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水那岐さんのコメント: 更新順

★3コレラの時代の愛(2007/米)長編を濃縮し、人々に英語で語らせることで、南米文学の熱と香気を漂白し、ここまで単純にしてしまうことが可能なのか。主人公のハビエル・バルデムはここに於いては単なる猟色家と化し、純愛を説く唇は彼の持つ陽根とは完全に異化される。ガルシア・マルケスの世界よりはファンタスティックさは弱められ、世俗性は拍車がかかる。[投票(1)]
★4美代子阿佐ヶ谷気分(2009/日)エロスを感じさせない一つの容器としての女体。町田マリーはそのような得体の知れない存在として見えてくる。漫画家の苦悩は深いが、それを丸のまま呑み込んでしまうような巨大な容器として。 [review][投票]
★3ナミイと唄えば(2006/日)俗はその極みにあって聖に通じ、過去の夢語りは現代社会と相通じて一体化する。神と共に生きる島のオバアは、同時に唄を活かすことで現代社会とのつながりを確かなものとする。 [review][投票]
★2鈍獣(2009/日)シチュエーション・コメディの線を狙ったのだろうが、生憎クドカンは瞬間の羅列を売りにする作家である。だから殺人のテクニックとそれに失敗した後の北村一輝やサンタマリアのリアクションより、刺青や鼻血といった小ネタばかりが目に焼きつく。そのため肝心の浅野忠信の行為の告白という、この物語の一番のツボが安易に流され、友情話へと誘うようで居心地が非常に悪い。作家の指向性のミスだろう。[投票]
★3ガマの油(2009/日)ロリコンオヤジの死生観&人生観、ちょっとノスタルジー風味つき。二階堂ふみ小林聡美が頑張り過ぎなのは、役所広司の気弱なオジサン体質ゆえか。極めて判りやすい筋運びではあるが、冗長な内弁慶の空威張りは現代っ子には通用しないだろう。所詮は彼の世代のユートピア・ファンタジーだ。[投票(1)]
★4噂の女(1954/日)あくまで正義の旗印の下に動く、理想の女久我美子を前に、苦界より脱出せんとするひたむきな願いを胸に男たちに翻弄される母・田中絹代。時代を代表する対照的な二人の女優が、荒波に懸命に抗う姿にこの時代の女の生き様を見る。華族令嬢のお嬢様と、生涯底辺に生きつづけた女のがっぷり四つ。この図式は面白い。 [review][投票(1)]
★2夜の女たち(1948/日)GHQへ向けた作り笑い満載の新国策映画。田中絹代ほかの女達の、貞女からパン助への変貌演技も作為的で予想を上回らず、マリア像に象徴される救いのあえかな予兆もあざとさこの上なし。映画内世界の肯定をする気は毛頭ないが、かと言って依田義賢の説教に感動させられるほどウブでもなし。[投票]
★3クレヨンしんちゃん オタケべ!カスカベ野生王国(2009/日)母親ウケを狙う、という方向に確実にターゲットを絞っているようだ。その方面での泣かせが成功しているという指摘は正しい。しかし話の規模のわりにスケッベの崩壊のカタルシスはなく、カスカベ主義も作品を矮小化するのみである。そしてしんちゃんの… [review][投票(2)]
★3ララピポ(2008/日)セックスだけの惑星のような世界観に些か辟易し、ポップでサイケデリックな画面に鼻白むも、基本的に人間への愛情が感じられるストーリー進行には共感できる部分もある。もっとも、それぞれのキャラクターを描写するにあたってのステロタイプな典型的描写は、監督が明らかに「外側から」人物を観察していると判る嫌らしさもある。[投票]
★2イングロリアス・バスターズ(2009/米=独)野暮呼ばわりされるのは承知の上だが、この作品から借り物を取り除いてしまったらダレきって欠伸の出る演出しか残らない。師と仰ぐ深作欣二の得意とした歴史改竄時代劇へのオマージュも、こんなに緊迫感のない演出ではオタクのプライベート・フィルムに終わってしまう。 [review][投票(5)]
