★3 | 二郎は鮨の夢を見る(2011/米) | 「シンプルを突き詰めるとピュアになる」。ライター山本益博は、「すきやばし次郎」店主小野二郎の寿司をそう評する。正月休みのあいだが一番落ち着かないという仕事人間の二郎は、自宅と銀座にある店とを行き来する毎日だ。そんな彼の握る寿司は一切の虚飾を排した、単純明快な品。これが内外の賓客を唸らせ、85歳という高齢のシェフにして唯一ミシュラン・ガイドの三ツ星評価を受け続ける理由となっている。彼の息子たちであり、後継者として支店の暖簾を守る小野禎一や小野隆士もまた、父である以上に師である二郎への尊敬の意を隠さない。職人・二郎の腕前と職人哲学をデヴィッド・ゲルブのカメラが捉えてゆく。〔82分〕 | [投票] |
★3 | 天と地を駈ける男(1959/日) | 零細航空会社の社長だった稲葉(石原裕次郎)は、嵐の空へ飛び出し事故で愛機を潰した。病院で迎えた医師・慧子(北原三枝)に手厳しくやりこめられ、彼は慧子もいる日本空輸に入社、一からやり直すことにする。稲葉はどんな時も動物的カンで危機を乗り越えてきたゆえに、学業そっちのけでマイペースに徹するが、彼の前に現われた二世教官ヘンリー(二谷英明)は、徹底的合理精神を説いてそれを批判する。ヘンリーに反駁する稲葉は、ヘンリーとの結婚を控えている慧子に腹を立てるほど彼女を愛していたのだ。ヘンリーへの挑発を見かねて、慧子の父・尾関(芦田伸介)は先輩パイロットとして稲葉を殴り倒し、稲葉の亡父から受けた恩義を告白する。〔94分/スコープ〕 | [投票] |
★3 | 晴れた日に永遠が見える(1970/米) | 大学の教壇に立つ心理学者シャボー(イヴ・モンタン)の研究室を、ある日22歳のデイジー(バーブラ・ストライサンド)が訪れた。恋人であるウォーレン(ラリー・ブライデン)との結婚を間近に控えているという彼女は、チェーンスモーキングの悪癖をシャボーの催眠術で治療してもらいに来たのだ。だが、デイジーは内面にある秘密…予知能力をはじめとする超常能力を隠していた。シャボーの術で過去に意識を飛ばしたデイジーは、前世である侯爵夫人メリンダの名を名乗る。夫であるロバート(ジョン・リチャードソン)のため悲劇の生涯をおくる彼女に、シャボーは心を奪われてしまうが、彼女の臨床ノートはそれどころでない反響を内外に生むのだった。〔129分〕 | [投票] |
★3 | 8月の家族たち(2013/米) | オクラホマ。詩人ベヴァリー(サム・シェパード)は喉頭ガンを患う妻ヴァイオレット(メリル・ストリープ)のため家政婦ジョナ(ミスティ・アパーム)を雇って間もなく失踪した。ヴァイオレットの連絡により、その妹である陽気なマティ・フェイ(マーゴ・マーティンデール)が実家を訪れる。やがて3人の娘たち…ひとり娘を抱える気丈な長女バーバラ(ジュリア・ロバーツ)、従兄との交際を重ねる不器用な次女アイビー(ジュリアン・ニコルソン)、そして恋愛に奔放な三女カレン(ジュリエット・ルイス)らとその伴侶たちも現われると、薬に冒されての奇矯な発言をもって、ヴァイオレットは娘たちに愛憎半ばする感情をぶつけてゆくのだった。〔121分〕 | [投票] |
★3 | 黒いスーツを着た男(2012/仏) | 自動車工から支配人にまで出世を重ねたアル(ラファエル・ペルソナ)は、社長令嬢との結婚を控え幸福の絶頂にあった。だが、ある日彼は車で男をひとり轢いてしまう。気を動転させその場を去ったアルを、医学生ジュリエット(クロティルド・エスム)が見つめていた。急ぎ救急車を呼んだジュリエットは、被害者の妻であるヴェラ(アルタ・ドブロシ )に知る限りの事実を伝える。しかし不法滞在外国人のヴェラは、告訴する資金すら持ち合わせていなかった。そんな折、密かに病院を訪れ被害者の無事を祈ったアルの罪をジュリエットは問う。全てを奪われる危機に晒されたアルは、彼女に裏工作で作ったヴェラへの賠償金を託すのだったが、それで済む訳もなかった。〔101分〕 | [投票] |
