★2 | ケレル(1982/独=仏) | 腐って汁が爛れ落ちる果実の色合いと匂い。この人工美で貫徹された世界が完成度が高いと言うならそうなのかも知れない。ゲイの精神的側面ではなく肉体面のアプローチに徹したかの如き世界観は正直つらい。これがファスビンダーの遺言なら納得はするが…。 | [投票(1)] |
★3 | 新・平家物語(1955/日) | ストーリーは一応見せはするものの、どうも壇ノ浦も義経も弁慶も出て来ないんじゃ詐欺だと言われても仕方ない気もする。ドラマチックじゃないから溝口らしいパッションの高揚は余り感じられない。大河ドラマの第1話だけといった趣は拭えない。 | [投票(3)] |
★3 | 薔薇の名前(1986/独=仏=伊) | 何が出るのか分からないおどろおどろした前半はムード醸成に成功しているが、急転直下の謎解きが如何にも駆け足で途端に陳腐化するセット美術も含めて一気に尻つぼみ。結局は謎解き探偵ものの範疇に収まってしまうには勿体ない題材に思えた。 | [投票(3)] |
★2 | ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS(2003/日) | 半世紀に渡り再三怪獣に襲撃された日本というパラレルな世界観が現在の日本の社会分析に言及されないままで、況やモビルスーツものの極私的個人の世界観に矮小化されるなら、『ゴジラ』『モスラ』の初作を持ち出す必要はなかろう。モスラが好きじゃないし…。 | [投票(2)] |
★5 | バートン・フィンク(1991/米) | 陰鬱な東部での健全と陽光のカリフォルニアでの退廃。更にその陽光の裏でミニマムに濃縮された安ホテルでの時間は永遠にたゆたう無限地獄への誘いか。2重3重の逆説の螺旋構造の果てに到達した楽園は幻影に過ぎない。コーエン稀代の傑作にして最高作。 | [投票(3)] |
★2 | 眠らない街 新宿鮫(1993/日) | 警察内部組織の精密描写があるからこその1匹狼「鮫」の魅力は奥田との対決をクローズアップするあまりおざなりになる。結果、凡百の日本製刑事アクションになっちまった。何より、どう考えても真田広之じゃないと思う。彼では日陰花の哀感は出ない。 | [投票(1)] |
★3 | バタアシ金魚(1990/日) | 漫画だから成立するストーキングに近似な行為を延々と繰り返すキャラクターの支離滅裂は生身の人間が演ずるが為に程良い案配に収められ少し出来の良い青春映画以上のものではなくなった感じがするが、高岡早紀のおっぱいのでかさだけは瞠目させられる。 | [投票(1)] |
★4 | RONIN(1998/米=英) | 金で雇われるプロが身ひとつで渡り歩く孤独の中にも依って立つべき連帯意識はある。欧州ムードが孤独を際だたせる中デ・ニーロとレノが抑制された演技で中心軸を形成する仄かな友情。描くべきが決まればマクガフィンも当然の帰結。 | [投票(1)] |
★3 | ラスト サムライ(2003/米=ニュージーランド=日) | カスター大虐殺に立ち会いウィンチェスター社を指弾する男が遙か最果ての国とは言え近代武装化の一翼を担う、又英語を取得し進取の気性に富む男が近代化に反旗を翻す。こういうアンビバレンツな感情機微を十全に描けてないから、ラストがどっちらけに白ける。 | [投票(8)] |
★3 | ジャコ萬と鉄(1949/日) | 黒澤が三船を発見したのではなく、或る意味で僚友谷口との共有物であったわけである。そういう歴史的意味を探る上では外せない1本だが、だからといって殊更どうという訳でもない。しかし男2人の対決の映画ってのは、どうしても点が甘くなる。 | [投票(1)] |
★1 | 江戸川乱歩劇場 押繪と旅する男(1992/日) | 乱歩稀代の傑作幻想譚は凌雲閣という高所から遠眼鏡で遙か下方のからくり細工の押絵の美女を視るというマクロからミクロへの瞬時の空間飛躍がもたらす孤絶感こそが肝であるのに技量が無く、替わって安易な時制錯綜で茶を濁すのなら手掛けるべきではない。 | [投票(1)] |
★3 | 男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け(1976/日) | 重心を2つ持たせて成功した例もある(『知床慕情』)ので一概に言えないが、宇野重吉が立ちすぎて太地喜和子のキャラが霞む。そして、霞むには惜しすぎるキャラなもんだから重吉翁が鬱陶しくさえ思えてくる。 | [投票(1)] |
★3 | 切られ与三郎(1960/日) | 転落人生を生きざるを得ない与三郎に切羽詰った被虐感は感じられず、折にふれて邂逅を果たすお富との間にも何かありそうで何もないという、何ともすっきりしない話で、何かようわからん。ただ淡路恵子が結構クールで良い。 | [投票(1)] |
★3 | フォーン・ブース(2002/米) | 無駄を削ぎ落としてタイトだと言えば言えるのかも知れぬが、真昼間の摩天楼の谷間の公道上で繰り広げられる一幕物としては当事者2人と警察と野次馬の3者が物語上でも空間処理でもパノラミックに入り乱れる展開があってもよかった。こじんまりし過ぎてる。 | [投票(1)] |
★2 | 柔らかい殻(1990/英) | アメリカの片田舎の黄金色の麦畑と猟奇的な子供殺しや、あくまで明晰な陽光と悪魔儀式めいた室内描写等、解像度の良すぎるフィルムの中の2項対立が全く心に沁みて来ず、これ見よがしにしか思えないのは、アイデア先行型のはまった陥穽の典型に思える。 | [投票(3)] |
★4 | 地獄の黙示録(1979/米) | 地獄巡りの主人公が見聞する、恐怖がドラッグを蔓延させ抑圧された性欲が暴力衝動を喚起し意義喪失が殺戮の意味を見失わせる様は圧倒的画力を持つ。しかし、狂言回しが、何時しか侵食され変容するという形而上的な物語を語り尽くせたとは思えない。 | [投票(1)] |
★4 | 赤西蠣太(1936/日) | 『博士』のセラーズもかくやの千恵蔵2役。特に稀代のピカレスクヒーロー原田甲斐には参った。伊丹演出もここぞとばかりの仰々しきハッタリをかまして絶品。少々クドい諧謔趣味を割り引いてもモダニズムの残滓は余りある。 | [投票(2)] |
★3 | シザーハンズ(1990/米) | 手が鋏というアイデア以外は伝統的な人造人間の哀歌として程好く規範に収まって何一つ逸脱するものがない。それを、ご丁寧に御伽噺めいた説話として封じ込めるあたりにバートンの確信ぶりが伺えるが、少し引く。 | [投票(1)] |
★2 | シン・レッド・ライン(1998/米) | 20年間も隠遁していたせいでマリックの頭は未だ70年代的ラブ&ピースな視野狭窄に陥っていたらしい。出てくるキャラクターは善も悪も現在から咀嚼され直さずに丸投げなものだから全くのステレオタイプにしか見えない。物語も同様。 | [投票(1)] |
★3 | 誘拐(1997/日) | 制約の多い日本の都会の公道上で展開されるモブシーンは健闘もので、少なくとも前半は興味が失せない。しかし、何を描きたかったかが露になるにつれ失望感を覚えた。余りに具体性を帯びた局所的なテーマが本作を普遍的な感銘から遠ざけている。 | [投票(2)] |