★3 | 岸辺露伴 ルーヴルへ行く(2023/日) | こういう理屈ではない怪異譚というのは、やはり画面の説得力がモノを言うのではないだろうか。荒木の絵というのは言うまでもなくただのリアリズムではないので、情念の籠った絵を画面上に展開できなければ、説得力は大半が失せたも同じだ。カメラに品格があるのは褒められるが、やはりこの「邪悪な黒」を再現できない時点で恐怖は表現されていないと見るべきだ。 | [投票] |
★1 | この若さある限り(1961/日) | 醜悪の一語に尽きる。才能にも富にも恵まれ過ぎたブルジョワ少年に仮託された、エロ中年男の幼いばかりの妄想…こんな身勝手な男性の誇示者が、安直に認められる世界など何処の時代にもない。実際のところ、原作者も演出家も「女」というものを侮り過ぎているのではないのか。 | [投票] |
★4 | ウィキッド ふたりの魔女(2024/米) | 本格的に、重壮に建設され形作られたミュージカルとして楽曲の重さは機能し、役割を演じつつ現代的な感情と意志を仕込まれた魔女たちには時代性が豊かである。思想性に富む作品のリベイクに、人間ならではの信念のブレを仕込まれたアリアナもただの薄っぺらな反対者でないことが期待を持続させる熱演だ。 | [投票(2)] |
★0 | 映画『からかい上手の高木さん』(2024/日) | 原作未読ながら話の構造を判ったつもりで視聴。…大誤算だった。マンネリの果ての応用編だったのだ。「からかい」で終わるべききっかけに意味があったり、もう後がなかったり、ともかく二人はオトナなのだ。それゆえに脱線のオモシロさはないが、ファンにとっては贅を尽くした物語だろうという困った展開だった。
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★5 | こんにちは、母さん(2023/日) | ああ、これはまぎれもない老人映画だ。大泉洋が、永野芽郁がこんな古臭いセリフをしゃべるもんか。こんな人情は下町でも廃れてる!そして吉永小百合にブルジョア夫人しか演じられるもんか!幻想と非現実の極致を見ながら、本当に腹で泣きに泣きまくる。自分も還暦過ぎたからこそ、こんな絵空事に惹かれたのだ。山田洋次よ、このまま我が道を行ってくれ!! | [投票(1)] |
★4 | 俺物語!!(2015/日) | 映画は一夜の夢だ。永野芽郁の初々しさが、鈴木のマッチョボディよろしくフェイクであってもそれが何だというのだ。ゲスな芸能記者を嘲笑うかのように、彼女の俳優としての力量はつねに役柄を完璧に憑依させる。俳優とはそういうものだ。愛が俳優のポテンシャルを増大させる!文春如きに滅ぼされるワケもない。 | [投票(1)] |
★2 | 雪の花 −ともに在りて−(2025/日) | 種痘を広めようとする町医者と、男勝りの妻の娯楽時代劇といった趣きだが、どうにもテンポが悪く説教臭い展開に堕してしまっている。小泉堯史演出では、これはもう仕方のないところなのだろう。画面も平坦で起伏がなく、いかにも小泉と判る不名誉な特性が露わになった観がある。 | [投票] |
★1 | 海の沈黙(2024/日) | 何だか、映画を観ていて久しぶりに悲しい、情けない思いに包まれる経験をしたような気がする。老いるっていうことは、人によってはこんなにも醜く、独善的な喜びに包まれてしまうということなのだ。倉本聰さん、一日も早く映画界を去ってください…これ以上晩節を汚す前に。これは揶揄や皮肉でなく心の底からの思いだ。 [review] | [投票] |
★2 | 室町無頼(2025/日) | 「こういう正義の豪傑が主役。従者に武芸無双のこんな若者。対するライバルにこういう武芸者」…真相は違っても、こういうキャラ設定を活かすために舞台や時代設定を後決めしたかのようなプロットの構築。少年漫画ではよくある作劇法だが、ならばそう徹してのスピーディーな筋運びが望まれる。だのに老醜に満ちた勿体ぶった演出の退屈さ。これを冗長というのだ。 | [投票(1)] |
