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[コメント] ミリオンダラー・ベイビー(2004/米)

"Don't"Wake up, Maggie, I think I got some-thing to "do" to you:
町田

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







まず最初に、これがイーストウッドにとって『許されざる者』以来の傑作であることは疑いようが無い。

西部劇が彼の一つのルーツであるのならば、本作に散りばめられたキーワード「アイリッシュ」は、更に奥深いルーツ、彼の血に拘るものである。同時にそれは、アルランド系だった母、最初の妻マギー・ジョンストン(本作で作曲者としてクレジットされるカイル・イーストウッドの実母でもある)へのオーマジュであるのだろう、ともかくイーストウッドは、前に切り込むよりも遡るときに傑作を生むらしい。

そろそろ中身について書こう。今回のイーストウッドの演出は、人物の関係性の描写に於いて、圧倒的だった。俳優達の演技合戦に終始した前作とはまるきり正反対である。

フランキー/イーストウッド=マギー/スワンクの師弟関係は勿論、イーストウッド=フリーマン、フリーマン=スワンクの関係性もそれぞれ、これが映画であることを忘れさせるほど濃密であった。何気ない目配せや、立ち位置、ちょっとした会話が匂わせる豊穣な関係性。憧れる。ドラマに於いて映画が描くべきはこれ以外になかろうと思うている。

そして全体の構成と語り口だ。全く以って流麗だ。あれだけ魅せて置いて、ボクシング映画でも、シンデレラストーリでもないのだから。フリーマンがイーストウッドの娘に宛てた書簡だったというオチも完璧なら、レモンパイの店の入り口で〆るラストショットも渋すぎた。唸りましたよ、俺は。

尊厳死の纏わる部分は、ええい、この際割愛してしまおう。テーマ自体、それほど目新しいものではないし、その是非を今、問うてみたところで仕方が無い。

最期に、ヒラリー・スワンクが本当に素晴らしかった。口の大きな女性は元来、好きなタチであるが、彼女の愛らしさは一際だ。これ一本で大ファンになってしまった。

(評価:★5)

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