この映画の新しいところであり好きなところ、それはオタクが恋の主役になるところ。

クリフは転校生で８０年代パンクオタク、ヒゲの剃りあとも青々としていて、どこからどう見てもモテない君。今までこの手の映画でこの手のキャラが、努力して自分を変えてその結果モテるということはあっても、そのままの自分を認めてもらえることなんてほとんど無かったんじゃないだろうか。女の子の誕生日に自作のラブソングを送るという、最高に「あいたたた・・・」なことをやらかしてしまうわけだが、それを聴くトーランスの表情と、踊り出して元気を取り戻すという展開は本当に素晴らしい。

筋書きや登場人物や背景などがコテコテの８０年代学園モノしてるのはわざとだと思う。あえてそういう作り方をすることによって、クリフの異質さが際立っている。もしかしたら、監督はクリフの様なやつだったのかもしれない。自分の夢を具現化すると同時に、学園モノのセルフパロディという形態で不遇だった青春時代を笑い飛ばしているのかも。それは考え過ぎかもしれないが、明らかに全世界のクリフ君達の夢を代弁したことは間違いない。だって、意中の女の子が自分の家に泊まりに来るというシチュエーションなんて最大の妄想だぞ。