煽尼采さんのコメント: 点数順
復讐するは我にあり(1979/日) | 罪も無い筈の人々を次々と殺しまくる無軌道な男の物語なのに、全編から漂うニヒルなバイタリティ(ちょっと矛盾したような言い方だが)には妙に元気すら湧きたたせられてしまうことに、やや困惑させられる。 [review] | [投票(6)] | |
東京暮色(1957/日) | 最後の黒。小津的構成美と、黒の作劇術。 [review] | [投票(6)] | |
バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3(1990/米) | あたかもモーリス・ラヴェルの“ボレロ”の如き、反復と発展。或いは、吉本新喜劇的な、時空を越えた「お約束」。シリーズ物である事と、タイムトラベルという題材の、幸福な結婚が生んだ笑いと感動。 [review] | [投票(6)] | |
ゾンビ(1978/米=伊) | 資本主義は、低温火傷的な周到さで人々の脳を焼き尽くすのか?ほら、あなたの顔も、もう青黒い。 [review] | [投票(6)] | |
男と女(1966/仏) | 美しい天然色の広がる世界、それは、愛する人と繋がり合い、共に視線を交わす事の出来る世界。 [review] | [投票(6)] | |
スプライス(2009/カナダ=仏) | 異なるものの「Splice(結合)」がもたらす、ヒトの在り方を脅かすSpliceな感情。僕らの知っている世界が微妙にずらされることで未知の感情へと導かれる、このスプライスでサプライズな新鮮さはまさに、映画という体験に求めていたものだ。 [review] | [投票(5)] | |
空気人形(2009/日) | ペ・ドゥナ演じる空気人形が、生まれたての赤ん坊のように捉える世界。彼女の身体性がリー・ピンビンの撮影と相俟って醸し出す「空気」。空虚かつ充満した、透明なものとしての心。 [review] | [投票(5)] | |
となりのトトロ(1988/日) | 和風な国のアリス。子ども目線の陰影礼賛。五感で味わう世界。魅惑としての異界、喪失の不安としての死という、二つの彼岸。 [review] | [投票(5)] | |
鳥(1963/米) | 鳥が理由も無く襲いかかる恐怖だけを純粋に描いた作品、という印象は意外にも、再見して覆った。画と音だけで演出された純粋映画といったイメージは、半ばは真実だろうが、半ばは伝説。鳥の登場までの焦らしシーンが、心理劇としての『鳥』を構成する。 [review] | [投票(5)] | |
百万円と苦虫女(2008/日) | ‘間(ま)’も含めてやはりこれは会話劇。画で語る演出力や、主題の展開という面での、あともう一歩ほどで完成の域、という惜しさ。蒼井優の伸びやかな魅力が作品にオーラをまとわせるが、その分、鈴子が抱えている筈の欠落感が欠落気味なジレンマ。 [review] | [投票(5)] | |
ランジェ公爵夫人(2007/仏=伊) | 単なる恋愛劇ではない。個人の魂の間での、革命的、宗教的闘争。 [review] | [投票(5)] | |
アポカリプト(2006/米) | 暴力の酸鼻な様は、耐え難いグロテスクさに至る寸前で抑制されているように感じる。が、それにも関らず、この映画はメル・ギブソンの、暴力の哲学を描く手腕の比類なさを示している。 [review] | [投票(5)] | |
エレファント(2003/米) | コロンバイン事件という、人の耳目を引きつけそうな事件を題材にしつつ、敢えてこうした、一見すると無機質な、実験的とも言える作風に仕上げた監督は評価されるべきだろう。 [review] | [投票(5)] | |
バットマン ビギンズ(2005/米) | フラッシュ・バックの多用によって表現される、不安と恐怖の螺旋迷宮。これは紛れもなく、クリストファー・ノーランの映画。 [review] | [投票(5)] | |
ぼくのエリ 200歳の少女(2008/スウェーデン) | 日中は雪に覆われて風景が白に支配される。夜は黒い闇。建物の外観や内装も、いかにも北欧的な簡潔さで、故に「赤」(それは血に限らない)の鮮烈さが際立つ。冷たく乾いた美と、善悪の彼岸で為される愛。 [review] | [投票(4)] | |
父、帰る(2003/露) | とにかく、ショットとアクションのシンプルかつ強靭な力に圧される。そうした、瞬間的な「現在」の充実ぶりから徐々に立ち現れてくる反復。ひとつの試練、謎、問いとしての父。 [review] | [投票(4)] | |
ベニスに死す(1971/伊) | ヴェニスを覆う「観光」という猥雑さの向こうに見える純粋美。無駄な台詞は排され、主人公を演じるダーク・ボガードの微妙な表情の変化が支配する。特に、或るシーンでの、顔に浮かぶ笑みを抑制しながらも、内なる幸福感を隠しきれないその様子! [review] | [投票(4)] | |
エンター・ザ・ボイド(2009/仏=独=伊) | 知覚の機械装置たるカメラでこそ実現し得る、身体性と超越論的領野の境。『潜水服は蝶の夢を見る』張りの主観ショットであるが故のトリップ感。純粋意識のマザーファッカー。 [review] | [投票(4)] | |
アウトロー(1976/米) | これはおそらく、『許されざる者』に接続する作品。いや、イーストウッドのではなくて、ジョン・ヒューストンの。 [review] | [投票(4)] | |
ミリオンダラー・ベイビー(2004/米) | イーストウッドはこう要求したという――「黒をもっと黒くできないか」。この闇には、人の体温が宿っている。深い陰影によって表情が際立ち、表情が影に隠れることで観客の想像力を刺激し、闇が、場の空気と登場人物を一体化する。「黒」による、画面の彫琢。 [review] | [投票(4)] |