[コメント] ターミネーター3(2003/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
前作、前々作のラストのネタバレを含みますのでご注意ください。
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<<ジョン・コナーのターミネーション>>
"It is time."
ハリウッド映画を観ていると、この台詞は、"It is time to go." "It is time to say good-bye.""It is time to kill you." "It is time to die." などのように「別れ」「終わり」に用いるケースが多く、また、"It is time to fight." "It is time to go." "It is time to wake up." などのように何か特別なものの「始まり」を示すことにも多く用いられるようです。
多くの場合、本作のようにto以下を略すか、"It is"を略すようです。気をつけなくてはならないのは、to以下を略した場合は、使われる状況によって、意味は180度変わることもあり、時には2重の意味を持たせることもあると言う点です。
以上、何が言いたいかというと、
"It is time."
予告編やらCMやらで、否応がなしに何度も耳にしてしまった意味深なこの台詞。鑑賞する前から、この台詞は「始まり」と「終わり」の両方の意味も含んでいるのではないのか?と勘ぐってしまい、その結果、ジョン・コナーの母サラ・コナーの死(「終わり」)とジョンの闘いの「始まり」を意味しているのでは?と、予想するに至っていた。
しかし、見事に予想は覆された。確かに一つはほぼ当たっていたが、死ぬのはサラ・コナーでなく、「ジョン・コナー」であった(これは、T−850当人の口から明かされる)。何年か後、T-850はジョン・コナーを前に再び"It is time."と言うことになるのだろう。そのシーンは想い浮かべるだけでも悲しくなる。
こう考えると、サラ・コナーが入っているはずの棺にジョン・コナーを入れてT-850が担ぐシーンはかなり意味深い。今は生かすために棺にいれ、後には、棺に入れるために殺す、と・・・。
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<<種のターミネーション>>
骸骨然としたターミネーターがハンティングしている未来映像にも表現されていたように、「ターミネーター」シリーズは、狩猟による種の絶滅を描いているようでもある。この点で言える事は、(人間の狩猟対象の)動物があまり登場していないこともこのシリーズのポイントの一つだろう。本作では、この流れを暗示させるシーン(動物病院)があった。そこでは、ジョン・コナー(後の人類の代表)が檻に閉じ込められた。これが何を意味するのか? 言うまでも無い。
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<<スカイネットのターミネーション>>
ターミネーターの弱点について、『ターミネーター』のT-800は、プレスに挟まれて潰れてしまうという機械的耐性の弱点、『ターミネーター2』のT-1000は、T-800の弱点を克服しつつも、極低温、超高温で誤動作し、ターミネーションしてしまうという環境温度耐性の弱点があった。このようなエンジニア的思考の流れから考えて、本作の新型ターミネータの弱点は、耐水性か?耐振性か?耐放射能性か?そんなところで予想していた(「T2」のコメント参照)。
T-Xが大型の装置に貼りつき、表面を構成する液体状の金属が剥離していったシーンにもあるように、今回の弱点は耐電磁場性であった(私の予想はまたしてもはずれ)。簡単にあのシーンを説明すると、あれはベータトロンと呼ばれる超伝導技術を用いた円形状の加速試験機の一種で、駆動時に強力な電磁場を発生する(簡単にいうと大きな磁石)。T−Xの素材が金属のためにへばりついたと言うことだろう。
この技術には装置内部を極低温に冷却する必要があり、それには液体窒素が使われる。T−Xが脱出する為、加速試験機に穴を開けたときに噴出したのが液体窒素と思われ、それには異常な反応を示さなかったことから、T-1000における弱点(液体窒素中でパリパリ割れてしまい、その後動作不良)を克服していたことが分る。「一つの欠点を克服すると、また新たな欠点が・・・」に、シリーズ通じての製作スタッフのエンジニア的思考を垣間見る。
結局、強力な爆弾ともなりうるT-850のバッテリー(水素電池)で、T-Xはターミネーションされる。爆弾で解決、のありがちなパターンには少し拍子抜けしたが、T-850のバッテリーであることに注目すると、自己ターミネーション機能をターミネーターに持たせていることにもなる。
これはマシーンの設計の最上位がスカイネットであることを考えると、個人的には、人類を絶滅させないため(命令を永遠に続かせるため)意図的に人類に有利になるよう設計された機能として理解できるが、もしかしたら、人類絶滅後(命令の終了)のスカイネットシステムの自殺(ターミネーション)を意味しているのかもしれない。
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