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[コメント] グラン・トリノ(2008/米)

ポーチと椅子と床屋。西部劇の記号。過去のどのイーストウッド映画よりもこれら道具立てが頻繁に現れる。過去のどのイーストウッド映画よりも西部劇足ろうとしたのだ。そういう意味でこれもジャンルを葬る映画だが、師ドン・シーゲルのあの作品と同じで爽やかな葬儀だ。
ゑぎ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 また、ジッポーのライターと朝鮮戦争従軍時の記念品を収納しているケースに記されている第一騎兵師団のマークもシンボルとして重要だろう。第一騎兵師団は西部劇の騎兵隊の末裔である。イーストウッドが妻を亡くしていることを合わせて考えると、どうしても『黄色いリボン』を想起してしまうが、ラストにおいてジッポーのライターが重要な小道具として使われており、この点でも西部劇への想いを感じてしまう。(ポーチと椅子と床屋、そして騎兵隊、ということで云えば、私はどうしてもジョン・フォードへのオマージュを感じます。)

 一方でこのマークは日本人にとっては(殆ど忘れ去られているけれども)、太平洋戦争敗戦後の米進駐軍のシンボルであり、映画ファンにとっては『地獄の黙示録』のキルゴア大佐率いるヘリコプター部隊をはじめ多くの戦争映画における米軍の紋章として記憶しているものだ。楊徳昌の『恐怖分子』でも第一騎兵師団のマークのついたジッポーが米兵(米国人)を象徴する小道具として利用されている。一般の米国人にとっても米軍のシンボルとして受け止める人もいるだろうし、さらに云えば暴力の、殺人のシンボルとして受け止めることもできるだろう。近作では無政府主義と云っても云い過ぎでないほどのリバタリアニズムを表出していたイーストウッドが司法に委ねる結末を選ぶということも含めて、キリストの磔刑の十字サインも含めて、本作の最期の描写が表象するものの深さは尋常ではない。

 ただし本作のクライマックスはラスト以上に二つ目の懺悔シーンの金網を挟んだ演出だろう。イーストウッドはこの映画の中で一度しか懺悔していない、とも云えるが、とりあえず二つの懺悔シーンがあるとするならば、二つ目のこの見せ方には圧倒される。見終わった後も考えれば考えるほど、この演出の聡明さに慄然となる。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (14 人)Myrath ジェリー ヒエロ[*] Orpheus[*] おーい粗茶[*] TM[*] 動物園のクマ[*] ハム[*] ぽんしゅう[*] シーチキン[*] 3819695[*] [*] shiono[*]

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