[コメント] アメリ(2001/仏)
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私は人間のタイプを100分割くらいしても、たぶんアメリの部類に入るタイプだと思う。ブリュレガリガリもビニールプチプチも好き。うまくいきそうな恋にだって乗れない。もうこの手の映画にはぶちやられるにちがいないと思っていた。しかし、「アメリ」はそんな愛すべき内向き人間たちへ贈られた、ちょっとシアワセになれる物語などではなかった。
ジュネにとってアメリをはじめ、登場するちょっとストレンジなキャラクターたちは、結局、お人形でしかない。彼らは生きていない。ジュネのちょっと広くなった箱庭の中で、動かされているだけのようだ。別にジュネは人々をハッピーにしようなんて思っちゃいねぇよなー、と思う。もしくは。ジュネ自身がアメリのように、結局リアルに着地できていないのだ。リアルと自身のイマジネーションの世界をまだうまくつなげていないのだ。
アメリのあの恋の成就はおかしい。人が苦手な奥手で不器用な二人が、お互いの匂いに惹かれて恋に落ちて、突然、あんな濃厚なキスができるか?突然、あんなにシアワセになれるか(ファンタジーとして考えても、なっとくいかない)? あの恋自体がまだまだ、アメリの妄想なのだ、きっと。私みたいな男の子と出会って、恋におちて、情熱的なハッピーデイズがはじまる。でも、それはリアルじゃない。そんなに現実はやさしくないよ。もっと格好悪くて、もっとスローで、でももっと素敵なことなのだ(だから、出会った時点でおわるべきだったという意見に賛成です)。
そんなわけで、どうもこの映画は奇妙に不完全であると思う。デキもいまいち。トサカはえかけのヒヨコのように気持ち悪い。
なのに、この「アメリ」人気。「アメリ」の観客動員を考えると、今の日本には、こんな「アメリ」をスキな自分がスキ、な“私ってこんな人症候群”の若者がおおいんだろうな〜と、頭がいたくなった。ビニールをプチプチしたり、ブリュレをガリガリしたり、そういう小さなシアワセは“私だけの”ものだからシアワセなのであって、「そうそう、わかるわかる〜」「私も好きなのお」と皆でおおっぴらに共有したら、それはシアワセではなくなってしまう。ちがう?
何と言うか、全体的に稚拙な感じがぬぐえない。若い娘には受けるかもしれませんが、少なくとも、大人が良いという映画ではないと私は感じました。
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