3プラネット・テラー in グラインドハウス(2007/米)様々なB級映画の手段であったものが、化成して主役になっている。本末転倒が映画の現象ではなく、本質であること、歴史そのものであるということを知的にも通俗的にも立証して見せた。泥絵の具のような卑俗美のただならなさは一級品。[投票(4)]
★2雪夫人絵図(1950/日)遠景の表現や水谷浩の美術に見るべきものがあるにしても、木暮実千代が頭の弱い性奴隷以上に見えず、上原謙が小心の甲斐性無し以上に見えないようでは、他のどんな役者が良かろうが駄作。ある意味本音の人間関係が描けているといえなくはない。[投票(1)]
★5孤独な場所で(1950/米)内省性、サスペンスとユーモアの複雑な混交、登場する人物一人一人の奥行きの深さ、躊躇無く5点を献上する。94分の尺とは思えないくらいドラマが豊かにふくらむ。主役二人の住む、向き合うアパートメントハウスのセットが、この傑作に不可欠の貢献をしている。[投票]
★4ゾディアック(2007/米)ITによる情報収集や最新科学捜査などの手段を持たなかった1960年代のユルい犯罪捜査の描写はどこかユーモラス。王道を歩む映画にのみ備わる、人間への暖かいまなざしが感じられ、クライム・ムービーという安易なジャンル分類を拒否しうるだけの存在感を示す。[投票(4)]
★2ナルニア国物語 第1章:ライオンと魔女(2005/米)映像の刻み方が相当に不躾で、これでは映像ワンカットごとに込める意味が伝わってこないだろう。ではこの映画伝え方だけが問題かというと、伝える内容そのものも相当に貧弱。例えば、箪笥から異界への入り口の描写。この映画の重要な部分のはずだが、創造性がどこにある?[投票]
★3夜の女たち(1948/日)戦後間もない映画に特有の、肩に力の入った感じがこの作品にも見られる。あの戦前の豊穣な人間洞察が、借り着のような理想論展開に置き換わってしまった。ラストの「焼きいれ」のシーンだけが妙に生々しい。この未消化な「戦後」を押し付けられた田中絹代が気の毒というほか無い。[投票(2)]
★3マリと子犬の物語(2007/日)「作り物と思わせない映画が良い映画」という一般常識を最初から無視しなければならないのがこの手の動物もの。予定調和に終わるのは決まっている。その中で節々をどこまでうまく作れるかがポイントである。地震や雨や動物の演出ははそこそこ。子供の演技もうまい。[投票]
★4フラガール(2006/日)当時の日本映画すら描けなかった昭和40年代の日本の光がある! 私の記憶でも当時の安普請の木造建物の中に窓から差し込む光は本当にこの映画のようにフラットで白々としていた。湯水のように溢れどこにでも差し込むこの光がこの映画の肝。たくましい楽天主義がみなぎっている。[投票(3)]
★4くたばれ!ヤンキース(1958/米)グウェン・ヴァードンという女優をこの映画で発見する。ダンスが始まると同時に画面全体が愉快に律動し始める。ダンスシーンにおけるダンサーの周りの空間の広さが絶妙である。ダンスの動きにあわせて、風が動いている感じすら伝わってくる。[投票(1)]
★4青春の夢いまいづこ(1932/日)江川宇礼雄扮する主人公の学生時代とやんちゃなお気楽社長時代の描写には、モダニスト小津の趣味が横溢し、夏目漱石ばりにひとりの女をふたりの男が競い合う(譲り合う?)後半部では一転して渋く抑制された画面に引き締まる。このコントラストがうまい。[投票]