監督自身がゲイだからか、いたってゲイの存在が自然である。つまり、ゲイが巻き起こす騒動とか「ゲイで何が悪い」的な訴えがある訳ではない。

「注意深く生きてたんですけどね」「俺は手術なんかしないよ」

社会的な視点はまだまだ厳しい。理解あるふりをする母親ですらニューハーフとの区別はついていない。だが当たり前のようにゲイが存在する社会。ゲイであることは、片岡礼子演じる朝子同様、一種のアウトローにすぎない。

これは大人になりきれない大人達の自分探しの物語だ。いや、希望探しの物語かもしれない。

本当は子供をつくる気なんかないのかもしれない。子供を持つこと自体に幸せを見いだしているわけでもない。だからスポイトなんて言ってるんだし、ストーリー上子供が産まれることもない。子供を持つことの「可能性」、子供を持つことによって自分が変われる「可能性」、そこに生きる希望を見いだしているにすぎない。それは決して悪いことではない。むしろ私くらいの世代にはリアル過ぎて痛いくらいだ。

そういった意味で、私はこの映画に現代の『真夜中のカーボーイ』をみた。

あんまり真面目に書きすぎた。誰もが思う事かもしれないから先に押さえてしまおう。

片岡礼子様。私めでよければいつでもお相手いたします。もちろんスポイトなどと言わず。