★4 | ターミネーター3(2003/米) | 人造人間であることの哀感を漂わせつつ脱力ギャグも侘しいシュワちゃんに泣けた。前半のバトルの重量感と空間処理は久々の見ものだが、スカイネットの起源にまつわるポリティカルな部分が多分におざなり。ラストの詠嘆には完結の印象を受けた。 | [投票(6)] |
★2 | バッドボーイズ(1995/米) | 実際に刑事もののバディムービーが今までどれくらい作られたのか知らないが、何故に今更こういう何の変哲もないものを作ったのか意味不明。中でも夫婦交換のシチュエーションギャグは緩さの極みだし、黒人同士という設定にも何ひとつ新味ある効果がない。 | [投票(6)] |
★3 | マイノリティ・リポート(2002/米) | プリコグによる予知が、ああいう具体的映像になる発想をした時点で負けてる。それをパズルみたいに絵解きする様は子供っぽすぎて萎える。喪失感を薬で埋める虚無感がもっとハードに突き抜けて欲しいし、2段構えの構成の後者が余分に見えちまうのも痛い。 | [投票(6)] |
★4 | インソムニア(2002/米) | 冒頭の氷雪世界からして映画の魅力とはストーリーもさることながらムードの醸成であると再認識。諸刃の剣のアップ多用をパチーノの味でモノにし、稚拙なフラッシュバックへの不満も遠のいた。ウィリアムスの抑制もこれ又強烈な味わい。 | [投票(6)] |
★4 | ポセイドン・アドベンチャー(1972/米) | 「モーニング・アフター」の調べと豪華客船での新年のカウントダウンという設定があるからこそ急転直下に始まる地獄行が帯びる一種の哀切味や、キャラクターが外見と正逆な内面を露呈し始める巧さは、先を急ぐだけの現在の映画には最早望めないもの。 | [投票(6)] |
★3 | ダンサー・イン・ザ・ダーク(2000/英=独=米=オランダ=デンマーク) | 障害があって貧乏で産んだ子も障害があり不条理に死刑された人は多分いくらでも居るだろうし、そういう人が友でも救う術無く見守ることしか出来なかった人も多く居るだろう。映画は冷徹に描写する以外に何が出来るだろうか?デジカメの流れる映像が残念。 | [投票(6)] |
★5 | アイズ ワイド シャット(1999/米) | 最先端の過激度は無い替わりに極上の器が用意され、鬼面人を驚かすハッタリの替わりに揺れ動く心の襞の細部をも精緻を凝らして描くキューブリックの新局面と思われたのに…。クルーズとキッドマンのかけ合いには後期ベルイマンの匂いがある。 | [投票(6)] |
★3 | KT(2002/日=韓国) | 三島に心酔し石原を引用する極右将校が必ずしもファナティックである必要は無いとは思うが、やはり、この創造人物を歴史に割り込ませる必然性が希薄。そして何より主権を蹂躙されても弱腰外交な日本の官・軍・民をこそもっと撃って欲しかった。 | [投票(6)] |
★2 | アリ(2001/米) | 「マルコムX」と「徴兵拒否」と「フォアマン戦」をトピックスとして並べただけで批評精神どころかリスペクトの念さえ感じられない。アリの対マスコミパフォーマンスと真摯な実生活とのギャップを埋める創造もなされていない。ボイトのつけ鼻だけが見所。 | [投票(6)] |
★3 | オルフェ(1950/仏) | 愛の物語の筈なのに、それは結局方便に過ぎないので、そっち方面のエモーションは無い。コクトーの興味は生き彫刻みたいなジャン・マレーとカメラ遊びにしかなかったのだろう。そして、そうであったからこそ面白い。 | [投票(6)] |
★4 | ひまわり(1970/伊) | 序盤の笑劇的導入が温いなりに効き悲劇への転調を際立たせる。絶望の中から見出した微かな希望を胸に1人行く異国。沈む気持ちに突き刺さる広大な向日葵畑と煽情的音楽は大向うを唸らせるこれでもか感だ。再会シーンの間の演出こそデ・シーカ最後の輝き。 | [投票(6)] |
★3 | ゆきゆきて、神軍(1987/日) | この映画は奥崎の滅茶苦茶さを傍観しているだけであり、一緒になって騒ぎ立てるか、とことん否定して映画そのものを崩壊せしめるかどっちかに依るべきだった。とんでもないおっさんに良く付き合って御苦労さんだけではつまらんだろう。 | [投票(6)] |
★5 | ジャズ大名(1986/日) | 映画とはカットが絶妙なリズムで紡ぎ上げられ産まれる快楽の止め処ない連鎖であることを思い知らされる。支離滅裂が殆どシュールの域に到達する終盤の一大狂熱!限定セットを逆手に取って迷宮を現出させる錬金術師喜八。終わったかに思えた晩年の狂歌。 | [投票(6)] |
★5 | 異人たちとの夏(1988/日) | 主人公宅を名取が訪れる場面や寄席の外での片岡との邂逅シーン等、尋常じゃない世界との接触を日常に埋没させる山田の巧妙な台詞回し。浅草シークェンスは全て突出するが、マンションのパートも都会の孤独を表出させ冷めた金属のように心を穿つ。 | [投票(6)] |
★4 | ベイビー・ブローカー(2022/韓国) | 大甘設定にも思えるが棄児がどうしたら幸せになれるかの道筋を隘路を縫い希求した是枝なりの回答。未踏の次元に到達したかはともかく他流試合の醸す緊張が張りを画面に与えて今更感を払拭。喧嘩の翌朝、海風が屈託を洗い流す。鮮やかなショットの連結。 | [投票(5)] |
★5 | 佐々木、イン、マイマイン(2020/日) | 上手くいかぬ人生に立ち向かう気力も失せかけたとき、彼奴が送った短い日々に思いを馳せ自戒する。ありがち展開だが日常のリアルと立ち現れるパッションが空気を鷲掴むようなカメラも相俟り珠玉のように凝縮される。だからあり得ぬ女性の実存も信じれるのだ。 | [投票(5)] |
★3 | スパイの妻(2020/日) | 逆賊の妻に堕ちる決意に世界視野の判断なぞ微塵も関与しない女の性に黒沢は元より関心がないのに女優蒼井優の表現力が辛うじて崩壊を繋ぎ止めてしまう。それでも一大クライマックスになる筈のスクリーン前での大見得は展開の表層性ゆえに虚しく空転。 | [投票(5)] |
★5 | のぼる小寺さん(2020/日) | モラトリアムに過ぎゆく10代の黄昏。彼奴も此奴も同じと思ってたがそうじゃない彼女への興味は何時しか連帯渇望になる。押しつけがましくない青春への提言であり茫漠とした過渡期への慈しみ。茶番になりかねぬアイコン性は工藤遥の身体性で担保される。 | [投票(5)] |
★4 | 一度も撃ってません(2019/日) | マジとシャレの均衡線上を行き来する丸山脚本を滋味が馴れ合いを辛うじて封殺した老人同窓会が演じるメタ構造がスリリング。俺たちは決して安穏に終わらぬという決意の表明が彼方にいる原田への連帯に繋がる。犇めき合うバーの人捌きなど撮影もいい。 | [投票(5)] |
★4 | リチャード・ジュエル(2019/米) | 反撃だ!と気合入れたって怒涛の展開なぞ起こらない。現実とはそんなもんさという枯れた達観が映画からアクを拭い去る。悪意や偏見という撃つべき対象への剥き出しの憎悪も影を潜める。その最早境地としか言いようがない掌の上で役者たちは十全に自走してる。 | [投票(5)] |