コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] メメント(2000/米)

えっ?マジで?俺はアイデアだけの映画とは見えないよ。正直あまりにも大量の「アイデアだけじゃん!」系コメントの存在にガックリ…。色々なオリジナリティ溢れる解釈が見たかった。
ジャイアント白田

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







注:読まれる事を拒むかのようなホントに無駄に長い挑発レビュー

オイオイ、チョットチョット、お兄さんお姉さん、前向健忘症の人間の話だって?いい大人が前向健忘症で片づけるのかよ。何見てたのですか?「DVDチャプター17以降を見直してみ」と、まず声を大にして言いたい。そして自分の記憶力の無さをまず思い出してもらいたい。(ま、ハッキリ言ってこの映画は記憶力を試す映画ではないのだけどね。そこんところ注意。)

編集は巧いわ、感情は計算し尽くされているわ、一つ一つさかのぼる事で解決していくスッキリ感最高っす!この映画は単なるそこらの娯楽映画だけではなく、人間の記憶がいかに危うい要素を含み、それが社会でいかにして正と負に作用しているかを短い間で表現しようとしている、無限に解釈できる天才が創った素晴らしい、観客と主人公が融合したかのような疑似体験させながら進んでくれたナイスガイ映画!

……そうそう、背負っているモノを猿でも分かるように踏み込んで答えを全部出した映像なんか創ったら、多様な解釈できますか?それは甘えです。と言うか、踏み込んで映像化してあるんだけどなぁ&解明されないで捨てられてないけどなぁ…。でさぁ、2〜3回目見ても新しい発見など何もなかったと言う方は、次回見る時にメモとペンを用意してみる事をススメル。いつもメモとペンを持って映画をテレビモニターで見る俺は、脳内で再上映して様々な解釈がいつでも出せる。

「私は劇場で滅多に見ない人間だエッヘン!本当にイイ映画はテレビでもビデオでも面白いんだバーロ!こういう映画は家で見ろってんだ!映画ファンだったら映画館でみろって?そんな映画館好きの奴は配給会社の奴隷であり、料金が1800円から下がらない温床を育ててるだけじゃ!」と油に火を注ぐ言葉をサラリと言ってみる。

で、一通り言ったところで本題です↓

何故にポラロイドカメラ、メモ用紙とペンだけ?______

「オイ、レナード。ポラロイドカメラとメモ用紙とペンだけで、何故ポータブルレコーダーやデジカメ、パソコンといったものを使用しなかったのか?それを使う方が正確だし、大量の証拠を保持できるではないか!本当に犯人捕まえる気あるのか?あぁあ?」と私も思っていた。私も、何故手書きのメモとポラロイドなのかという点が気になって「なんでやねん!」と終始突っ込んで見ていたが、話が本当の(異論があるかもしれないが)真実に迫るに従って理解できた。

作中でジョンギャメル刑事=テッドがジミーを殺した時に語っている。彼レナードは手の甲に「サミーを忘れるな」と刻んでいるのだが、ジョンギャメル刑事はレナードに事実を「糖尿病は君(レナード)の妻である」と語り、サミーは自分が創った想像上の人物だとも言う。そして一年前にレナードが、妻を殺した二人の内の一人ジョンGを殺したと語り、証拠の写真(封筒に入った半裸で笑顔のレナードの写真)を見せる。

矢継ぎ早に次は、警察から渡された資料の部分部分に黒塗りされているのと、ゴッソリ12ページが取り除かれている事の真実が、実はレナードが削除したと言い渡す(レナードは言い『渡された』言葉も後で記憶から自動的に意図的に抹消してしまう)。そしてレナードという人間が一体どんな正体なのかを語り出す。

彼は、わざと謎を作って夢の世界で果てしない夢の追求をし、死んだ妻を生きる目的にして探偵ごっこという名の生き甲斐を見いだして生きていたのだ。つまり、彼はジョンGを作り出して殺しては作り出して殺しては…(echo)…(fadeout)  (fadein)…出す殺人鬼なのだ。

それは生きる為にする行為。犯人を追い始めて間もない頃、彼は絶対に企業戦士が使う機器を存分に使ったのだと思う。が、一年前に成し遂げた時、脱力感に襲われたのだろう。「俺はこれからの人生、精神病院で暮らしていかなければならないんじゃないのか?嫌だ!」当然そのような精神状態になるだろう。犯人に復讐しても妻が帰ってこない事実が相当こたえたのだろ。(いい大人だから)想像し難くない。

で、【何故にポラロイドカメラ、メモ用紙とペンだけ?】かというと…言わなくても、ここまで言えば誰だって分かるよね。ってか、分かってね。ジョンGが既に死んでいるという事実が示されたモノがあったら、生きる意味が彼には無くなるんだよ。生きる目的が無くなる事がいかに不幸か定年後に自殺している方を見てもよく分かる事。ここには「人の生きる原動力とは何か?」「自分は何故生きているか?」等の問題という人間を豊かにする宝が埋まっていると私は感じているのだが、どうだろう?アナタも宝を探してみない?

