[コメント] パプリカ(2006/日)
画面は素晴らしい。JAPアニメーションの誇るべき成長の姿であろう。ストーリーを追うより、銀幕に繰り広げられる悪夢に酔い痴れよう…と書きたいところだが、今監督の、と言うより日本アニメの限界を見たような気がする。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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そうだ。もはやアニメーションの技術は極められすぎており、技術の勝利だけでは飽き足らない時代はやってきているのだ。ここには普通の劇映画に求められる志がない。冒頭の百鬼夜行的なパレードは一見に価するが、それを何回も見せつけられては退屈さは極まりない。
キャラクターの魅力云々、という問題では最早ない。アニメのダイナミズム、描き込みの精緻さ、ビビッドで目を奪う影と光のコントラスト。こういったものを20年前に見せられていれば、自分は心を奪われ感激していただろう。しかしもはやこれらはその時代より連なる相も変らぬ技術の博覧会に過ぎない。子供じみたデブ科学者がヒロインの愛情を勝ち取るラストも、筒井一流の皮肉というよりは現代のモテナイ君たちへの過剰なサービスと取れなくもないが、そんな揚げ足取りなぞしても仕様がない小説への敗北が物語からは見て取れる。やはりこの作品でも筒井の肥大したともとれそうなイマジネーションを、映画は再現するに至っていない…哀しいことだが。
以後は雑談。過激なスモーク・ラヴァーである笑犬楼大人の作品ながら、喫煙シーンがほとんど削られているあたりが寂しかった。周りの冷たい視線に耐え切れなくなってタバコを止めたこの凡人からすれば、筒井には是非確固たる態度を貫き通して欲しかった。映画ファンの血はいまでも脈々と流れているようで、そのへんは嬉しかったが。
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