[コメント] 息子の部屋(2001/仏=伊)
カンヌよ、こんなヘンな映画にグランプリなんてくれるな。そして、こっそりお気に入りにしたかった。ホント、こんなヘンな映画とは思わなかったよ。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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予告にしても、ささやかな評判や、紹介にしても、これはまっとうな息子の死に対する、家族の向かい方。とか癒し系の感動映画なの?とか思うよね。思いましたさ。あたくしは。が、全然違うじゃん。
そもそも、父親は、もろもろな患者を抱えた分析医で、その描写がしつこい。そして、過剰に美しく仲のよい妻や子供たち。そして、観客が息子のことを知る前に、息子は死ぬ。そこから、この映画はある意味、観客をおいて行くくらいに、残された家族の悲しみ、立ち直れないさまを描く。そして、それは、必ずしも映画の息子の死ではない、見るもの誰もが抱えているはずの「喪失感」を間接的に描く。それはとりかえしのつかない、それでいて人を後戻りをさせる、ひどい喪失感だ。
しかし、その風景を丁寧に描きながら映画はお約束の感動に導きはしない。患者たちとの終局はきちんと描きつつ。それは前半部分のしつこさも映画全体にきちんと効果を示している。しかし、なにはともあれ、リアルな世界とはそういうものではないだろう。という作者の思惑なのかもしれないし、安易な「喪失感」の開放とならない、「家族が会いたかった息子の彼女に彼がいた」という、この物語の終わり方は秀逸だ。いや。いいものを見せてもらいました。でも、ほんとに、映画のグランプリがふさわしくない映画なのに。と、勝手に惜しがるのでした。
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