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[コメント] アザーズ(2001/米=仏=スペイン)

いやもう、二コール・キッドマンの美しいのなんのって。あんな素敵で美しい女主人に仕えることができたら、私はどうなってもかまわない。けど、すっごく怖かったあ。
シーチキン

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







私は基本的に、この手のホラー映画が苦手である。どうも子どもの頃見たTVドラマ(確か谷隼人とか出ていた「アイフル大作戦」のシリーズだった)で、夏に洋館で交霊会とかポルターガイストか何かをあつかったのがあって、それが無茶苦茶怖くて1週間くらいは、寝るときに夏だというのに布団を頭からすっぽりかぶっていた記憶が、よみがえるから。

だからこの映画もキッドマン主演とはいえ、最初は観る気はなかったのだが、みなさんのコメントで彼女の美しさを称えるのが多かったので、ついフラフラと、「サービスデー」を選んで行ってきた。そしてコメントにあるように、キッドマンの美しさを存分に堪能できたので満足しているのだが、それにしても、実に怖い映画だった。震え上がってしまった。

布団の中でおびえる少年に伸びる手の影。鏡の中で、閉めたはずだったドアが開いてその向うに広がる暗闇。いきなり背中を突つく指。(私も一度でいいからキッドマンの背中を突ついてみたい)たった今、鍵をかけたのに開いているピアノの鍵盤。レースの向うのしわくちゃの子どもの手。

極めつけは、最後、狭いところに隠れている子どもたちを探し当て、戸を開ける瞬間。この時、私はキッドマンが画面にいないのを確認して、思わず目をそらしてしまった。まったく、なにが悲しくて、わざわざ金を払って観ている映画で、自分から目をそらさにゃならんのかと思っても、怖いんだから仕方がない。一滴の血も見せず、ここまで怖がらせられる演出は見事でもある。(流血関係はそんなに怖くない。見せ方にもよるが、ただ気分が悪いだけである)

ところで、『スターウォーズ ジェダイの逆襲』でハリソン君が披露していたが、普通人間は、後ろから右の肩を叩かれたら反射的に右後方を振り返る。これで左を振り返る人は心理学的な考察の対象になる。だから、右肩を叩いて左後ろから驚かされると、虚を衝かれて、反射的に防衛動作をとる、つまり恐怖や不安を感じるのである。

こういうことは何も肩叩きだけではない。心理学と行動科学の研究は、どういう時に恐怖を感じるか、最大多数(何事にも例外はある)の人間について明らかにしている。極端に言えば、怖いから震えるのでなく、震えるから怖い、という立場で人を怖がらせる技術はある。私は、映画の世界においてこの技術を本格的に導入し、かつ頂点にあるのはヒッチコックだと思っている。そしてこの映画はまちがいなくこの流れをくんでいる。(別に目をそらした事が悔しくて言ってるんじゃないのよ)

しかしこういうことがいくら頭で分かっていても、やっぱり怖いものは怖い。だから私はこの映画は、キッドマンの美しさを差し引いても、これだけ観客を怖がらせることが出来たのだから十分成功していると思う。その上で、映画では実はキッドマンたちが「死者」で、怖がらせていた方が「生者」、というドンデン返しのトリックを用意して、そこから一気にラストにもっていく。ちょっと鮮やかでもある。

しかし、このラストは観ているときは鮮やかでも、見終わってしばらくたつと、「あれっ」と思わざるをえない、「禁断のテクニック」でもある。例えば、生きているキッドマンが、明らかになった幽霊の正体と何らかの折り合いをつけるラストだってありうるのだ。それでは陳腐かもしれないが。(でも、幽霊たちにも君臨するキッドマンなんて、見たいじゃないか)

なぜ「あれっ」と思わざるをえないか。冷静になると素朴な疑問が次々湧いてきて、作品世界に破綻をきたしかねないからだ。4年も5年も住んでて召し使いたちの墓がそばにあるのに気づかんかあ、という疑問もあるが、それは実は些細な事だ。(枯れ葉のない季節はどうしてたんだ)

根本的な疑問は、一体、キッドマンたちはいつ死んだのか、という事から始まる。劇中、この時期は明示されていない。映画は召し使いたちが来るところから始まってその2、3日の間の話である。おそらく前の召し使いたちがいっせいにいなくなった、という時がキッドマンたちが死んだ時だろう。新聞広告の話から推察すると、それはほとんど劇中世界の直前かも知れない。せいぜい一週間くらいしかたってないだろう。

しかし、だとすると、気の狂った母親が二人のわが子を殺して自殺してから、一週間以内に、そんな惨劇のあった館を買って住もうという人がいるだろうか。一週間もたってないのだから知らなかった、なんて考えにくい。いかにも迷信深そうな背景もあるのに、である。

あるいは知ってて買おう、という事かもしれないが、そんな剛毅な人たちなら、何時の間にかドアが閉まるとか、ピアノの鍵盤がすぐ閉まるとかなんてことは、「そんなことだってあるだろう」、くらいなもので気にもしないだろうし、したがって交霊会なんてのもやらんのじゃないだろうか。

では、キッドマンたちは、もっと前に死んだのか。まあ昔の事だから、何十年も前でなくても1年くらいたてば惨劇の事も風化しているかもしれない。しかしそうなると、今度はキッドマンたちは、自覚のない「死者」として1年くらい、「生きていた」事になる。人が生きるというのは、案外大変だ。

なにより、食糧の補給をはじめ経済生活を成り立たせないといけない。それとも、キッドマンの家には、空のミルク壷を一晩で満杯にしてくれる妖精でも住んでいるのか。(それも怖い話だ)それとも、これも自覚のない「死者」である商人がどこから仕入れてくるのか知らんが、食料とか売りに来てくれるのか。そうだとしてもそれらの支払いに見合う収入はどうしてたんだ。

こういう疑問が湧き起こり、なんとなく後味がすっきりしなくなる、「禁断のテクニック」を使う必要が果たしてあっただろうか?前にも書いたように、私はこの「禁断のテクニック」がなくても十分怖かったし、それだけで、映画として成功していると思うのだ。

それがあるから、ちょっと5点は付けられないかなと迷っていた。しかし、こうしてレビューに書く事で、もやもやをすっきりさせる事が出来た。そうなると私は、美しいニコール・キッドマンに忠誠をつくすために、5点を付ける。

オマケ★★★物語の最後の最後、屋敷を引き払うヴィクター少年は、何度も何度も、車に乗ってからも、屋敷を振り返る。まず間違いなく、彼は、アンに惚れてしまったのだ。勝ち気な少女にふりまわされちゃっているけど、実はその少女が好きなんだ、っていうのは古今東西、恋物語の王道である。(覚えがあろうっ!)

(評価:★5)

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