★3 | ベルサイユのばら(2024/日) | 確かに絵は美麗だ。しかしミュージカルという趣向は徹底的に間違いだ。抽象的なイメージの羅列、セリフを載せたがために聞き取り不能なメッセージ。どれをとっても作品を損なっているとしか見えない。 [review] | [投票] |
★2 | 新幹線大爆破(2025/日) | 影響されやすいタチなので、自分のことばで書くためにどなたの感想も見ずに書いてみようとしてます。もう言い尽くされた内容だったら、どうぞ鼻で嗤ってください。 [review] | [投票(2)] |
★2 | 警察日記 ブタ箱は満員(1961/日) | 狙いは判らんでもないが、笑いを誘うべきパートの煮え切らなさがどうにも鼻につき、事件のための事件に見えてしまう。やはり暗い展開になっても小百合一家の窮状を掘り下げるべきではなかったか。…などと言えば、この話の存在意義自体が揺らいでしまうのだろうが。 [review] | [投票] |
★4 | 名づけてサクラ(1959/日) | 大映ドラマのような大悲劇だな、と思わせるものの、私の生まれる数年前には悲劇は現実の日本の風景だったことに愕然とする。この国は負けたのだ。そして戦後10年以上を数えてなお、女性たちは惨劇を反芻させられることを強いられていたのだ。 [review] | [投票] |
★5 | 天使が俺を追い駆ける(1961/日) | ナンセンス・スラップスティックに見えてかなりのハートウォーミング・コメディ。好漢三木のり平の人徳か、ギャグの古めかしさはむしろ気持ちのいい古典の美と映る。おバカな役柄の吉永小百合すら野暮を申さず応援できるから不思議だ。幸福な時代の珠玉作。 | [投票] |
★3 | 侍タイムスリッパー(2024/日) | この監督は今更なにを狙おうとしたのか、と途中まではシラケきった。だが文芸面で評価する映画ではなく、ここまでジャンルを愛するパッションこそが評価される作品なのだ。揚げ足はとらず、殺陣と侍の顔面こそを愉しむ。 | [投票(1)] |
★2 | 首(2023/日) | 「既成事実を破壊する」とは言ったものの、だんだんモチベーションが持続できなくなったのでは。秀吉であることを放棄したたけしは、どんどん長編コントの小ネタ構成に没入してゆく。男色とか衝動殺人とかTVでできないネタを散りばめただけでは、失せた興味を取り戻すには足りなかったようだ。 | [投票] |
★2 | 九十歳。何がめでたい(2024/日) | 何が面白いというのだろう。老人エクスプロイテーション映画か、あるいは佐藤愛子のプライベートフィルムか。草笛光子の逞しさに辛うじて加点はするが…。 [review] | [投票] |
★4 | はたらく細胞(2024/日) | 「見立て芸」映画の極北。馬鹿馬鹿しさも極まれば感心させられ、少女体内の清浄な勧善懲悪活劇と純愛が、父の体内ではうらぶれたドブ板街での逃走劇と男同士の愛(『パタリロ!』の加藤諒!)と化す、原作の描写をド本気の演出力で一気に押し切る。アクションの見せ方も進歩したものだ。 [review] | [投票(1)] |
★3 | ボルテスV レガシー(2024/フィリピン) | 初見の映画ファンを唸らせるような演出は皆無なのだが、日本製の原作をフィリピン国民がマルコス政権時代にダブらせる国民作としてリスペクトする以上、承知で再現しているのだろう。むしろ古色蒼然の玩具ロボットを、ここまで凛々しく見せる本気度にシャッポを脱ぐ。思い入れの深さを馬鹿にはできない。 | [投票] |
★2 | キングオージャーVSドンブラザーズ(2024/日) | 無難であるが、二戦隊の最低限の設定を踏まえ紹介しただけであり、擦れ違いざまに視線を交えたのみでドラマすら存在しない。クセのあり過ぎる両者を絡める無謀さはわかるが、金を出させて見せる以上これでは駄目だろう。タロウの名セリフは辛うじて活かし、全滅は免れた。 | [投票] |