[コメント] ビッグ・フィッシュ(2003/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
実はこの感覚は『シザーハンズ』や『スリーピーホロウ』でも感じたことなんですが、この映画にも「根底にイヤな現実が土台としてあり、その上でファンタジーの住人たちがどこか居心地悪そうに座っている」といったティム・バートン特有の切なさがあるんですよね。
そして今作は、その虚構と現実の線引きをラストまで曖昧にすることで、観客たちにゆっくりと問いかけを続けてきます。「「父の語った素敵な虚構」と「面白みのない現実」と、あなたはどちらを好みますか?」って。観客はその中で徐々に「素敵な虚構」を選択していくのですが、それは遂に「父の浮気の真偽を問う」シーンで表象化するんです。「あの水仙の物語が、どうかそんな現実に蹂躙されませんように」って。
息子ウィルもクライマックスで遂に「虚構の住人でいたい自分」に気付かされます。そしてその世界に浸っているところでラストの葬儀のシーンになるんです。巨人のカールは確かに「本当に巨人症の役者さん」だったけど、曲がった家を押せる程大きくなかった。芸人の姉妹は確かに「本当に双子の役者さん」だったけど、シャム双生児ではなかった。その時にウィルは初めて「虚構と現実」に折り合いを付け、同時に僕らも「スクリーンの内側の虚構とこちら側の現実」に折り合いを付けることになるんです。
想像の翼を捨てることなく現実と折り合っていくこと、それこそが正に「成長」である。ティム・バートン自身、父の死を乗り越えることでそのような成長をしたんだろうなぁと想像しました。世の中には「虚構で飾りたくなるクソつまらない現実」も「虚構よりもずっと素敵な現実」も、山ほど転がってるってことだよね。
ただねぇ、いくら大ボラ好きだからって、知り合いの双子の姉妹を勝手にシャム双生児に仕立て上げちゃうのはどうかと思うよ、父さん。
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