★3 | フルートベール駅で(2013/米) | オスカー(マイケル・B・ジョーダン)は22歳。育ち盛りのタチアナ(アリアナ・ニール)のよき父親だ。しかし浮気もすればヤクも嗜むチョイワル男でもあり、そのだらしなさで女房のソフィーナ(メロニー・ディアス)を怒らせてもいた。彼女をなだめながら仕事場に車で送り届けたオスカーは、今日が母ワンダ(オクタヴィア・スペンサー)の誕生日であることを忘れず、祝福とカニ数匹を台所に贈る約束のメールを送信する。さっそく勤務先のスーパーにプレゼントを仕入れるべく向かった彼だったが、待っていたのは上司からのクビ宣告だった。それでも今日を奔走するオスカーの前に、無慈悲なる壁が立ち塞がる。ライアン・クーグラー監督の処女長編。〔85分〕 | [投票] |
★3 | アシュラ(2012/日) | 応仁の乱の渦中にある京都。狂女より生まれ、地獄のような環境のなか獣同然に育った男児(こおろぎさとみ)はある法師(北大路欣也)を襲うが、一蹴され念仏の習慣と「アシュラ」の名を与えられた。成長したアシュラ(野沢雅子)は農村にて、下人の子供たちをいたぶる地頭の息子に牙をむき、これを噛み殺す。怒り狂う地頭(玄田哲章)はアシュラを谷に追い詰めるが、谷底に落下させた時点で引きあげた。生き延び逃亡したアシュラは少女若狭(林原めぐみ)に救われ、隠れ家と食べ物を与えられる。若狭より人の情を教わり、人間に立ち返ってゆくアシュラだったが、平穏は長くは続かなかった。「人肉食」をモチーフとしたジョージ秋山の問題作を映画化。〔75分〕 | [投票] |
★3 | HUNGER/ハンガー(2008/英=アイルランド) | 1981年。英国サッチャー政権によって捕縛されたIRAの構成員たちは、拘留された刑務所において政治犯としての処遇を求めた。その主張は聞き入れられず、幹部サンズ(ミヒャエル・ファスベンダー)はこれに抗議したが、刑務所のローアン所長(スチュアート・グレアム)らは沈黙と暴力をもって応えるのだった。ここに新入り囚人として入所したギレン(ブライアン・ミリガン)は、牢獄の壁に塗りつけられた排泄物と、先輩であるキャンベル(リーアム・マクマホン)の裸体に近い風体を見、それを抵抗行動と察する。そして、非暴力的手段として彼らとハンガーストライキに出るサンズに、モーラン神父(リーアム・カニンガム)は対話を求めてきた。〔96分〕 | [投票] |
★3 | 花と怒涛(1964/日) | 婚礼の行列より花嫁おしげ(松原智恵子)を奪い去ったときから、菊治(小林旭)は渡世人となった。そして刺客の吉村(川地民夫)より命を狙われ、さらに刑事谷岡(玉川伊佐男)にも追跡を受けるようになっていた。村田組の土方として懸命に働く今の菊治は、夜ともなれば呑み屋の二階に立ち戻り、おしげとささやかな幸福を確かめ合う。だが、村田組に妨害を働く玉井組のみならず、菊治はその正義感から村田組長(山内明)にも問題視されるに至った。そんな彼に惚れ込んだ芸者万竜(久保菜穂子)からの、また財界の大物重山(滝沢修)からの協力を得ながらも、菊治の逃げ場所は序々に狭まりゆくのだった。〔92分/スコープ〕 | [投票] |
★3 | バックコーラスの歌姫(ディーバ)たち(2013/米) | 名誉と栄光を一身に受けるスターたちの定位置より20フィート(6メートル)後…そこにスターを夢見つつ、引き立て役を演じさせられるバックコーラス歌手の居場所がある。ダーレン・ラヴはエルヴィス・プレスリー、フランク・シナトラらのコーラスを起点に栄光を掴もうとしたが、プロデューサーらに翻弄され苦汁を舐めた。メリー・クレイトンはローリング・ストーンズらとの驚嘆に値するセッションを足掛かりにソロに転じたが、アルバムは全く売れなかった。'90年代以後、彼女たちの仕事場はポップス界の変容とともに狭められるが、あるいは歌に生き甲斐を見い出し、あるいは名を知られる方便として、歌うことを止めない彼女たちをカメラは追う。〔90分〕 | [投票] |
