コメンテータ
ランキング
HELP

ジェリーさんのコメント: 更新順

★3ドラゴン・タトゥーの女(2011/米=スウェーデン=英=独)映画に必要な奔放さが失われているのが失点だが、スウェーデンの冬の黒灰色の中に黒尽くめのルーニー・マーラを配した造型センスは推したい。凍て切った空気感描写の中に、丁寧に描かれた彼女の内面の荒みと悲しみがこの映画の基軸のトーンとなっている。[投票]
★1待ち伏せ(1970/日)ぽんしゅうさん、ゑぎさんの寛容さを私は学び損ねている。このキャスティングでなければならない理由が映画の片隅の一コマにでもあるだろうか。大スターの使い方を稲垣浩は忘れてしまっている。映画絶望の時代である1970年代の初頭を象徴する愚作。[投票]
★4落ちた偶像(1948/英)舞台となる大使館の3階立て(+地下1階)構造を使いこなした空間処理が優れている。仰角と俯瞰の交互撮影でうまく不安を盛り上げていく。少年が飛び出して行ったロンドン市街の夜の光と影の造形も冴えており、『第3の男』での確かな結実を予感させる。子役含めて役者も揃っている。[投票(2)]
★4ミュンヘンへの夜行列車(1940/英)バルカン超特急』に登場した二人の英国紳士を再登場させ、同作で主演を演じたマーガレット・ロックウッドを起用した点、本作は『バルカン‥‥』の弟のような作品となっている。かっちりとした起承転結が見事だがとりわけ列車に乗り込んでからのサスペンスが素晴らしい。ラストは惚れ惚れするうまさだ。[投票(1)]
★3セカンド・コーラス(1940/米)初期RKO作品や後期MGM諸作と比べるとフレッド・アステアの踊りがいずれも小振りなだけにやや見劣りするが、それでも凄いものは凄い。ポーレット・ゴダードの清潔感ある美しさも見もの。パーティー会場のセットがどれも大変見事な出来。[投票]
★2美しき虜(1998/スペイン)本来は、絶体絶命の状況に戯画的な錯乱を作り出して、苦い笑いを喚起するというコンセプトの映画であったはずだ。しかし、結末に進むにつれて起こりえない状況がいつしか起こりそうな状況に変化してしまう。結局、映画はナチス・ドイツという素材に力負けした。[投票]
★2ロバと王女(1970/仏)ディズニー超えは荷が勝ちすぎたようだ。実在の城をそのまま使いながら、衣装や調度の美術がリアルでもポップでもなく半端な貧相さで見るのが痛々しい。いっそ徹底的に全てセット撮影を行ったほうが良かった。カトリーヌ・ドヌーブの美しさは圧倒的。[投票]
★5バルスーズ(1974/仏)ルイス・ブニュエル山中貞雄の才能が掛け合わせられたような作風。被写体を後ろからキャメラが追いかけたあと、カットしてキャメラが被写体を前から待ち受ける、それだけの編集がなぜにこの映画に限って感動を催させてしまうのか。メッセージの野卑さとは無縁の緊張感が全編に漲っている。[投票]
★4ブラック・スワン(2010/米)鍛え上げてやせた女達の生身の背中の魅力に抗しきれない。反る、くねる、蠕動する。およそ普通の身体が示しえない背中という部位の神秘を表わした映画、というだけで十分である。自慰に悶えるナタリー・ポートマンの恍惚の表情などどうでもよい。 [review][投票(2)]
★2ハムレット(1948/英)映画演出であろうとする積極的な意図が全編を通じて伺えそれは好ましいのだが、シェークスピア劇への尊敬の思い入れが過剰なために、科白の切り詰めに思い切りを欠き、冗長さを贅肉のようにまとってしまった作品。 [review][投票]
★3駆逐艦ベッドフォード作戦(1965/米)リチャード・ウィドマークの演じる艦長がすごい。『ケイン号の叛乱』のボガートをしのぐリアリティ。それに脇がいい。ドイツの准将と、アメリカ国籍の新聞記者とベテランの医師。艦長の非・適材適所のはずれ振りを際立たせる「零度」として完璧の設定だ。 [review][投票]
★2それでも恋するバルセロナ(2008/スペイン=米)キスをする、食べる、ののしる。アレン映画はよくも悪くも口唇を中心とした運動として展開される。それに相応しい口元の下品な俳優たち。一見洒落てはいても、口唇期的な欲動の描写こそアレン映画の本質だ。そして、見事にそれだけなのである。簡単で潔い。[投票(2)]
★1アジャストメント(2011/米)ニューヨーク市を縦横に走る無数の見えない回路というコンセプトだけがこの映画の唯一の存在価値なのだから、もっと徹底すればよいものを。中途半端なコンセプトのいじくりには失笑する。本来もうひとつの柱であるべき「調整局」コンセプトにいたっては可視化の拙さに怒りすら覚える。[投票(1)]
★1墨攻(2006/中国=日=香港=韓国)幼稚さのほどをわきまえて欲しい。自己陶酔傾向著しい類型キャラを実に忠実に役者が演じこなすので、2時間TVドラマを観ている気分になる。化石のような制作姿勢と鋳型のような感性のどこにでもある融合。過不足無く作ろうとするとこうなる。どこかに過剰を築くべきだ。[投票]
★1ザ・ホークス ハワード・ヒューズを売った男(2006/米)色彩の清楚さと猫の柔毛のような温かな空気感を伝えてくる画面はいつものラッセ・ハルストレムながら、題材が彼らしくない。卑小な人物を主人公として描くのはマーチン・スコセッシに任せて、90年代の作品群のような清新な主人公をもう一度登場させてほしい。[投票]
★4マシニスト(2004/スペイン)ヒッチコックへの尊敬なしには創りえない作品。技法の模倣という意味ではない。ヒッチコックのテンポのベンチマークなのである。車が車を追う、あの『めまい』級のゆるさが、単なる運動神経のゲームではない追跡となる。アイデンティティの揺らぎにおびえる主人公の心理と同期するテンポなのだ。[投票]
★5ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル(2011/米)観客をだまし続けるストーリーテリングはシリーズ中随一、CG合成含めた完成度も高く、最近のアクション映画に感じられる既視感とは無縁の次元を飛んでいる。落下へのこだわりが、旧来の映画と大きく変わった。人物が主体的に落ちていくシーンの面白いこと![投票(2)]
★4ボルベール 帰郷(2006/スペイン)家庭という舞台がドラマになるために父親の不在は欠くことが出来ないという映画史の頑なな信念にひたすら忠実で、かつ最も成功した作品といえる。皆が使う材料を使って質高いものを作り出す難しさに挑戦し、乗り越えたという意味では一つの里程標になるだろう。[投票]
★3南の誘惑(1937/独)混じりけなしのメロドラマで、翻弄される女性の運命の振幅が見どころ。伝説の名花ツァラ・レアンダーを清楚かつ妖艶に撮る工夫が比類なく緻密である。黒の諧調の幅広さや顔への光の当て方などハリウッド流と一線を画し、戦前ドイツ映画界の高い水準を示す。[投票(1)]
★3ラジオ・デイズ(1987/米)ノスタルジアという感覚が実世界の感情ではなく、絵画や音楽、演劇、映画などの芸術の享受活動全般に見られる、架空の世界の枯れ尾花への反応的感情であるという事実は若いときはともかく今の歳になれば当然のこととして理解しているはずなのに、この幻灯機のような甘美さにそれでもしびれる[投票]