★2 | 化石の荒野(1982/日) | 原作自体が寿行の作品中たいして面白味のない部類なのに、はったりより虚無感上等な丸山に脚色させてどうなんって感じだ。それをエロ&バイオレンスの牙を抜かれた長谷部が見事に駄作に仕上げてくれた。為にする設定が全て貧乏臭く裏目に出てる。 | [投票] |
★5 | リップヴァンウィンクルの花嫁(2016/日) | 現実の世の中の彼女たちには綾野剛が手を差し伸べてくれることはないのだが、そこまで岩井が呑んで含めた仮想王国を揺蕩うように黒木は乗り越えていく。随所に片鱗が差し込まれる疲弊し腐った現実。それを許容し肯定しないと世界は手に入らない。 | [投票(4)] |
★4 | タイタニック(1997/米) | ハイ&ローの呉越同舟をヴィスコンティ級の重厚さで描くことができれば密閉空間の悲喜交々も荘厳なものにもなったろうがハーレクイーンにライト。そして、訪れる悲劇もテーマパークのアトラクションのように期待値の最大公約数を増幅する。大したものだ。 | [投票] |
★3 | クリムゾン・ピーク(2015/米) | 『レベッカ』ベースな古典怪奇譚を贅を尽くした意匠を纏わせ心ゆくまで磨き上げたかったのだろうが内実が凡庸で単なる虚仮威しで終わってしまった。地下貯水槽や赤土採掘機といった魅力的で大がかりな装置がてんで活かされない。これは糞詰まり的に頷けない。 | [投票] |
★4 | ピースメーカー(1997/米) | 日常の仕事をこなす如くハードな仕事を成就させるヒーローを確立。たたみかける編集の冴えも伴いアクションの切れは超A級。特にトルコのシークェンスは特筆でパノラミックな景観と錯綜する力のベクトルの混沌が陶然とする出来だ。ただ余りに緩急が無さ過ぎ。 | [投票] |
★4 | あやしい彼女(2016/日) | 所詮は小娘のお婆ちゃん芸と高を括った観客を一気にかっさらうモールでの母息子とのやり取り。演出は映画以前でコクも何もない凡庸さなのだが、仕掛けられた催涙爆弾が峻烈でそれを茶番に終わらせない多部ちゃんの胆力に救われた。正直3度嗚咽しました。 | [投票(2)] |
★2 | ビッグ・ウェンズデー(1978/米) | 徴兵拒否するにせよ酒に溺れるにせよそうなる真摯さが感じられず平々凡々たる微温ドラマがだるい。結果ノスタルジーという代物に為し崩しに寄りかかるしか求心力を維持できない。しかも伝説と称されるものがCGの無い時代と割りびいたって程遠い代物なのだ。 | [投票] |
★4 | 女が眠る時(2016/日) | 剣呑なド変態を盗視するインテリなプチ変態という図式が乱歩チックであり、それがジャパネスク淫靡なアプローチでなく平凡な日本の景観を大陸の感性で濾過した世界で繰り広げられ倒錯的にエキサイティング。この世界には意味など無く事象のみが存在する。 | [投票] |
★3 | 集団左遷(1994/日) | リストラが瀑布のように加速化したバブル崩壊初期に娯楽映画としての小気味良い虚構と現実の深刻なリアリズムは到底相容れるものではないのだがギリの線で一応の折り合いをつけた。ダメ社員といってもそこはそれ映画なので根力はある。それこそ虚構なのだが。 | [投票] |
★3 | ララミーから来た男(1955/米) | 原『大いなる西部』とも言えるクリスプとケネディの関係性の通り一遍ではない悲劇味が全てで、その緻密な積年性の前ではスチュワートの復讐譚はエモーション希薄だ。言うたら歪な劇構成であり、そういうものでも見せ切るマン演出の腰の据わり。 | [投票] |
★4 | ワン・フロム・ザ・ハート(1982/米) | さして起伏ない物語であるから行間を埋める機微こそ命の世界だろうに満艦飾のセットしか術ない。『黙示録』の反動に見えて根は同じで、そういうコッポラはいじらしい。これだけの熱量を費やし行き着いた感もてんで無い。主役2人の地味さもやってくれる。 | [投票] |
★4 | 家族はつらいよ(2016/日) | かねてより寅屋のコラボ再現を夢想してた山田が尺に合う面子に巡り合ったということで倍賞の後継として夏川も完全に趣味に合う。老妻の反乱は未遂に終わっても犬の欠伸で済む話。若作りな色気を排した世界では稔侍のベタギャグも心地いい。 | [投票(1)] |
★3 | 子供たちの王様(1987/中国) | ど素人先生奮闘記というほどの腑に落ちる何かがある訳でもなく主人公の内実にもそれほど踏み込まない。その割にテーマは教育の在り方という一元的なものに見え単調。ときたま象徴性を帯びた表現も見られるが、それ程には映像的な昇華が達成された訳でもない。 | [投票] |
★5 | 実録 私設銀座警察(1973/日) | 度肝を抜く開巻からコード無視の遣り放題の大饗宴。展開の読めなさも常軌を逸する。特筆されるは深みある撮影と美術で街中でなくドブ川を主舞台とし根城のスナックは裏口しか映さぬ徹底ぶり。陰陽両極を担う渡瀬と梅宮の乗りが結実する大乱交の夢幻。 | [投票(3)] |
★3 | 質屋(1964/米) | 撮影・音楽など完璧な布陣だが、それでもカサヴェテス以後ニューシネマ以前の立ち位置ゆえの煮え切らなさは拭えない。人間性の回復とまではいかぬプチドラマを重厚な一人芝居でスタイガーが演じるが空回り感も。フラッシュバックの多用も少々煩い。 | [投票] |
★4 | マネー・ショート 華麗なる大逆転(2015/米) | カレルの調査チームが目の当たりにするサブプライムの最川下の荒廃した宅地や業者とか格付け会社の似非権威の実態が講談的だ。リスクを負ったのだから世界が崩壊して俺が設けて何悪いくらいに開き直って欲しい。彼らの思考は簡単に絵解きできる筈ない。
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★3 | 美女と野獣(1946/仏) | 誰もが知るこの話を如何に見せるかのコクトーのアイデア自体は稚拙な戯れで今更の感があっても、多分アルカンが主導したであろう日常シーンの気合い入りには瞠目させられる。音楽オーリック共々仏映画のレジェンドが固めるバックヤードは堅牢だ。 | [投票] |
★3 | エージェント・ウルトラ(2015/米) | ボーンをパロっても今更なので、ややマジ路線は悪くもないが、にしてもオリジナルな付与案が無さすぎ。風聞や都市伝の類を寄せ集め加工し一丁上がり的な小賢しさ。アイゼンバーグの剣呑とマグロ女からメカジキへと変貌したクリステンの鷹揚が救い。 | [投票] |
★5 | ゴッドファーザーPARTII(1974/米) | 信義則を重んじファミリーが形成されるビトーの時代と功利な冷徹がそれを瓦解させゆくマイケルの時代。その交錯を彩る時代の空気の再現とシシリーとNY、タホ、マイアミからキューバへと変転する地理的な巨視感。完璧な叙事的クロニクル。制約が生んだ奇跡。 | [投票(1)] |
★3 | エヴェレスト 神々の山嶺(2016/日) | 南西壁・冬季・無酸素・単独と岡田が物々しく宣う不可能ごとが、とどのつまりモノローグな夢枕獏節でしか表現されないのが日本映画のジャンル限界なのだろう。穴を言い出せば切りないが傍観的語り部に徹すべき男を主役に誂えるのは商業主義的愚昧だ。 | [投票] |