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[コメント] 浮雲(1955/日)

男「今日泊まってもいいかい?」 女「泊まるつもりで来たんじゃないの?」 男「ああ。」 女→
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「嘘おっしゃい!急に泊まりたくなったんでしょ!」

表情も合わせて、セリフもセリフまわしも見事である。

生娘から高慢ちきな女、貧乏と孤独の絶望の淵に佇む女からパンパンに、嫉妬に狂う女から諦観にどっぷり浸かった女、怒る女から泣く女…。彼女を取り巻く事件と自身が引き起こす事件に沿って、どんどん変貌を遂げていきつつ、その根底にある男への切っても切れない情を見せるという難役をこなした高峰秀子は、悪女という根底を崩さぬまま、きっちりとカメレオン演技をこなしてみせたベティ・デイヴィスを彷彿させる、まさに「雄々しく敗れる女」。その引出しの多さに、ただ舌を巻くのみ。

それから、あの目で語らせる演出。観客にそれとなしに次に何が起こるのか表情でわからせておいて、続くダイアログでは、予想を陵駕する面白みが待っているのだ。

物語自体はどうってことないと思うのだが、機知に富んだ会話劇、それをあの説得力のある演技力と演出力でやられちゃうと文句のつけようがない。

もうひとつお気に入りのセリフ。「独りでいるといろんな言葉を覚えちゃうのよ。」見事である。

〔★4.5〕[10.17.01]

追記:

ペペロンチーノ様>「歩く」行為が象徴的且つ効果的に使われているのが印象的だった>

そうそう!冒頭の「肩がくっつきそうなくらい、でもちゃんと距離を保つ歩き」から、女が先行ったり男が先行ったり、ゆっくりだったり速かったり……。余計な説明なくとも、それだけで二人の現時点の関係性が伝わってきますよね。

(評価:★4)

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