★3 | ソウルガールズ(2012/豪) | 先住民族アボリジニが市民権を得る以前のオーストラリア。居留地一の美声三姉妹が、街の喉自慢大会の舞台に立った。勝気な長女ゲイル(デボラ・メイルマン)と、ジュリー(ジェシカ・マーボイ)、シンシア(ミランダ・タプセル)の三人の歌うカントリーソングに白人聴衆は耳も貸さなかったが、司会を務めた白人ソウル男デイヴ(クリス・オダウド)は磨かれざる珠の存在を感じた。そして三人が、今しも戦争の真っ只中にあるヴェトナムの米軍キャンプで歌う、というチャンスに賭けようとしている事実を知り、デイヴは彼女らをソウルグループとして売り込むことにする。そこに白人として育てられたケイ(シャリ・セベンズ)が加わり、サファイアズは誕生する。〔98分〕 | [投票] |
★3 | 皇帝と公爵(2012/仏=ポルトガル) | 1810年。仏軍の侵攻にポルトガルは屈したかに見えたが、それは英軍将軍ウェリントン(ジョン・マルコヴィッチ)の罠であり、仏軍は一気に勢いを失った。彼らに抗しポルトガルを死守してきた連合軍の中にあって、軍曹フランシスコ(ヌヌ・ロペス)は倒れた戦友の亡骸をその妻モーリーン(ジェマイマ・ウェスト)に見せ、彼女の心の痛みを受けて愛情を募らせる。そして行方不明の妻を捜す従軍宣教師のヴィセンテ(フィリッピ・ヴァルガス)や、仏軍を逃れる傷病将校アレンカル(カルロト・コッタ)は戦場を彷徨う。本作はラウル・ルイスにより企画され製作されるべき一篇だったが、その逝去によりバレリア・サルミエントに監督を任された。〔152分〕 | [投票] |
★3 | 鉄くず拾いの物語(2013/ボスニア・ヘルツェゴビナ=仏=スロベニア=伊) | 少数民族ロマのナジフ・ムジチは、先の戦争に従軍しながら全く報奨金を貰うこともなく、仕事すら与えられず屑鉄拾いの生活を送っている。それゆえ、妻のセナダ・アリマノヴィッチにも報いられず、ふたりの娘たちにも楽しみといえばテレビくらいしか与えられなかった。ある日、セナダが出血を伴う激しい腹痛をおこし、ナジフは自動車で彼女を遠い街の病院へと移送する。その結果、セナダが身篭った三人目の子供はすでに死んでおり、それゆえの異常事態と判った。ナジフは力を振り絞った労働の対価を病院に届けるが、手術代には遙かに足りない、と病院側は彼らの依頼を拒絶する。ダニス・タノヴィッチ監督が母国の絶望的な現状を抉るセミドキュメント。〔74分〕 | [投票] |
★3 | 旅人は夢を奏でる(2012/フィンランド) | ピアニストのティモ(サムリ・エデルマン)が演奏会より帰宅してみると、見知らぬ酔っ払いがドアの前で眠っていた。彼はレオ(ヴェサ・マッティ・ロイリ)、35年ぶりに姿を見せたティモの実父であった。陽気だが傍若無人な彼にティモは切れかかるが、乗りかかった舟でふたりドライブに出かけることに。しかしそれは、予期せぬ人生の旅であった。存在も知らなかった腹違いの姉ミンナ(マリ・ペランコスキ)、認知症の祖母のもとを転々と渡りゆき、騒動のなかで次第に息子の心は父に寄り添う。だが、レオの頼みで自分の前妻ティーア(イリーナ・ビョークルンド)を訪ねるティモを置いて、レオは最後に出会うべき人物のもとに向かうのだった。〔115分/スコープ〕 | [投票] |
★3 | 殺人者を消せ(1964/日) | 平穏無事なニッポンにおさらばし、傭兵となって海外の戦場に身を躍らせようとした早川(石原裕次郎)は呆気なく密航罪で投獄された。そんな彼に面会を求めた男、佐竹(小池朝雄)は安心して外国に渡航できる代償として、早川にとある倉庫会社の若社長になりすまし、一ヶ月を過ごしてほしいと求める。渋々承諾した早川を待っていたのは彼の正体を疑う婚約者の百合(十朱幸代)と、そして会社乗っ取りを目論む沖専務(高松英郎)以下の上層幹部たちだった。幹部たちはすでに社長一族の3人を暗殺、その次男に化けた早川の命をも狙って牙を研いでいたのだ。だが、危機を摺り抜ける早川の前で幹部たちは謎の惨死を遂げてゆく。真相はいずこに!?〔94分/スコープ〕 | [投票] |
