コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] モーターサイクル・ダイアリーズ(2004/米=独=英=アルゼンチン)

喘息持ちだが、スポーツ好き。女好きだけど、ド級のダンス音痴。読書と日記を欠かさぬマメな男。目に宿る高い志と深い優しさ。人一倍の感受性。革命家であり、思想家であり、ロマンチストであり、何よりも放浪者であり続けた男。だから、この人は輝き続ける。
HW

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







・・・と、偉そうに切り出しておいて何なのですが、実際は、高校生の時に気取って、『ゲバラ日記』(このバイク旅行記ではなく、ボリビアにおけるゲリラ活動の記録)にちょっと手を出した(が、数十ページで見事挫折・・・)くらいで、後はあちこちのツマミ読みと世界史的知識程度でしか彼の事を知りません。しかし、やっぱり彼はカッコ良いんですね。もともと憎めない感じの「イイ奴」なんだけど、それが長旅を経て、「カッコイイ奴」になり始めて行く。感動しました。主演2人も見事。

月並みに言えば、映画で描かれる南米旅行は青年エルネスト自身の「自分探しの旅」であるのだけれど、同時に「南米探し」であり、「人間探し」であったのだと思う。多分彼は呆れるほどの筋金入りロマンチストなのだと思うが、それは決して「金持ち=悪党」「貧乏人=可哀想」という暇人道楽社会主義などではなく、より純粋で単純な人間性への希望だったのだと思う。旅先でのたくさんの出会いと別れの中で、エルネストは人々の限り無い愛おしさと、そして、そんな彼らを取り巻く理不尽な現実とを目にして行く。金や地位、国籍、人種、あるいは、「治療」という名目の下で行われる公然たる差別。人間同士の関係のあり方を、社会生活のあり方を苦しく縛り付けている様々な存在への疑念や憤り。エルネストは診療所とハンセン病患者の居住区とを隔てる川を人間の力で渡れる事を証明せずにはいられなかったのだ。

ところで、この映画のおかげで初めて知ったのですが、「チェ」ってのはアルゼンチン人の使う「ねぇ」「君(きみ)」という呼びかけ言葉だったんですね。親しみとユーモアを込めて「チェ」・ゲバラ。やはり輝いています。

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (10 人)ロープブレーク[*] kazya-f[*] 紅麗[*] JKF[*] トシ kazby[*] セント[*] makoto7774[*] リア[*] 水那岐[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。