★4なくもんか(2009/日)笑いとは、泣かせとはそもそも暴力的なものだ。だからやり過ぎという言葉は当たらない。過剰さをひた走る阿部サダヲの芸は活き、本来お笑いに向かない瑛太のシロウト臭い演芸は過剰さによって相殺される。 [review][投票(3)]
★4母なる証明(2009/韓国)オープニングは、「母親」の無様なダンスから始まる。微笑を浮かべることもなく、ただ無表情に踊り続けるキム・ヘジャ。その姿からは明朗さはいささかも感じ取れず、ただ必死に生きる宿命を甘受する諦念すら漂ってくる。彼女はウォンビンのためにしか笑わない。 [review][投票(3)]
★4マイマイ新子と千年の魔法(2009/日)ただ坦々としてある。特筆すべき事件は爽快なまでに一時的に終わらされ,そこには地方の少女と、都会から来た転校生少女との交流が綴られるのみである。少女たちにとっての大事件も、大人たちには些細な出来事としか映らない。その自然さが素敵だ。 [review][投票(4)]
★2ラスト・ブラッド(2009/香港=仏=日=アルゼンチン)クリムゾン・レッドに肌を染めるチョン・ジヒョンの凄惨な美しさは認めざるを得ないが、原作映画で描写されなかった背後のエピソードのチャチさ、オニどもの死の人工的無味無臭さに辟易する。護るべき少女の魅力が皆無なのも辛いところ。小雪の鬼気迫る風情が救いか。[投票(2)]
★2未来を写した子どもたち(2004/米)「幸福」は相対的なものである。どんな素晴らしい状況をお膳立てしても、それがもっと重要なことの前に捨てられる「幸福」なら無用の長物に過ぎない。世界のありようとはそんなものだと、監督たちは知るべきであった。[投票(1)]
★5パイレーツ・ロック(2009/英=独)ROCKがF**Kより汚くなかった時代の、ブリティッシュ・ロック梁山泊興亡史。全体にコメディ的演出にもかかわらず、ポップな味付けの演出は手堅い正攻法であり、そこはかとなく漂う英国式ユーモアにも嫌味がない。下ネタをもスタイリッシュに料理するその作風はハリウッドにはなかなか真似出来まい。 [review][投票(3)]
★2THEダイエット!(2007/豪)イマイチ結末に納得できない自分がいる。関口監督が20キロほどの贅肉を落とした原因は本当にアレの所為なのか。彼女の日本人としてのルーツ探りはダイエットに関係があるのか。その疑問が解けない以上、中年太りの俺もこの映画に意義を見い出せない。些か厄介のタネになる作品には違いない。[投票]
★4ホノカアボーイ(2009/日)スローライフ礼讃映画のようにも見えるが、例えば『めがね』のように押し付けがましくないのが魅力。音楽とシンクロする人々の日常は、緩慢でありながらエンターテイメントとして立派に作用している。それは人々の、喜怒哀楽の感情をきちんと踏まえて製作しているためだ。それゆえにファンタジー的側面が上滑りになっていない。[投票(1)]
★3ラーメンガール(2008/米=日)西田敏行のアドリブは入れられるべくして入れられたものだ。彼とブリタニーのあいだには会話の接点がまるでなく、日本語を知らない外国の観客は西田の言動を理解できない。それゆえ、せめて日本人にだけでも彼の自然な心のうちを知らしめたのは正しかった。 [review][投票(1)]
★4ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ(2009/日)松たか子は明るくきびきびと働く演技だけしか不可能かと高を括っていたが、思いのほか妻としての強さを見せ付ける。広末涼子も相変わらず幼い演技だが、松とすれ違うときの悪魔的な微笑に戦慄を覚える。これらを女優たちから引き摺りだせた根岸監督、まだまだ侮れない。 [review][投票(4)]