[コメント] ゴジラ(1954/日)
いい映画か?と自問自答すればいい映画だ、と答える「今の」自分がいる。しかし、最初は違っていた。
ゴジラをはじめて観たのは、多分小学校に上がる前だったとおもう。純粋な印象は、「黒くて怖い」映画だったということだろうか。これ以後かなりの間、『ゴジラ』はボクにとっての嫌な映画No.1だったかもしれない。
『ゴジラ』の印象が変わったのは、間違いなく小学校1年のとき、『ドラえもん のび太の恐竜』と同時上映された『モスラ対ゴジラ』だろう。これは打って変わって明るい印象で、妙な違和感を覚えたものだ。 その後、愛すべき悪友たちと特撮談義に花を咲かせ、小遣いをはたいて8ミリ(ビデオではない!)で稚拙な自主制作怪獣映画まで作ったり上映会を開いたりしたのもいい思い出だ。この頃は、『ゴジラ』が怖い、なんてことはすっかり忘れてしまっていた。あまつさえ、『ゴジラ対ヘドラ』がイイ!なんて言うマセガキですらあった(今でもわりと好きではあるが・・・)。
よく覚えていないのだが、中学生になってから、ひょんなことでこの初代『ゴジラ』を見直すきっかけがあった。 6年以上ぶりに観なおすことになった理由は覚えていない。確か、ビデオレンタルかなにかだったのではないだろうか?寒い最中、コタツに潜り込んでひとりテレビのスイッチを入れた。そこには、忘れていた「黒くて怖い」映画があった。怖かった。気がつくととっくに映画は終わっていたのだが、、なんだか怖くてコタツから出られなくなった。しばらく、悶々とした。なぜ、こんな映画のことを忘れていたのだろうか、と。ストーリーや場面を忘れていたわけではない。むしろ、本などで何度も反芻していたのだから。じゃあ、ボクは何を忘れていたのか? 多分、ボクは嫌なことから目を背けていただけだったのだろう。戦争の暗い影、大人同士の醜いいがみ合い。死の恐怖。人間のエゴ。小学生になる前の自分にそんなものが理解できる訳は無いのだが、「映画」という媒体として『ゴジラ』はそれを観せてくれていた。その感覚がきっと「黒くて怖い」という印象になったのだろう。そして、ある程度物事が理解できるようになってはじめて、『ゴジラ』の意味をやっとのことで理解しはじめたのだ。 この映画の重さは筆舌に尽くしがたい。まさしく戦争を体験した人間が紡ぎ出した恐怖を映像化したものだと言い切れる。
あの恐怖がよみがえった夜のことは本当に忘れられない。最初に観た時の記憶はだんだんと薄らいでいるが、「黒くて怖い」ものは、たしかにそこにある。 今こそ、声を大にして言おう。 こいつはすごい映画だ。
〔追記〕 実は、この後同じような印象だった映画が1本だけある。『未来世紀ブラジル』がそうだ。これはまだ一度も見直していない。そして、相変わらずボクは怖い映画が苦手だ。
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