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[コメント] 静かなる決闘(1949/日)

ダンディな三船敏郎、清楚で可憐な三條美紀、いや、これら美男、美女にまして光輝く千石規子
いくけん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







●何にかにつけ、三船敏郎の周りをまとわりつく千石規子。わざとそっけなく近かづき、ちらっと横目で三船の方をみて、やっぱり気がないことを悟ると、軽くプイっとそっぽを向き、ちょっとプラプラして、おもむろに引き返す。(でも、後ろ姿が少し幸せそう。)女性の一途さ、可愛らしさを、完璧に表現できていた。凄く巧い女優さん!彼女のような名脇役が存在したことだけで、日本映画の黄金期の異様なほどの充実度が解かる。そして、よくよくみれば、綺麗なお顔立。わたくし、千石規子のファンになりました!

●実は、千石規子さんを初めて見たのは、『あんちゃん』とか『事件記者チャボ』等のTVドラマでのおばあちゃん役。水谷豊の洒脱で軽妙な演技に、隠し切れない貫禄と存在感、そして人の良さで、絶妙に応えていた。笑顔が可愛く、しかし、自信に溢れた何とも優雅な物腰。モノが違うてな感じ。あとで、彼女が黒澤映画の常連とわかり吃驚、そして納得した。『わが青春に悔いなし』との満足感が顔に出ている。こっちまですがすがしくなってくる。逆に、『静かなる決闘』や『野良犬』で彼女の『熱中時代』が拝める。嬉しい。古い映画の楽しみ方の醍醐味!

●名場面!映画の教科書にしたい程の!

ラストの方で、素晴らしいシーンがあった。夕焼け/涼やかな風/風に豊かになびく幾本もの干された白い包帯/背後に『リンゴの唄

白い幾本もの包帯が、三船敏郎の将来の病気の完治を、見事に暗示させる。

そして、何とも云えないあのシーンの幸福感が、千石規子の淡い純粋な恋が成就することを、もの語っている。風に吹かれた白い包帯が千石規子にまとわりつくシーンが、新婚生活(?)みたいでちょっといやらしく(?)、それでいてかわいい。お幸せに!

●台詞に垣間みられる深い人間洞察

「あの人は自分で幸福を切り開いていく人です。」「脂汗(あぶらあせ)を流しながらね。」

「医者の中にはときとして、ああいう聖者がいる。」「聖者とは聖(ひじり)ですか。」「さあ、それはどうかな。あいつはね、ただ、自分より不幸な人間の側(そば)で希望を取り戻そうとしているだけですよ。」「幸せだったら、案外、俗物になっていたかも知れません。」

流石!黒澤の真骨頂!深い。

(評価:★4)

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