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DSCHさんのコメント: 更新順

★3砂の惑星(1984/米)劇中の「スパイス」の熱に浮かされたようなリンチの鋭敏で変態的な五感を、強制的に共有させられる。この拷問的事態が面白いかと問われれば、やはり面白いと答える(五感が優れた映画はいい)。主題たる「スペースオペラ」は二の次感が甚だしく、あらゆるセクションでの怨嗟の声が聞こえるようだが、迷作の愛嬌が半端なく、忘れられない一本になっている。 [review][投票]
★4リパルジョン・反撥(1965/英)性にとどまらない生への嫌悪と吐き気の映画だが、嫌悪は果たされない願望の裏返しとしてある。ドヌーヴの目は、閉じるわけではなく、何かを探すようにぎこちなく宙をさまよう。このオープニングからして、ポランスキーの観察と実践は嫌らしいほど精緻で説得力がある。ポランスキーの作家性の本質は五感のレイプ、「侵(犯)すこと」なのだと思う。この技巧のいけにえが、切実な「青春映画」を浮かび上がらせる。 [review][投票(7)]
★5今宵、フィッツジェラルド劇場で(2006/米)生とか死とか、何か「神」らしきものにしっかり首根っこを掴まれながらも、達観とか明鏡止水みたいな言葉ではしっくり来ず、もとより諦観や虚無では決してない、影を知るヒトでなければ決して感受できない幸福の境地。それをジジ臭い説教でなくバッドジョークと優しさでカマしてくる粋の極み。頑張ろうぜとか言わないし。猥歌をキメてドヤ顔するハレルソンライリーに涙が止まらない。 [review][投票(4)]
★4ミッション:8ミニッツ(2011/米)大義とシステム(=運命=source code)のために死んでからも繰り返し殺される命。これに反駁し世界を変えるのは「システム」の綻びであるところの「人間性」であるという王道。加えて「世界はどのようにでも在ることが出来る」という世界の「自由」と「可能性」への信頼があたたかくてうるおうし、エンタメで語ってくれるのが嬉しい。「時よ止まれ、お前は美しい」。 [review][投票(1)]
★3裸のランチ(1991/英=カナダ=日)クローネンバーグの「やってやるぜ」感が作為的で乗れない。最終的には天然で撮ってると思しきリンチとの格の違いはここだと思う。ハナシはいいから画だけ見とけとか言われても無理なのだが、ラストシーンの寒々した、かつ虚ろな絶望の風景には垂涎。クローネンバーグの曇天にはショアがよく似合う。近作の画の旨味の萌芽。[投票(1)]
★5ザ・マスター(2012/米)プロセシングの真贋に監督の興味はない。ポルノを扱った時と同じ優しさだ。猜疑の視線に曝されつつ「始まって(始めて)しまった人生」達の作る「家」の物語。酷薄な画の切り貼りの裏で涙を流しているように見える。『ブギーナイツ』の優しさを『時計じかけのオレンジ』から冷笑を除いた滋味と前作来の鋭い筆致が引き立てる完璧さ。「俺はもはやこう生きていくほかない、お前も生きられるように生きるしかないが、そう生きろ。」 [review][投票(5)]
★4ムーンライズ・キングダム(2012/米)真・『小さな恋のメロディ』。偏執的に端正な画面と対比して、子どもの「純粋さ」を軸に、予測不可能な「不穏」が漲っている。この不穏が世界を瓦解させ、やはり「不穏」により再構築される。納得だし「純粋=不穏」の表現は刺激的だが、知った話とも思うし、この監督さんにはもっとキャラに肩入れした、しょっぱくもほろほろ温かい情緒を求めたい。ちょっと巧すぎる。 [review][投票(4)]
★3シンデレラ(1950/米)一部価値観が前時代的。王子が空気、というか只の面食い野郎ではないか、という致命的違和感が拭えない。継母の外道振りもやり口が姑息でみみっちく、魔王の名を冠する猫で補完するなど、造形に弱さが。その辺は原作の所為にして、即日舞踏会をゴリ押す国王(これって暴君よね)のデタラメ剣術(剛剣)や、太閤とトランポリンで戯れるナンセンス、ネズミなどマイノリティへの情愛が屹立するのがディズニーらしさ。[投票(1)]
★4不思議の国のアリス(1951/米)ブレインストーミング的に乱射されるキレた戯言が、突如ぞっとするようなフレーズを紡ぎ出す。「はじまりとおわりがひっついた〜」「生まれなかった日に乾杯!」etc。時計(理性?)を破壊するシーンの恐怖感が輪をかけて快感。もちろん原作の力だが、明るい狂騒演出に妥協なく徹して深淵をのぞきこむ、ディズニーの「ドラッグムービー力」の高さに感嘆。落下しながら「心配ないわ〜w」と手を振るアリスがクレイジーで萌える。[投票(1)]
★4カーズ(2006/米)車の擬人化はお子様商業への迎合かと思ったが、人生の機微を「スピード」で語るための必然と分かり、全て腹に落ちた。共に生きること、恋、チームプレー。時代に取り残されること、追い付き追い越すこと。戦うこと。落伍。それはつまり、同じ速度を走ること、或いは走らないこと。終盤では、全ての「走る」アクションが酸いも甘いも含んだ感動に昇華するラセターマジック。 「君はどんな速度を生きている?」 [review][投票(1)]
