[コメント] 機動警察パトレイバー2 the Movie(1993/日)
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レギュラーメンバーに加え、根津陣八、竹中直人と言った俳優を声の出演に加え、結果として非常に豪華なメンバーとなった声優陣。静かに流れる、抑えた演出、そして何より会話の真剣さを通し、現代というものを露わにすることに成功している。
これを観て押井守と言う監督のファンとなった人も多い、極めて良質の作品。
アメリカの連続爆破テロの映像を見て、瞬時にこの作品を思い出した私は重度の押井守マニアに違いない。
<追加> 前作とは打って変わって静かな、そしてリアルな作品に仕上がったこの作品。押井守氏はこの映画を自ら「負け犬の遠吠え」と称していた。現代という時代の持つ矛盾点を浮き彫りにし、そしてその時代はもう戻すことが出来ないと言う、まるでペシミズムに溢れたかのような作り。
確かにこの作品は虚構に過ぎない。しかし、虚構故に戦後日本の脆弱な本質を的確に捉えてもいた。
わたし達は歴史を「見る」のではなくブラウン管に封じ込めた画面で「観る」ことしかしない。何もしない全能者。それがわたし達であり、故にこの作品はますますもの悲しくなってくる。歴史の流れがどうあろうと、それに対し、どんなことを言おうと、それは「起こったこと」に対する説明でしかない。それしか出来なくなってしまったのかも知れない。だからこそ、柘植は現実として「見る」歴史を作り出そうとした。そして最後に柘植の言葉に託し、押井守は言う。「みたかったのかもしれないな」と。これが「見る」のか、「観る」なのか。それはわたし達の判断に委ねられるのだろう。
ストーリーの大筋はパトレイバー初期OVAシリーズの「二課の一番長い日」の私家版リメイクだが、さすがに劇場公開作品だけあって、時間と技術がふんだんに用いられ、更に後藤と南雲の微妙な関係を主軸に置くことで、間違いなく傑作に仕上がった。
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