[コメント] 恋人たちの予感(1989/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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この映画、おそらく、通常あまり語られない男の視点と女の視点の違いを曝け出してみたら面白いのではないかという発想から生まれたものなのだろう。事実、ハリーのキャラはほとんど監督ロブ・ライナー、サリーはほとんど脚本家ノラ・エフロンそのものとのこと。ハリーが死について考えたがるのも、サリーがレストランでウェイトレスを苦しめるこだわりの注文をしつつそれを全く自分ではおかしいと思わないのも、それぞれ監督と脚本家がお互いをからかう意味でプロットに入れたらしい。
〜この映画にみる男女比較対照の例〜
●(男)セックス終了後さっさと帰りたくても我慢する。(女)セックス中たいして良くなくても演技をする。
●(男)自分の相手に限ってはまさかセックスで演技をしているなどとは思わない。(女)自分の相手に限ってはまさかセックス目当てで自分に近づいたなどとは思わない。
●(男)失恋後デートもするしセックスもするが、いつまでも常日頃悶々として失恋した相手のことが未練たらしく忘れられない。(女)失恋後一応吹っ切れたふりはするが、実は爆弾を抱えている。
もちろんこんな描写が全ての男と女にあてはまるわけではないが、男と女の考え方が根本的に違う(どちらが正しい、違うことが良い悪いということではなく、ただ違う)という点を非常に上手く描いていると思う。その意味で、この映画は男女間の友情の話や男女間の恋愛の話である以上に、違う生き物である「男」と「女」をそのまま描いた話、そして、お互いが会ってそこからどう関わっていくかの話であるように感じた。(何度か流れるルイ・アームストロングの曲は「違い」をそのまま描くこの映画によくマッチしている。♪You like potato, I like po-tah-to. You like tomato, I like to-mah-to. Potato, po-tah-to, tomato, to-mah-to. Let's call the whole thing off.)
映画の途中で何度か挿入される老夫婦のエピソード(どれも実在の夫婦の話)は、どれも「会った時」の話。そして、その後の過程は省かれて今の一緒に話している二人がいる。映画は、主人公の二人が「会った時」からそこで一緒に座って話すに至るまでの過程。原題の『When Harry Met Sally...』の「...」の部分は二人が会ってからの長い長い過程(12年)のことを思わせるようなところが気に入っている。
ちなみに当時離婚したばかりだったロブ・ライナーは、まさにハリーのように落ち込み無気力になり、夜中一人でベッドの中で映画を観ながらうめいていたらしい。そして、彼はこの映画製作中に再婚相手と出会った。この映画には最後までいくつかの別のエンディングが用意されていたらしいが、最後にハリーとサリーが結ばれるのはそんな彼の個人事情もあったのかもしれないなどと思ってにやけたりもする。まさに『When Rob Met His Wife...』。
蛇足:<お気に入りのセリフ> オーガズムのシーンの最後に隣のおばちゃん(実はロブ・ライナーの母親)が言う一言「I'll have what she's having」。自分の母親にあれを言わせるライナーのセンスは『スパイナルタップ』時代を彷彿させる。
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