★4 | 我輩はカモである(1933/米) | クレージーキャッツやドリフのギャグの原点。鏡のマネや落ちてくるシャンデリア、いろいろ思い当たる。脱線に次ぐ脱線で、我々が常套的に思い描くストーリー進行は破砕される。特に今回、戦争という大真面目な行為の喜劇的側面が極大まで誇張される。この破壊力、誰も超えられない。 | [投票] |
★3 | 麒麟の翼 劇場版・新参者(2011/日) | 素朴なストーリーなので、悪い後味はないが、深みや渋みはない。警察組織や既知の人間関係前提の展開の描き方、大企業の過失というエピソードの投げ込み方が典型テレビドラマなのだ。中井貴一の存在がかろうじて、多少の奥行きを与えた。 | [投票] |
★2 | 祈りの幕が下りる時(2018/日) | ハマったのはハマったのだが、火サスのハマり感なのだ。見ていて、俳優Aと女優Bのご主人とはあのドラマでも共演していたななどと妙な連想が沸いて、楽しめた。しかし映画を見た気がしない。スクリーンの大きさだけで映画のスケール感が醸されるものではない。 | [投票] |
★2 | 嘘を愛する女(2018/日) | 典型的な二兎追い映画。サスペンスが持続せず、過去の追想と悔恨のシーンがあわただしく挿しはさまれる。観客のエモーションが心地よく揺さぶられることなく、不意に足止めされたり、いいように追い立てられたり、あわただしい。演出者はわれわれの身になっているか。 | [投票] |
★3 | 世界の中心で、愛をさけぶ(2004/日) | 初めてこの種の映画を観た10代の若い人に「どうだった」と訊いてみたい・・・繰り返されるパターンの存在を知らないうちに見るべき映画。 | [投票] |
★3 | ならず者(1943/米) | 素人臭さが伴うのだが妙に説明くさい構図に味がある。縛られた娘のところに、ビリー・ザ・キッドが戻ってくる俯瞰ショットなど、今の映画ならカットで割る筈だ。善人とも悪人ともつかぬ男たちが、撃つべき時に撃たない奇抜なストーリーなのもくせ強い。音楽ベタに使いすぎ。 | [投票(2)] |
★4 | ちょっと思い出しただけ(2021/日) | 技巧を凝らしたほろ苦いストーリー。梅雨明け直後あたりの東京の夜から明け方がうまく捉えられており、生き方の確立途上の若者に対してニュートラルに無表情な街の風情が鮮やかである。スケール感はないが洒落た都会映画だ。4回登場する歌手の使い方がいい。 | [投票(2)] |
★3 | 日本のいちばん長い日(2015/日) | 事実の裏側の緊迫した事情を描いたと言っても、玉音放送が無事に流れた事実は動かせない。ストーリーを楽しむより、人物描写を楽しむべし。昭和天皇、鈴木首相、阿南陸相がいい。目がアッチに飛んでいた畑中少佐の描写も良かった。陸相夫人には泣かされた。 | [投票] |
★4 | アメリカン・スナイパー(2014/米) | この映画にふさわしい賛辞とは何かを考え、誇張の抑制という言葉を思いついた。生々しい事実を映画にしてしまうことが暴挙と知っているゆえの慎みと謙虚さを、クリント・イーストウッドはこれまでの作品以上に大事にしている。主人公が照準スコープを凝視するときの瞳孔の奥のゆらめきを言葉にできたらと思わずにいられない。 | [投票(1)] |
★1 | 峠 最後のサムライ(2022/日) | 最後まで感動が訪れず。事実に引っ張られ、司馬文学に引っ張られ、創造の翼をもがれてしまった優等生映画。役者たちの孤軍奮闘ばかりが映画から響いてくる。脚本は何をしたか、演出は何をしたか、撮影は何をしたか、というのが正直な感想。 | [投票] |
