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[コメント] トレーニング・デイ(2001/米)

この時期にきて、デンゼル・ワシントンがアカデミー賞をとった自分なりの考察→
mimiうさぎ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







なぜこの映画なのか。

渾身の演技で立ち向かった『マルコムX』でも『ハリケーン』でもなくこの映画なのか。この映画を見るまで、私はそこに納得できなかった。

けれど、映画を見終わった後この映画であった意味の深さを考える。

ハリウッドは、今だ白人至上主義が色濃く残っていると良く聞く。それは、白人俳優と黒人俳優のギャラの差が激しい事でも分かるのだが、「役」の面でも推察出来る。

かつて、映画は白人のために作られていた。白人(特にアメリカ人)が正義であり、黒人やその他の人種が悪であるかのように。それが、差別撤廃の動きが活発になっていくと、映画にもその流れを受けたものが現れ始めた。

例をあげると、かつてアカデミー賞を取ったクリント・イーストウッドの『許されざる者』では、西部劇では異例の黒人俳優モーガン・フリーマンを仲間として起用した。映画自体ではそれがなんら不自然ではなかったが、現実的にありえない事だったのだ。

こういった傾向は、80年代後半から顕著に現れてきた。主要キャストには必ずと言っていいほど黒人俳優を起用する、それはいいのだが、ある時期において「殺される黒人」はおろか「悪い黒人」が一人として映画に登場しないのだ。そのあまりの気配り振りが、時には不自然さを思わせ、「逆差別」とも捉えかねない時も多くあった。

人は、肌の色で判断できない。白人の中にもいい人悪い人がいるように、黒人の中にもいい人悪い人があっていいのだから。

この映画でデンゼル・ワシントンが「悪徳警官」を演じた意味は大きい。90年代後半から黒人が殺されることも、悪人を演じる事もあるようになってきたものの、彼のような有名な黒人俳優が悪人となることはまず考えにくかったからだ。

彼と対角線上にある「善」の象徴として白人で比較的若手のイーサン・ホークが演じる事は、ハリウッド映画の大きな転機になるのではないだろうか。人種に囚われない映画。そもそもこのスタイルこそ本当の意味で差別の無い映画であると思う。

そして、最もこの映画のすばらしい点は、イーサン・ホークの他に「善」として描かれた、一見こわおもてで、物騒な地域(映画の中では悪の中心と称される地域)に住む黒人たちだった。

彼らは金で動かなかった。警官バッジを盾に悪行を尽くし、自分たちを見下すデンゼルが「金をやる!」と言っても動かなかったのだ。

今まで、差別と戦う「特別な黒人」を演じながら、現実社会の差別と戦っていたデンゼルだったが、この映画で「自分が悪になる事で、一般の黒人(何か特別な功績を残したのではない市民)の正義を強調した」のだった。

この意味は大きい。

差別と言うものを通り越し、一俳優として悪徳警官を見事に演じたデンゼルにアカデミー賞が贈られたのだ!! そう信じたい。

私の大好きな二人の俳優がひたすらかっこいいこの映画は、地味な宣伝の割に私の中に妙に心に残った。もちろん、DVD購入しようと堅く決心しているのだけど、一つこの映画の難点を言えば、「トレーニング・デイズ」でなく『トレーニング・デイ』である事だった。

映画は一日の出来事のように進むのだが、エピソードが多すぎて、とても一日で起ったとは考えにくい。時間的経緯に無理があるのなら、「デイズ」でもなんら問題はないと思うのだけど…。

余談:ファンのつぶやき☆☆☆イーサン・ホークも地味に助演男優賞にノミネートされておりまするぅ〜〜〜。すんごぉぉぉくかっこいいんですぅ〜。

(評価:★5)

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