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[コメント] 駅馬車(1939/米)

ジョン・フォードは ジャンルとしての西部劇の完成を志向したのではなく、トーキー時代の新しい活劇のあり方を志向した。オフで(画面外で)使われる音響効果の素晴らしさ!
ゑぎ

**ネタバレ注意**
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 さて、フォードは1926年に撮った『三悪人』以降、1939年の『駅馬車』まで13年間西部劇は作らなかった訳です。トーキー初期のこの約10年間は西部劇がハリウッドの主要映画路線から外れた時期だとされているのですが、確かにトーキー初期では野外シーンの音響処理が難しかった等技術的な要素もあるのだと思うけれど、どうもフォードは『三悪人』の完成度を見て、しばらくこのジャンルを離れようと考えたんじゃないか、と思うのです。『三悪人』というサイレント映画はもう西部劇の決定版といっていいくらい劇的要素を盛り込んだ大作西部劇です。

 そんな経緯を前提に置いてこの『駅馬車』という映画を見たとき、フォードは明らかにジャンルとしての西部劇の完成を志向したのではなく、トーキー時代の新しい活劇のあり方を志向したのだと思うのです。事実、この映画はその後ハリウッドで製作されるB級活劇の模範となりました。

 例えば、この映画のオフで(画面外で)使われる音響効果の素晴らしさ。リンゴ・キッド(ジョン・ウェイン)登場シーンの銃声音しかり。騎兵隊のラッパしかり。

 しかし、これは私の好みの問題ですが、ラストの決闘をオフの銃声音で表現し、クレア・トレバーのリアクション演技の見せ場を作った部分はこの映画の唯一の不満です。確かにこの見せない演出は最高にバッチリ決まっていて誉める方も多いのですが、私は決闘のカット割りを見たかったと今でも思っています。

(評価:★5)

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