★3 | 夜までドライブ(1940/米) | トーキー登場後、台詞劇がいつ完成の域に達したのか。この映画は既にその状態にある。せりふ回しは歯切れ良く、ナチュラルさからは遠いが輪郭を色濃く描く演技には何も言うことない。ハードボイルド感をどこか滲ませつつ、人情ものに昇華させていく融通無碍の演出だ。 | [投票] |
★3 | アルキメデスの大戦(2019/日) | この監督は、その人らしく無い役者達ばかりで映画が成立する、ということを証明した。重い演出ばかり跋扈していた太平洋戦争映画が次のステージに到達した感がある。後付け歴史語りの胡散臭さがよい。同時に当時の軍指導者の「失敗の本質」も突いており、虚実皮膜のメディアたり得ている。 | [投票] |
★4 | トップガン マーヴェリック(2022/米) | キャスティングがいい。将軍達はみな合格。とりわけアイスマンの登場は36年ぶりの続編に深さをあたえた。正直もっと泣けたのは、ジェニファー・コネリーの起用であった。お美しいです。スクリーンXで見て良かった。音響の良い施設であることも大事。そういう映画だし、それでこそ映画。 [review] | [投票(1)] |
★3 | 真人間(1938/米) | 重いテーマをしかつめらしい装いにせず、喜劇調のタッチに仕上げた点、フリッツ・ラングにとっては異色の作品。しかしながら、収監の恐怖が描かれるシーンは「追いかけられる」というラング的動機の変奏に受けとめられるし、監獄のショットがどこかドイツ表現主義の匂いがする。ラングの刻印は紛れも無い。 | [投票] |
★5 | ガートルード(1964/デンマーク) | 映画の殻をやすやすと突き破り、60年経った今なお今日性を保つ傑作。俳優の出入りや、言葉の応酬、意表をつくストーリー展開あらゆる視点で凡百の映画がたちうちできない緊密度を有する。なおかつ、画面は1930年代の古風さも併せ持つ。主人公の確信に満ちたビジョンと自律性、一貫性で、人物造形の金字塔を打ち立てた。 | [投票(2)] |
★4 | 怒りの日(1943/デンマーク) | 魔女という徴(しるし)が機能するシステムが恐ろしい。司祭の家の室内は石牢のように抑圧的だ。各人の部屋のドアは決して同時には開かれない。姑が消えると嫁が現れ、父が引っ込むと息子が登場する。一方で燃え盛るような青草に満ちた屋外のエロチックさ。こうした対比を静謐なトーンに収めて見せる腕の冴えに唸らされた。 | [投票(3)] |
★3 | そして父になる(2013/日) | 魂が揺るがされるような大きな問題に直面したときに、その人の本性が現れる。登場人物の心に射す影のリアリティが、実に見事である。主人公がようやくスタートラインに立ったところで映画は終わる。我々は本当の物語が始まる以前を見たのに過ぎないのである。 | [投票(2)] |
★3 | 関ヶ原(2017/日) | 双方の戦略とその顛末をすっきり分からせることには失敗したが、両雄のキャラは立派に立っている。空気感の撮影がうまく、山道の草いきれ、東軍陣屋の朝霧、琵琶湖を渡る風を「見せて」くれている。男だらけの中で予想外の有村架純と中越典子の存在感。 | [投票] |
★4 | インビクタス 負けざる者たち(2009/米) | 題材選定の目の高さに唸る。実話の持つ迫力が棄損されることなく凝縮して再現されている。リーダーシップが細部に宿ることを、説得力高く示した。この種の分野で最高峰だと思う。ラグビー最終戦の撮影完成度の高さが比類ない。 | [投票] |
★3 | けだもの組合(1930/米) | 顔芸、身体芸、楽器の芸、言葉芸・・・まるで寄席芸の見本市である。人間から人間性を抜いたような奇態な存在がマルクス兄弟である。でも人間にしかできない芸だ。ハーポの何でも出てくるコートがとても欲しい。 | [投票] |