[コメント] ギャング・オブ・ニューヨーク(2002/米=独=伊=英=オランダ)
描ききったのはその時代の場所そのものであり、決して「そこに生きた人々」とは言いきれないあたりがこの作品の弱さなのだから、せめてそのタイトルを、明白な「主人公」を想定せずに済む「ギャングス」のままにしておいてほしかったかなぁと。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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これはディカプリオ演じるアムステルダムの復讐劇、ましてやディアス演じるジェニーとのどうでもいいような恋愛劇ではなく、この時代のニューヨークという(狭い)空間の、現代へ脈々と続くその胎動を描いた映画だと思う。
冒頭の壮絶な肉弾戦。戦いの後、その場に残された広範な赤い血溜まり。手ひどく負傷した者が耐えきれずに身体を沈める、あるいは最後の力をふりしぼってザブザブ歩き去ってゆくその赤く生々しい液体。が、カメラが退いてゆくにともないだんだん小さな赤いしみになり、最後には判別さえ不可能になってゆく。
彼らが命を賭して利権を争ったファイブ・ポインツの地など、しょせんニューヨークの一部でしかなく。そしてそのニューヨークという土地ですら、広大なアメリカの大地、ましてや世界からすればほんの小さな空間に過ぎず。
そしてその時代さえ、大事件さえ、長い歴史から見ればほんの風塵のようなもので。
だからこそ、そのミニマルな場所と時代を濃く美しく撮りあげてくれた、ということだけでも私はこの映画を評価したい。話なんてもうどうだってよくなってくるというか、断片的に登場する「話には聞いたことがあるけど。」な情景や人々を見られただけでも異様に興奮してしまうというか。
おまけにダニエル・デイ・ルイスを再びスクリーンに呼びもどしてくれただなんて、全くもってありがたいことですとも。
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