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[コメント] タワーリング・インフェルノ(1974/米)

俺の親父は、「この映画のマックィーンはぜんぜん喋らないところがいいんだ。」と常々言っていたんだが、この年になって、ようやくその意味が理解できた。
kiona

 ガキの俺は「どこが?ちゃんと台詞くっちゃべってんじゃん?」と思ったものだが…

 つまり、親父は、マックィーンが無口であると言いたかったのではなく、オハラハンが寡黙であると言いたかったのだ。

 現場を訪れた消防士や警官に対しねぎらいの言葉一つないのは、現実とまるっきり一緒です。自らの義務を果たさずに災難を招いた張本人達は、納税者としての立場を振りかざし、権利ばかりを主張するのみ。これから命をかけようという者達のケツを蹴っとばそうとさえします。こと、この映画のように、相手が労働者を小ばかにしたような成金どもなら、それこそオハラハンには言いたいことが山ほどあったことでしょう。でも、そんな暇なんか無い。そんな暇があるなら、少しでもことを解決せねば。そこでオハラハンは敢えて口を閉ざします。

 2001/9/11を経た今も、“全世界の消防士に捧げる”との言葉に、一点の曇りなし。人間の生き様をしっかりと描くことで、特撮を盛り立ててこそ、真のデザスター・ムービー。まだまだ若輩者の自分が言うのもなんですが、十代の皆さんにこそ観てもらいたい。ハリウッド・エンターテイメントが本当に凄かったのは60、70年代、こんな傑作がごろごろしているんですよ?

 話は変わりますが、うちの親父は、これを観てからというもの、たとえ『キングソロモンの秘宝』みたいな映画であっても、「あの顔が出てきただけでむかついちゃって、映画鑑賞になんねえんだよなぁ。」と申しておりました。観客の怒りを一身に浴びることの出来る健全なる悪役がいた時代にも敬礼。

(評価:★5)

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