★4 | 善き人のためのソナタ(2006/独) | 軽薄な大作映画と癖のある作家映画の二極分化にあって、EU発でこのような主流派エンタテイメントが出てくるのは嬉しいことだ。制作規模をハリウッド映画に喩えるならば、スタジオを手堅く儲けさせる中堅娯楽作に相当するだろうが、素材としての東ドイツはやはり自国の映画人によって語られるべきで、そうした作り手の熱意も感じられる秀作である。 | [投票] |
★4 | トランザム7000(1977/米) | サリー・フィールドのルックス、カメラ目線のレイノルズ、林道を疾走する車に生きのいい会話の応酬と、『デス・プルーフ』のダディともいえる一本。カーチェイスを題材としながら主役は人物にあり、コンボイから顔を出すドライバーの顔とエアホーンの響きもなんとも人懐こい。 | [投票] |
★4 | 大菩薩峠(1966/日) | 戦国絵巻に描かれるような、敵の首を斬った武将の腹に槍が刺さるといった地獄絵図の中、最終的に生死を分けるのは、己の剣の腕よりも時の運だという。だから戦に臨む武士は虚無の心境になるというが、本作の仲代達矢はまさにそれ。このキャラクター造形がクロサワとタランティーノを繋ぐ掛け橋だと思う。 | [投票] |
★4 | ロイヤル・スキャンダル(1945/米) | 「ルビッチ・タッチ」のルーツのひとつは宮廷喜劇なのではないだろうか。権力者の立ち振る舞いはまさに風刺のきいたコメディそのままだ。気性の激しい女帝バンクヘッドは政治権力の行使者として貫禄十分の美しさ。財務相ニコライ役のコバーンも笑いの翻訳者として欠かせない。 | [投票] |
★4 | Mの物語(2003/仏=伊) | ミザンセヌ(画面上の構成)の教材として最適。ショットにおける人物と背景の位置、向き、大きさ、色彩、明るさ、質感などの構成要素を観察しつつ、絵画を見るように音楽を聴くように感じるままに任せていると、時間の経つのもあっという間だ。 | [投票] |
★4 | ど根性物語 銭の踊り(1964/日) | 奇人モードの市川崑ワールドは船越英二を偏愛する。和製ハードボイルドを装ったアンチ浪花節ノンポリ活劇、オフビートな勝新アクションはカルトにおもしろい。 [review] | [投票] |
★4 | クローサー(2004/米) | 舞台演劇の特質である時間/空間圧縮を緩めることなく鮮やかに翻案した、都市生活者のシニカルなコメディ。聞き取りやすい英語のお陰で、火花を散らす会話の応酬を耳でも楽しむことができた。 | [投票] |
★4 | 欲望(1966/英) | 写真家の視線の傲慢さを、安全な位置から眺めることのスノッブな愉悦。視線を見る視線の往復運動によってオブジェクトを発見したように、テニスボールの往復運動に目を凝らすことによって彼は事件の真相に到達するのである。 [review] | [投票] |
★4 | あなたと私の合い言葉 さようなら、今日は(1959/日) | 『晩春』『有楽町で逢いましょう』をネタに、掛け合い台詞を短いカットで見せる慌しさが可笑しい。菅原謙二や川口浩の相槌をバッサリ切って繋いだ編集には爆笑した。生活感の希薄な演出なのにマッチを擦ってコンロに火をつける若尾の仕草にはつい見とれてしまう。 | [投票] |
★4 | 色ごと師春団治(1965/日) | 藤山寛美が松竹新喜劇を解雇されたことを喜ぶべきかもしれない。春団治・寛美・マキノの国宝級遺産を21世紀の茶の間で見ることができたのだから。文章化不可能な生きた会話と、忍ぶ男の長門裕之の造形に心地よい感傷の涙が流れる。 | [投票] |
★4 | 彼奴を逃すな(1956/日) | この翌年の『脱獄囚』は疑問符だったが、本作の脚本はよくできている。夜と昼で表情を変える路地商店街といい、自営業夫婦の愛すべき小市民ぶりといい、ジャンル映画の技巧を堪能できる一品。 [review] | [投票] |
★4 | 大番頭小番頭(1955/日) | ドロドロしたところのない、機知に富んだ人情喜劇。とにかくキャラクター造形が秀逸で、終盤、誠実な対話から生まれる心の交流はまさにハートウォーミングな心地よさがある。 | [投票] |
★4 | 新婚道中記(1937/米) | 大の大人がナンセンスなシチュエーションを真面目な顔して演じていて、今で言うところのオフビートってやつの元祖なのだろうか。犬猫も含め、その鷹揚さには気品すら漂う。色黒に白い歯のグラントを加山雄三に見立ててひとり悦に入ってしまった。 | [投票] |
★4 | 砂塵(1939/米) | ラストチャンス酒場の広々した空間に詰め込まれた歌と喧嘩と悪巧み…。古き良きアメリカ青年のスチュワートと姐御肌のデートリッヒの大人の色香にも魅せられる。ウェスタンを素材として生かした楽しいコメディ作品。 | [投票] |
★3 | アイ・アム・レジェンド(2007/米) | ウィル・スミスはいい。NYの街も見せ所だ。だが作品はレジェンドの名に値しない。 [review] | [投票(16)] |
★3 | クローバーフィールド HAKAISHA(2008/米) | 素人ビデオを装っていながら、マスターショット一本の長回し移動撮影という技法は、カサヴェテスが撮ったパニック映画みたいでおもしろい。だがシナリオの弱さはいかんともしがたいところ。 [review] | [投票(12)] |
★3 | ボーン・アルティメイタム(2007/米) | ジェイソン・ボーン・トリロジーのオリジナリティは評価したい。三作目ともなれば面倒なイントロダクションは省略し、序盤からあの世界に首までどっぷり浸かるノンストップ・アクションサスペンスが展開する。司令塔と現場の緊密なコネクションをボーンの肉体が突破していく中盤まではなかなかに見せてくれる。 [review] | [投票(8)] |
★3 | ハート・ロッカー(2008/米) | この映画に描かれているのは「情報」であってドラマではない。戦場で職人技に従事する兵士の話だが、リアリズムに傾倒するあまり、ストーリーの芯が失われてしまっている。主役不在の映画は繰り返し見るには値しない。それにしても一見の価値はあるのだが。 [review] | [投票(6)] |
★3 | マイケル・ジャクソン THIS IS IT(2009/米) | リハーサルだから当然のことだが、そのパフォーマンスの低さを見るのが辛い。何より声が出ていない(出していない)。それでもセットリストを再構成せざるを得ない悲しさ。MJ本人の立場ならば公開してほしくはない完成度の低さだが、まず何よりも関係者に報いるためには致し方あるまい。 [review] | [投票(6)] |
★3 | ダークナイト(2008/米) | クリストファー・ノーランとクリスチャン・ベールが創造した21世紀のバットマンに愛着はある。『ブラックレイン』や『クロウ−飛翔伝説−』のごとく伝説的なオーラを纏った作品だということも理解できる。だがそれにしても不満はつのるばかりだ。 [review] | [投票(6)] |