★3 | 素ッ裸の年令(1959/日) | サブ(藤巻三郎)は高校進学を目指す真面目な少年だったが、理解なく貧しい環境にあって不良たちの一団におさまっていた。バイクを駆ってカツアゲを働き、米軍基地の片隅にある旧兵舎を根城に、リーダーの健(赤木圭一郎)のもと分け前を分配しあう彼ら。サブはそんな生きかたに疑念を持たなかったが、健は新聞記者(高原駿雄)に部下たちの武勇談をバラし、興味本位の記事を書かせて収入を得ていた。それでも、何も知らないサブは姉貴分の陽子(堀恭子)に思いを寄せ、ささくれ立った心をクズ拾いの爺さん(左卜全)の話に癒されるのだった。そしてある日、仲間が100万円の危険物運びの仕事を引き受け、健はトラックのハンドルを握る。〔白黒/54分〕 | [投票] |
★3 | さよなら、アドルフ(2012/豪=独=英) | 第二次大戦後。ナチの高官たる父(ハンス・ヨハン・ヴァークナー)とその妻である母(ウルシーナ・ラルディ)は、娘ローレ(ザスキア・ローゼンタール)をはじめとした五人姉弟を残して連合軍本部に出頭し、二度と帰ることはなかった。ただ北に住む祖母(イーファ・マリア・ハーゲン)を頼ってゆけと言い残して…。ローレたちが気づいたことは、理想のもと一丸になって勝利へ向け邁進していたはずのドイツは、単なる幻想だったということだ。彼女らは物乞いをしながら旅を続けるが、沿道の人々はあまりにも冷たかった。その中でひとりの青年がローレに近づき、姉弟のため力を貸してくれる。彼はトマス(カイ・マリーナ)、ユダヤ人だった。〔109分/ヴィスタ〕 | [投票] |
★3 | マイヤーリング(1957/米) | オーストリア・ハンガリー帝国。皇帝フランツ・ヨーゼフ(ベイジル・シドニー)の厳しい執政を受けて、自由主義勢力の萌芽が片っ端から摘み取られていた時代のこと。皇太子ルドルフ(メル・フェラー)は父に真っ向から対立し、民主主義者たちと交流、また夜毎に行きずりの女たちとの交情に溺れる生活を送っていた。だが、自分に纏わりつく女に純粋な愛情などない、との彼の諦念を覆したのが、偶然出逢った外交官令嬢マリー(オードリー・ヘプバーン)であった。美貌のマリーは、またその打算を疑うルドルフに純情を捧げる無垢な娘でもあったのだ。しかし、接近するふたりを阻む首相(レイモンド・マッシー)足下の記者たちが暗躍し始める。〔75分/白黒〕 [more] | [投票] |
★3 | 帰らざる波止場(1966/日) | 帰国したピアニストの津田(石原裕次郎)は知らずに麻薬密輸の片棒を担がされ、その上に自ら情婦を殺すことで三年の実刑を食らった。すべてを奪われて復讐鬼と化した彼は最初の一歩でつまずくが、銃創を冴子(浅丘ルリ子)という女に手当てしてもらい恋に墜ちる。冴子は老社長の妻だったが、寡婦となるとともに財産目当てと疑われ、家を出て海外を周遊していたのだ。冴子の出国への誘いに津田は心を揺らし、一連の事件を追う刑事江草(志村喬)の協力依頼を厳しく跳ねのける。その裏で組織の手先大滝(郷えい治)も動き、津田に詮索を拒み冴子と日本を去れと迫るのだった。しかし、津田は冴子の言葉の裏にある偽りを知り、怒りに身を震わせる。〔89分/スコープ〕 | [投票] |
★3 | 続東京流れ者 海は真赤な恋の色(1966/日) | 流れ者・不死鳥の哲(渡哲也)が高知に渡った。付け狙う殺し屋・二段撃ちの健(吉田輝雄)を相手にもせず、かつて兄貴と呼んだエースの秀(垂水悟郎)との再会を誓って哲はこの地にやってきたのだ。「リラ」という店で踊り子サリイ(松原智恵子)を問い詰めた哲は、瀬川一家の手酷い歓迎を受け酒屋の安太郎老人(嵯峨善兵)に銃創を手当てして貰う。哲は酒屋を手伝って恩を返しつつ、安太郎の息子浩司(杉良太郎)がサリイへの恋心ゆえに瀬川(金子信雄)の子分になっていることを知るのだった。そして、安太郎のもとで働く節子(橘和子)こそ秀の妹と知った哲は、暗雲の中に自ら踏み込んでゆく。秀は再び高知に舞い戻るのか。〔73分/スコープ〕 | [投票] |