★3エリジウム(2013/米)デイモンコプリーのド突き合いへの収斂は「革命」の活劇を矮小化した一方、政治+福祉+技術配分の偏りが生んだ「歪んだ結晶」の衝突としてグロテスクな見応えあり。強化骨格を着用型でなく生身に埋め込む「半人」感、無菌的CGに対峙する血と錆と埃、混沌を強引にヒューマンで締める手塚的センスも嬉しい。が、フェイクドキュメンタリを採用出来なかったことで状況説明の甘さが露呈。テーマ群が未消化で勿体ない。 [review][投票(6)]
★4哀しき獣(2010/韓国)延吉(中国)の朝鮮族街と、密入国の窓口となる韓国の場末では、殆ど街の色に違いはない。その近接感に関わらず、濃い「遠くに来ちまった」感。それは後戻りできない物語を高速カット割で煽って運び去るスタイルが的確な上、朝鮮族による、「民族/国家」の近いようで遠い、憎悪と羨望の微妙な距離認識を正確に演出に投影しているからだ。その距離のゼロ化=越境・接近が喰らい合いに至るしかない悲劇。凍えて飢えた画面も◯。 [review][投票(6)]
★3カイロの紫のバラ(1985/米)あいまいになった虚実の往還、特にその「還」の部分を苦く切なく、しかし力強く描いた『ビューティフルドリーマー』(押井守)が横綱の高みと深みだとしたら、これは前頭三枚目くらいではなかろうか(適当)。現実がこっそり牙を剥き続ける一本調子がけっこうしんどい。ファローの造形も、サマンサ・モートン(『ギター弾きの恋』)の超絶的造形の背後に霞んで見える。 [review][投票(1)]
★3ガントレット(1977/米)お菓子食べながらキャッキャ騒いで観る映画と思ったら、予想外に真顔、というか作家映画。偏執的な銃弾量。思考停止状態で撃ちまくる警官達は全体主義のゾンビのようで、笑いがいつしかおぞましさに変質する(過剰さの匙加減が巧い)。その中で貫かれるベタなロマンティックに信念が熱く滾る。熱いけど粗い。評価が難しい。 [review][投票(5)]
★2ロード・トゥ・パーディション(2002/米)胡散臭い。及び腰。うッすい「重厚感」。ダーティを貫いてこその悲劇とか特異な美しさを提示すべきでしょう。父子関係の特異な突き詰めなら『キック・アス』を観て卒倒する方が有意義と思う。ハンクスニューマンロウの顔面にもそこはかとなく嘘くささが漂い、画ヅラどうこうを語りたくないのに、撮影の「重厚感」がこれまた嘘くさくて苛立たしい。個々の問題ではなく、一貫した本気の統制力を感じられない映画。[投票(2)]
★5風立ちぬ(2013/日)実際のところ、監督は世界を滅ぼしたいのだろうと思っていた。最後に何か撮るなら、タタリ神として、終わる世界を描いて欲しいと思っていた。だってすごく面白そうだから。でも、今、業を見据えて、翼が呪いから解放される日、未来を確信する「風」を描いた映画を託してくれたことが嬉しい。それも掛け値なしの本当の言葉で。『ナウシカ』のあの日のように「風」は止まないのだ。最高傑作と思う。(原作未読) [review][投票(11)]
★4魔女の宅急便(1989/日)冒頭、キキの一見乱暴な箒術は母から「相変わらず下手ね!」との評を貰うが、「才能」という「可能性」を持て余して天然で暴れ回っていると観るのが正しいだろう。飛ぶシーンはキキの心象を反映してそれ自体のアクションがいちいち超素晴らしいが、対比的に「飛ばない」シーンが優れているから、双方が輝きを増す。一人で歩く岸壁の砂利道、ウルスラの家を訪れる際に乗る車のヒリヒリした違和感に「重力」を感じさせる。 [review][投票(3)]
★3マッドマックス(1979/豪)果てしなく続く荒野と道、車輪の回転が示唆する憎悪の無限連鎖。いったん狂気に入れば一方通行で限界を超えて加速し続ける。B級な画面が中和しなければとても観ていられない怖さ。でも、もっと観ていられないくらい怖い方が正解ではないのか。ラストの一本道は『わらの犬』と双璧だが、もっと丁寧に撮って欲しいところまで似ている。 [review][投票(2)]
★4パンダ・コパンダ(1972/日)開幕から鼻血。「か、かわええ」と絶句する程かわいい。善意とナンセンスの針が振り切れて曇りがなく、矢継ぎ早なテンポ(ミミちゃんはひたすら走る)が無粋な詮索やツッコミを許さない。ミミちゃんの口角の強烈な上がり方や、「天を目指すお下げ髪」など、観ててニコニコしてしまう。ですます調で喋るオヤジ臭いパパのシュールも素晴らしい。 [review][投票]
★4ダーティハリー(1971/米)無人のスタジアムは、実はハリーと犯人の<観戦者>つまりハリーに守られた映画内市民と、映画を<観る>我々で埋め尽くされている。世界の中心を示唆するロングショット。「神が殺らなきゃ誰が殺る。お楽しみだな、視姦者共」ということだろう。冒頭、街の全てを見下ろすビルの屋上に銃を携えて佇む犯人と警官達。街<世界>はそうして出来ている、という詠嘆。『ダークナイト』に接続する物語。 [review][投票(1)]