コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ALWAYS 続・三丁目の夕日(2007/日)

前作に及ばないと分かってはいたけど、それでもやっぱり満点をつけようと思う。昭和最後の年に生まれた人間がなぜこの映画に感動したのか、ようやくわかった気がする。
JKF

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「今という時代だからなのか?」と問われるとわからないけど、どうしても他人に対して時に猜疑的にならないといけない瞬間がある。どうしても他人のことを信じられない、全面的に信じてはいけない場面に遭遇する。それでもやっぱり、俺は人と一緒に過ごしていること、共同体に従属することに安心感を得るし、そうして関わりを持つ人々のことはある程度信じてしまうものだ。

夕日町三丁目の住民にとっての帰るところ・身を置くところであって、安心して他人を信用できるところ。それこそが夕日町三丁目だった。

茶川が本気でペンを握ったとき、みんなが彼を支えた。だから観客は詐欺だと分かっているのに、疑いすら持たずにみんなが茶川のために持ち合わせのお金を出し合った瞬間・鈴木オートの社長が「読んでもないお前に、こいつの才能がわかるか!」と怒鳴った瞬間・茶川の小説「踊り子」を通して彼の夢を知った瞬間・・・・そんな風に他人を愛し、信用し、夢が持てる場所があることに涙が流れた。

「昭和はよかった」と言える年齢じゃないし、決して映画に映る街の景色を見て「懐かしい」と思える年齢でもない。むしろ今の時代に生まれてよかったと思うことだってあるわけで、ちょっと前にあったような昭和懐古主義的な風潮はどうかと思っていた。これから俺たちの世代が生きていく時代は全然ダメで見通しが暗いので、大人たちが集団で無責任にも過去へ逃避しているようにすら見えた。

じゃあこの映画の何に感動したのかっていうと、結局のところ上記に描かれたような、人間の善の部分に素直に心を動かされたからなのかなって思う。

昭和30年代の東京はもっともっと汚い場所で、もっともっと不便な時代だったんじゃないかって思う。これは敢えて闇に目を向けず、この時代の良さ、人間の善の部分だけを描いた一種のファンタジーというか、夢物語なのだろう。それでもやっぱり、この夢物語に描かれたような人間の温かさ、人間の善を信じてみたいと思わせてくれる映画だった。作った側も、人間のそういう部分をまだ信じてるんだろう。

だから俺はこのシリーズ二作を観て泣いてしまったんだと思う。

この時代が舞台であるのは、まだ夢があって、大きな希望を持つことのできる時代だったからだろう。映画に出てこないような黒い部分があっても、辛いことがあっても、前途は明るいままだった。今という時代に目を向けると、やっぱりネガティブというか悲観的な未来を思い描いてしまいがちだからね。

どうしても予定調和のストーリーに収まらなければならない映画なので、二度目となるとインパクトは薄いものの、プレッシャーの中でよくここまで頑張ったと思う。

ただし、前作のアクマ先生のエピソードに見え隠れした戦争の影を、鈴木オートの夫婦二人にまでちらつかせる必要があったのかは少々疑問。「戦後ではない」と言われる時代でも戦争の影響がまだ存在していたことはわかるが、それを伝えることがこの映画が背負うべき命題ではないだろって思う。浮いてる感が否めない。やるならもうちょっと思いっきりやれ!っていうのも本作のカラーとはちょっと違うしね。それから給食費未納のエピソード。どちらも下手に時代性を持たせようとしたことが失敗だった。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (12 人)ナム太郎[*] ina chokobo[*] 甘崎庵[*] chilidog[*] 映画っていいね[*] けにろん[*] トシ りかちゅ[*] sawa:38[*] セント[*] 水那岐[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。