[コメント] フラガール(2006/日)
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空前の昭和ブームに乗り、日本人お得意の人情ものとくればハズす方が難しい。しかしキャストが想像以上に健闘しており、これは近年の邦画の中では思わぬ収穫と言えよう。
なんとなく英国の炭坑街が絡む「ブラス」や「リトルダンサー」、雰囲気的に「プリティリーグ」などを彷彿させなくもないものの日本人としては本作の方がカルチャー面で思い入れはたっぷり湧くはず。
役者面では東京から来た訳ありのダンサー崩れの松雪が渾身の演技で別格の存在感。疲労感たっぷりの表情を見せても美しいのだから流石女優であると観客に強く印象を残すはず。 ダンスへの情熱や、頑固さ、クールさやモダンさを表情や演技力にて演じるのは他者(中森明菜とか)でも出来そうだが、あのほっそりとしたスタイリッシュな佇まいと、ひと際目立つ色白さが田舎娘たちとの対比も伴い鮮烈で素晴らしい。不器用だが人間臭く、親に虐待された少女の為に銭湯に人間味丸出しで殴り込むシーンは白眉。思い出しても胸が熱くなる。
一方、役得の蒼井ではあるが、方言を駆使し、親友(徳永えり)との別れのシーンなどでアイドルをかなぐり捨てグチャグチャの顔で泣いてみせたり、まさに体当たり演技を見せる。 それでもラストのダンスシーンが無ければ,彼女の印象は完璧に松雪に霞んでしまっただろう。けれども過酷で大変であったと思われる練習を乗り越え、きちっと見せ切るラストのダンスシーンでは緊迫感が張りつめ圧倒させられる。改めて俳優業の大変さを突きつけられ、それを乗り超えた演技に脱帽。
そんな二人を取り巻く役者陣もベストサポーティング。不器用で人生に模索中の田舎の青年を演じた豊川悦治や、頑なに変化を拒む旧式の考えの母を演じた富司純子の二人が上手い。 特に富司は普段のおっとりした印象を思うと、この厳しく皺も深く刻まれた厳格で古風な女性像を演じる豹変ぶりに感嘆。終盤のストーブ集めの氷解のシーンは胸を打つ。
昭和30年代の風景を醸すロケーションも含め、ほぼ観客は満足出来るのだが、欲を言えばフラガールたちを、もう少し個々の個性を浮き彫りにして描いて欲しかったのと(この辺は海外だと得意)、エピソードの継ぎはぎの様な印象をもう少し上手に絡めて欲しかった。 それでも、たっぷり泣かせられたし、邦画に対する希望が持てたので★4つ!!。
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