……前向健忘症の人の話に思えるだろうか?私は前向きには見えない。

ナタリーは騙した?→未来________________

(最初に一言三言。全編通して逆戻りなのに裏切っていく手法が見事。ジョンギャメルことテッドがジョンGじゃないし、ナタリーは本当は悪女だと言う事を出して見事嬉しい方向に期待を裏切ってくれた。クリストファーノーランに感謝感激!)

見て分かる通り最高のアイデアで騙した(観客含む)。では何故騙したのか?それは麻薬を扱っているが故に身の危険を感じたからであろう。刑事も見張っているし、トッドに(本当はレナードが持っている)20万ドルのカネをパクったと思われていて命を狙われている。足を洗いたいが、トッドがいる。そこで思いついたのが…と言うより思いつかせたのがレナードの登場であった。

ナタリーは服がジミーのだと分かっていた。だから店内に入った時レナードは罵倒されたのだ。が、ナタリーは記憶がすぐ無くなる男でジミーを殺した(本当は死んでない)男人間凶器の殺人鬼だと五感+第六感で感じ取ると一変して自分の保身の利用に使おうとする。何故なら「足を洗いたい」という事が悲願が成就出来るのだから。で、トッドを殺させる為、レナードに自分も彼氏を殺された、だから協力したいと言ってレナードを調教し殴らせ、映画史上希に見る完璧な罠にレナードをはめた。

ここまでであったら「(ちょっと動揺しながら)な、なんだ普通じゃん」レベルだが、レナードはジョンGじゃないと分かるとトッドを殺さなかったのだ。この作品で面白いのは、レナードを利用した悪用した人間は必ず不幸になると言う事(まぁ、ジョンギャメルしか完璧に殺されてないが)。トッドとジミーを殺さない事で、映画が終わった後その後にナタリーとレナードに対して伏線を張っているのだ。そして観客の脳にまで張っている。

『その後』『未来』が無い映画ではないのだ。十分その後は存在するのに見えてないだけ。映画館から家に帰宅する間に、映画の記憶が薄れてしまっただけの産物(『その後』が無いという考え)である。

これ以外にも「レナードの今後はどうなるのか?ブレーンであったテッドがいない今後は破滅の道だろうな」とか「あの20万ドルの行方はどうなるのかな?レナードは20万ドルをどうする?ジミーは死んでないから、奪いにがてらに復讐され殺されるのではないだろうか」とか「テッドの死体写真は焼くのか?」とか「レナードが逮捕されて事実を永久に突きつけられたら彼はどうするか?やはり自殺?逃亡?」等々の『その後』『未来』を考えるよ想像するよ普通。

もう一度くどいけど言うが、この映画に『未来』は存在し、想像を十分にさせてくれる良心的な映画であると思うんだけど、どうかな?

レナード=サミーの答えの居場所______________

サミーがレナードじゃない、と証明する場面は少ない。でも逆は多い、と思う。

述べられているように、彼は体で覚える事、習慣を身につける事、条件反射を重要視した。それは口を動かす事でもある。で、条件反射を重視しているのは【電話→サミーの話を話す→自分はそうにならないと必ず言う】を忘れない為の究極の裏技。電話が意味する事はそう言う事。

で、タトゥーの「サミーを忘れるな」だが、本当の有名な話、記憶方法として体に傷をつけて覚える方法(体罰etc.)が存在する。作品を見ても分かるように、きっと矛盾が嫌いな監督はその事実をタトゥーに表したのだろう。一種の理論武装と見るべきタトゥーという裏技。

きわめつけは自分は正しいと思いこませる都合のいい記憶の自動消去である。テッド=ジョンG=妻を殺した犯人、としたところは超裏技。

もう一つ、妻の死んだ姿を宅配売春婦を使って忘れないようにしているのもそれである。

そこには、人類が何故戦争を繰り返すのかが、歴史は繰り返すのかが表現されていると、私は感じた。都合の良いように神を持ち出し土地を占領しかり、原爆の大量虐殺棚に上げるしかり、しかり…(echo)…(fadeout)  (fadein)…しかり、名前を改ざん裏口入学しかり、あとを絶たない歴代の改ざんの数々が合わさる。人類史が凝縮されていると言っても過言ではない。人類史とは人間の本質にあるのだろう。

レナードって一体?_____________________

見るたびに多少解釈が変わっていくだろう。が、現時点での私の見解はレナードは「人そのもの」だと言う事に尽きる。人は記憶を薄れさせて生きていく動物。完璧に覚えていては脳の容量が不足してしまう。それ故に不正確に、そして無意識に都合の良いように改ざんしていく。この物語は人の本質に違ったアプローチで迫った志しが高い映画だと私は思っている。彼は私でありアナタである。

2002/9/25

(注:細かい部分の説明を微妙に割愛しています。そして挑発してごめんなさい。今後追記おおいにありあり。)

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (18 人)mikaz 浅草12階の幽霊[*] vito makoto7774[*] 空イグアナ[*] ことは[*] TAKAどぅ〜[*] お珠虫[*] セネダ 世界の終わりの果に ゼロゼロUFO[*] トシ[*] starchild[*] ロボトミー[*] KADAGIO[*] アルシュ[*] イライザー7 m[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。